>   >  サンジゲンのシステム構築と研究開発「3DCGアニメ制作会社を正常稼働させる事と、将来への布石」~あにつく 2018レポート(2)
サンジゲンのシステム構築と研究開発「3DCGアニメ制作会社を正常稼働させる事と、将来への布石」~あにつく 2018レポート(2)

サンジゲンのシステム構築と研究開発「3DCGアニメ制作会社を正常稼働させる事と、将来への布石」~あにつく 2018レポート(2)

<2>無駄な工程を省いた独自の業務管理システム

講演は業務管理システムに話が移っていく。サンジゲンの中で3DCG業務管理のデータベースが必要になったのは2014年のこと。それまでは制作進行がExcelで工程表を作成していたが、更新が間に合わず管理ができていなかったという。また、日本のアニメ制作に合わせた業務管理パッケージがなかったこともあり、システムを内製した。


発注書のシステムを制作が入力すると、各アーティストのPCへポップアップ通知が届き、作業の見落としを防ぐしくみとなっている。作業が終了しデータをアップロードするとディレクターに通知がいく。チェックバックはデータベース上で行う。そして集計表で全体的な進捗具合を把握する。

ムービーデータがアップされるとエンコード・リネームされHIEROへと蓄積される。チェッカーの下には常に最新の映像カットが更新され、前のテイクと見比べることも容易。それ以前は編集スタッフが仮編集のムービーデータを定期的に差し替えていたため、無駄な労力をかける必要がなくなった。

こうした管理ツールの導入に対しては当初、導入をすること自体への反発があったが、やがてツールの基本機能やレスポンスについての不満へと変わったという。これはツール自体の否定がなくなったことを表している。そして現在では追加機能の要望や3D以外の管理要望があり、スタッフが積極的にツールを使っていることが窺える。

<3>システム・開発部が目指す"新しいアニメ映像"のための環境づくり

最後にシステム・開発部の話題について述べられた。従来はスクリプト開発やデータ連携ツールを作成する仕事をしていたが、現在は研究開発プロジェクト「M.I.R Orbiter」をスタートさせている。具体的なプロジェクトとしては、従来サンジゲンが業務で使ったことがないCGソフトで同工程を置き換えること。これは1プラットフォームに対してのリスクヘッジが目的だ。


また、ゲームエンジンでアニメ映像を出力する研究も行なっている。これはレンダリング待ちを減らすことを目的としたものだ。このほか、MODOでリミテッドアニメーション用のコマ抜きツールを開発したり、Unreal Engine 4でオリジナルのトゥーンシェーダの作成を行なっている。



目指しているのはCG制作の様々な「待ち」をなくし、同時並行で作業ができる環境づくりだ。ただし、ゲームエンジンで制作する場合は、背景も3DCGでつくる必要がある。その制作として写真からリピートテクスチャを生成したり、それをシェーダツリーに組み合わせてマテリアルにしたりしてUnreal Engineでの背景を作成している。講演では1年前に作成したテストムービーが上映された。金田氏は「テストショットなのであまり出来は良くない」とは言うが、セルアニメ的なCGを表現するサンジゲンのアイデンティティはここにも十分に表れていた。

最新の研究としては写真から3Dアセットを生成する「フォトグラメトリー」がある。100枚程度の切り株の写真を撮り、それらの写真をRealityCaptureというソフトに読み込んで点群を生成、そこからメッシュ生成、UV展開を経てリアルなテクスチャが生成されるという。生成されたメッシュをリトポロジーしてテクスチャを焼き付けると、人間のモデラーにはとてもつくれないレベルのディテールが表現できるという。

システム・開発部は現在9名でシステム(インフラ構築からデータベース開発まで)担当が4名、開発が4名で、現在もスタッフを募集しているとのこと。CGアニメでスタイルを確立したと思われていたサンジゲンではさらに進んだ研究が進められており、これからも新しい映像を見せてもらえそうだ。ゲームエンジンでのリミテッドアニメ表現やフォトグラメトリーが実現するとさらに大きな映像の地殻変動が予期される。この先どのような映像をつくってくれるのか、見守りたいスタジオだと思いを新たにした。

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