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スクウェア・エニックス第5BDが取り組む、効率化とクオリティを両立したハイエンドキャラクター制作フロー~CEDEC 2018レポート(7)

スクウェア・エニックス第5BDが取り組む、効率化とクオリティを両立したハイエンドキャラクター制作フロー~CEDEC 2018レポート(7)

最近の大規模ゲームにおける3Dキャラクターモデル作成では、市販の様々なソフトウェアを横断しながらの作業が多くなっており、データの取り扱いや互換性、どのソフトでどの作業をするかなど、現場の作業が非常に複雑化している。そういった多様な制作物をつくらなければならない環境の中で、できるだけスムーズに少ない作業量でクオリティをいかに担保するかといった観点で作業環境が整えられつつある。本講演ではスクウェア・エニックス第5ビジネス・ディビジョン(以下、第5BD)でのMaya、ZBrush、Marvelous Designer、Substance Painterを併用した制作環境でのハイエンドキャラクターモデル作成について研究開発中の内容が紹介された。

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TEXT&PHOTO_安藤幸央(エクサ)/ Yukio Ando(EXA CORPORATION
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)



<1>世界レベルのリアルタイムグラフィックスを目指すR&D

南條和哉氏(株式会社スクウェア・エニックス 第5ビジネス・ディビジョン 3Dキャラクターアーティスト)

以前はフリーランスとして『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(2017)のキャラクター制作に携わり、2017年にスクウェア・エニックスに入社してからは第5BDにてR&Dを担当している南條氏。世界レベルのリアルタイムグラフィックスを目指すにあたって、第5BDが掲げたのは以下の4つの目標だった。

1:グラフィックスは高いレベルを目指す(大前提)
2:R&Dとはいえ最終的にゲームとして動くことを前提に仕様を決める
3:最近のトレンドの技術やノウハウを採り入れる
4:作業の効率化とクオリティの担保

「最近流行りのSubstanceをワークフローに組み込むことや、GDCで発表されるような最新技術を採り入れつつ、作業の効率化とクオリティを担保し、仕事のスピードを落とさないようにしつつ模索していきました」(南條氏)。

クオリティはもちろん上げたいが、作業時間は限られている。そこで最近様々なゲームタイトルで導入が進んでいるフォトグラメトリーを使うのはどうか? というアイデアがまず挙がった。ただし、顔のモデルはともかく、ファンタジー系の衣装やモンスターのようなそもそも撮影できる実物が存在しないキャラクターの場合は厳しい。そうは言っても、アーティスト間の技量差をどう埋めるか? 技量差に関係なく、アーティストの技量全体の底上げが必要だと考えたという。

「対応策として次のようなことを検討しました。まずは、モデリング作業時間そのものをなくすのは難しいとしてもできる限り効率化して全体の効率を上げる。テクスチャリングはSubstanceを使うことで時間短縮したり、様々な工程をどうにかして短縮できないかと考えました」(南條氏)。

モデリングは効率化と品質。その後の工程はできるだけ短縮

初期段階ではUnreal Engine 4やリアルタイムビジュアライズソフトMarmoset Toolbagで検証を進めたが、なかなか細かいところに手が届きにくかったため、FFXIVエンジンを拡張しPBR環境でのレンダリングができるようにし、環境構築やシェーダ周りは専任のプログラマーが担当することになったという。

利用したDCCツールは下記の通り。
Maya 2016 SP2
ZBrush 2018
Marvelous Designer 7.5
Substance Painter 2018、Substance Designer 2018
Photoshop CC
xNormal、Ornatrix for Maya

<2>衣装モデリングのワークフロー

衣装モデリングの全体的なながれ

続いて、現在検証中の衣装モデリングのワークフローについて解説された。検証用のモデルは、アート班が起こした金属や布など様々な素材が使われたデザインを基に準備したとのこと。

キャラクターの素体(アバター)はMayaとZBrushで制作。筋肉の盛り上がりも衣服の形状に影響するため、しっかりつくり込んだという。続いて、布や革の部分はMarvelous Designerで作成。Marvelous Designerは布の形状が思い通りに作成できるため作業が楽しくなり、ついつい時間をかけてしまいがちだが、細かいシワの表現などはスカルプトでやった方が早い場合もあるという。目標としては、概ね1体につき1週間以内で終わることが理想とのこと。

Marvelous Designer での作業例

ZBrushでのスカルプトは、基本全てのSubToolでローレベルを保持し、のちのちのリトポロジーと形状変更の作業を軽減。目立つ部分のみスカルプト段階で対応するが、細かい傷や汚れなどの表現はSubstance Painterに任せるといった住み分けが行われた。リトポロジーにはMayaのModeling Toolkitを利用し、最終的には10万ポリゴン前後を目安とした。テクスチャのUVに関しては、Marvelous Designerで作成した部分はすでにUVデータがあるため、それ以外の部分を頭、胴、腕、足の4つのUVグループに分けてマテリアルを分類している。

ZBrushローレベルモデルと、リトポロジー後のモデル

Substance Painter導入の経緯は、PBR向けのテクスチャ作業において、カラーとマテリアルと同時に調整できることが非常に大きなメリットであったからだという。ツールにはすぐに慣れることができるため、早ければ1日か2日でそれなりのものが作成できるようになり、作業の短縮に繋がった。また、UVや解像度を後から変更できるため、ワークフロー的にも後からの変更の手間を減らすことができたとのこと。「それに業界的には、今検証しないと、他社に乗り遅れてしまうという危機感もありました」(南條氏)。

Substance Painterの利用例(一部ぼかしあり)

とは言え、ペイント作業ではどうしても作業者ごとにクオリティにバラつきが生じるため、ペイントは極力使わず、IDマスクやスマートマスクを活用するという運用ルールが敷かれた。また、質感をコントロールするため、今後はキャラクターの設定上の地域や種族などのカテゴリごとにマテリアルライブラリを充実させていく予定とのこと。「Substance Painterの機能では、『Match By Mesh Name』と『Layer Instance』が気に入っています」(南條氏)。

Mayaのローモデル、ZBrushのハイモデル、Substance Painterでの扱い

今回開発した衣装ワークフローについて、「修正しやすい、クオリティアップしやすいデータづくりを心がけたこと」、「最新のツールやライブラリを活用して効率化したこと」、「アーティストの技量差に左右されずクオリティを維持しつつ進められたこと」の3点がポイントとして総括された。

完成したモデル

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<3>顔・髪モデルの量産フロー

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