<2>unknownCASE肝煎りの手描きエフェクト実演
続いて小川氏より「カット制作時の手描きエフェクト制作術」についての説明が行われた。
小川氏はアニメにおけるエフェクトの重要性を語り、アニマティクス段階のアニメーション、そこにエフェクトを足したもの、そして最後に撮影処理を載せたムービーを示した。炎や風、斬撃を足すことで迫力がまったくちがって映る。小川氏は斬撃の切っ先においてはながれを意識して、スパークは過去の2Dアニメを参考に模写し、1コマずつ絵としてキマった形をつくり上げた。
さらに小川氏は手描きエフェクトのつくり方へと説明を進める。ここで例として挙げられたのは「板野サーカス」だ。板野サーカスは小川氏にとって「作画エフェクトをやってみたいと思ったきっかけ」の表現で、チャレンジングではあったが、『重神機パンドーラ』でトライしたという。
続けて小川氏は手描き「板野サーカス」の実演を行なった。小川氏はこのカットをつくるにあたり、まずはPhotoshopを使用し球体のみでアニメーションのイメージを作成。次にAE上で背景を動かしつつ、CGの機体を球体のアニメーションに合わせて配置し、メインのビームを描いていく。最後に画面のにぎやかしを含めて、ビームの本数を増やして仕上げる。
3DツールではなくPhotoshopを最初に使う理由として、「3DCGでつくると試行錯誤に時間がかかるので、手で描くことでアニメーションのタイミングや動きを確認しておくのがポイント。背景を引っ張ってスピード感を確認してから、アセットを使ってアニメーションをスタートさせると自分の中でカットの整理がつくと思っています」(小川氏)。
また、このエフェクトを手描きする際の注意ポイントとして、「画面内で動きを逆走させない」、「画面の外の空間を意識する」、「カメラに迫るに従ってエフェクトを太くする」ことを挙げた。このカットを制作するまでに小川氏は通勤の行き帰りに3週間考え続け、4~5日間の作業で仕上げたといった裏話も披露された。このカットには河森総監督も満足していたという。
河森氏のデザインの美学から板野サーカスまで、現在の3DCG技術をどのように活用して新たな映像表現を展開していくのか、短い時間ながらもたっぷりと内容の詰まった1時間。『重神機パンドーラ』では小川氏以外のメイン機体のモデリングもキャリア数年というフレッシュなスタッフが手がけたという。今後、そのスタッフが河森メカをどのように格好良く仕上げていくのかまで期待が膨らんだ講演だった。