>   >  スクウェア・エニックス第5BDが取り組む、効率化とクオリティを両立したハイエンドキャラクター制作フロー~CEDEC 2018レポート(7)
スクウェア・エニックス第5BDが取り組む、効率化とクオリティを両立したハイエンドキャラクター制作フロー~CEDEC 2018レポート(7)

スクウェア・エニックス第5BDが取り組む、効率化とクオリティを両立したハイエンドキャラクター制作フロー~CEDEC 2018レポート(7)

<3>顔・髪モデルの量産フロー

続いて、顔および髪モデルの量産フローについて解説が行われた。「このフロー制定の目的としては、リアルだけれどもファンタジー的な顔モデルを量産すること、つまりキャラクターの顔を簡単かつリアルにカッコ良く作りたいということです」(南條氏)。基本方針として、フォトグラメトリーを活用すること、モデルのトポロジーとUVは共通であること、ブレンドシェイプを活用すること、の3点が掲げられた。

そうして、まずはじめに取りかかったのは、社内スタッフの顔をフォトグラメトリーで撮影することだった。今回は簡易的な方法でのスキャンだったため、つぶっている目を見開いたりさせる調整作業が必要だったという。

社内のスタッフに依頼して撮影したフォトグラメトリーの結果


  • スキャン後の調整


  • リトポロジーと、UVの様子

また、工夫した点として、歯並びを自由にコントロールできる歯のモデルを用意しておいたことが挙げられた。

歯並びを自由に調整することができる歯の3Dモデル

まつ毛、涙、影のモデルは目の形状に自動追従するよう調整。


  • 目のディテール


  • 目周辺の形状

毛穴など、細かい部分の調整

また、髪の生えぎわ制作のコスト削減のため、下準備として「坊主メッシュ」と呼ばれるカツラのようなパーツを作成している。

坊主メッシュ

「坊主メッシュ」の上に生やすようなイメージで毛のモデルを配置していき、髪型を作成。さらに、髪を描画する上で非常に重要となる半透明と影を加え、リアルな毛の表現を実現したとのこと。

髪の半透明と影の表現

さらに毛色の表現として、ベイクしたマスクテクスチャを用い、2種類のパラメータによって白髪や色ムラといった実際の髪に近づけるための表現を行なった。

ベイクテクスチャによる白髪や色ムラの表現

完成したキャラクターデータ

そうしてスキャンデータからリアル系のキャラクターモデルの完成までたどりついたわけだが、そこで課題としてもち上がったのは、「何でもリアルなら良いわけではない」ということだった。「現実の普通の人の顔だけではちょっと物足りない、いくらゲーム内の一般キャラクターとはいえ、もう少しファンタジー世界のキャラクター風にならないだろうか? と考えました」(南條氏)。そこで特徴ある3Dモデルをベースにブレンドするという手法を試してみることとなった。

フォトグラメトリーで作成したリアル系モデルに、ファンタジー風の顔モデルをブレンドした結果

この手法でリアルさにキャラクター性をプラスするという点では一定の成果を得たが、顔の形は千差万別で、スキャンだけでは限界があり、自然で多様な顔をもっと簡単につくれないか、という結論に達したという。そこで、ブレンドシェイプをもう少し複雑にして、個性的な顔を簡単に制作できるようなキャラクター作成ツールを開発することとなった。

そうして開発されたランダム顔作成ツールは、ブレンドに使う顔を任意に選択し、顔全体または部分的にランダムブレンドを行い、その後調整を加えて、生成された顔をライブラリに登録する、までを行えるというもの。ブレンドで混ぜる数が多すぎると平均的な顔になってしまうため、3モデルから5モデルが適切だったという。

4つの顔の目、鼻、口、耳、額、頬、顎をブレンドする場合の例

ランダム顔作成ツールの操作画面

ランダム顔ツールを活用した感想として、南條氏はランダムで生成される顔だとしてもスキャンに近いリアリティが出ること、ある程度縛りを入れるとワークフローにも組み込みやすいこと、頭の形などの制限事項などもコントロールしやすいことがわかったと述べた。今後はヒゲのバリエーションを増やしたり、歯並びもランダムで生成できるしくみにしていきたいとのこと。

ランダム顔作成ツールで生成された顔の例

顔はランダム感がリアリティに直結するため、クオリティが上げやすい分野でもある。ここまでやってみて、効率化が進めば一般キャラクターの制作は自動化も可能であると南條氏は総括した。「今後はアジア系に調整するパラメータや、戦士系の顔つきにするパラメータなど、簡単に調整できるようになると良いと考えています」(南條氏)。

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