>   >  STUDIO4℃が緻密に描き出すポップ&バイオレンス〜仏・ANKAMA共同制作映画『ムタフカズ』(MUTAFUKAZ)
STUDIO4℃が緻密に描き出すポップ&バイオレンス〜仏・ANKAMA共同制作映画『ムタフカズ』(MUTAFUKAZ)

STUDIO4℃が緻密に描き出すポップ&バイオレンス〜仏・ANKAMA共同制作映画『ムタフカズ』(MUTAFUKAZ)

TOPIC 2:圧倒的物量のカーチェイスシーン


坂本氏いわく、本作のCG制作において最も大変だったというハイウェイでのカーチェイスシーン。アイスクリームワゴンで逃走する主人公たちを、黒服のキャデラックが猛スピードで追いかけていく。まず複雑に入り組むハイウェイの素材をCGで制作し、画面を流れ過ぎていく壁や道路、街灯、別の道などのオフジェクトをシミュレーションし、CGで制作したものを作画に戻すというフローでつくられている。

「ハイウェイの素材も全て木村さんに描いてもらいました。素材を1つ作ってしまい、数十カット分をCGで組んでいます。このシーンはかなりのカット数があるので、普通に背景を描いていると大変だったと思います」(坂本氏)。また、ハイウェイでは両側に並ぶ街灯に1つ1つライトを配置しており、かなり細かい素材出しをして、コンポジットで夜のハイウェイに見えるよう調整している。

◼️アイスクリームワゴン

リノとヴィンスが乗り込んで逃げるアイスクリームワゴンの設定画。外観、内部構造が細かく描かれている。これを基に車体に貼られたステッカーのデザインやテクスチャの作成を進めた

アイスクリームワゴンのモデルとリグ。リグはGEARのカスタムリグを使用している。本作に登場するクルマの中で最も作り込まれているという。本作ではギャングのキャデラックを3パターン用意したほか、武装警官の装甲車、パトカー、バス、タクシー、ゴミ収集車などはどれも日本にないデザインのためイチから作成したとのこと

◼️クルマの色彩設定

主人公たちがカーチェイスで乗るアイスクリームワゴン(左)と黒服のキャデラック(右)の基本色

◼️坂本氏謹製のトゥーンシェーダ


本作のトゥーンシェーダは、SI標準のToonシェーダを坂本氏が改良したものだ。セルや背景との馴染みを想定し、チャンネルを分けて別パスとしてレンダリングできるように仕込んでいる。画像は基本のカスタムシェーダのUI。アニメでは一般的な「ノーマル色・影色・ハイライト(シーンごとのカラーチェンジシステムに対応)」も別パスとして出力し、RGBで色分けされた塗り分けマスク素材を使用して合成する


素材の一覧。1段目左からノーマル色、影色、ハイライト色、2段目左からアンビエントオクルージョン、インシデンス、ハイライト、3段目左から塗り分けマスク、RGBマスク、フォン、4段目左からライン、地面影、合成結果

◼️ハイウェイ

カーチェイスシーンでクルマが走るルートの全体ガイドモデル(左上)と、ハイウェイを構成するモデルのごく一部。全体で約100カット以上の大ボリュームのシーンとなったため、ハイウェイを構成するモデルは極力シンプルに、リピートできるように設計し、テクスチャを背景美術へ発注。貼り込み後、カットによってカスタムして使用している

背景美術へ発注したテクスチャ素材(ブロック、ハイウェイ側面、柱、ガードレール、交差するハイウェイの下部分、道路、看板各種など)は、3Dでライティングを行うため、モデルを光の影響がない状態で通常のUV展開したものを基に描いてもらったとのこと。遠景の背景は基本は板貼りになるため、通常の背景と同様に作成

◼️シーン制作のながれ

カーチェイスシーン制作の一連のながれをまとめた動画。【1】作画レイアウト/【2】CGレイアウト。【1】を基にSI上でカメラアングルの決定、クルマの配置、ラフアニメーションを進める/【3】【4】カメラワーク作業が完了した状態の3Dセル素材。ここからライティング、パス分けしてレンダリングする/【5】【6】【7】アニメーション作業が完了した状態の3Dセル素材/【8】完成カット。3D背景(街灯、ライティング素材など)、作画素材(火花・飛び散る破片など)、3Dセル素材、3Dのヘッドライトなどの素材と撮影効果(クルマのテールランプ、T光、モーションブラーなど)を足して完成

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TOPIC 3:ゴキブリの大群

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