>   >  斬新な機能追加によりさらに画づくりの幅が広がったCinema 4D Release 20レビュー
斬新な機能追加によりさらに画づくりの幅が広がったCinema 4D Release 20レビュー

斬新な機能追加によりさらに画づくりの幅が広がったCinema 4D Release 20レビュー

Topic 03
MoGraph新機能「フィールド」

操作性と表現力をハイレベルで両立

フィールドは、これまでのMoGraphエフェクタのように、オブジェクトやクローナーをはじめとする様々な機能に対してエフェクトを加えられる機能となっている。「フィールド」は非常に感覚のつかみづらい概念ではあるが、端的に説明するならば「およそあらゆる機能に対応するMoGraphエフェクタ」といったところだろうか。従来のMoGraphエフェクタではクローナーをはじめとするMoGraphの機能内で使用することを主目的として開発されていたが(もちろん外部の機能にも利用できるのだが、今回は割愛する)、フィールドではさらにMoGraphエフェクタそのものにもデフォーマや頂点マップ、選択範囲など様々な箇所に影響し、かつレイヤー構造や重ねがけを駆使することによって、今までは作ることが難しかったアニメーションを、キーフレームをほとんど打つことなく生成することができてしまう。

前述したボリュームビルダーにも影響させることができ、ボクセルに対してフィールドの影響を与えることで手動でモデリングすることが難しい形状を表現することも可能だ。フィールドはおよそあらゆる場面で影響させることができるほか、フィールドという機能そのものも非常に自由度が高いが、何を反面どう作用させるかが難しく、しばらくは戸惑う部分も多いだろう(筆者も本稿を執筆している時点では把握しきれていない......)。いろいろ試しながら、「こんなことができたんだ!」という発見が多い楽しい機能でもあるので、手を動かしながら考えるタイプのクリエイターには非常に有効な機能とも言えよう。

複数のフィールドをグループ化し、個々に調整可能

従来のMoGraphよりもさらに柔軟なアニメーション構築が可能になった。簡易エフェクタ内にてレイヤー構造として各フィールドを調整できるため、従来までのMoGraphの重ねがけ以上に複雑な効果をシンプルに組み上げることができる

プロシージャルノイズをボリュームに転用

ボリュームビルダーとの連携によって、ランダムフィールドを用いてC4Dで使用可能なプロシージャルノイズをボリュームとして扱うことができる。これにより今までは難しかった自然物・有機物などの表現も手軽に制作できるようになった

海外の著名クリエイターによる利用例

マシュー・オニール氏が制作したフィールド機能を用いた作例(動画キャプチャ)

Topic 04
ProRenderの拡張

SSS、モーションブラー、マルチパス等の機能追加により、実用性が向上

前バージョン(R19)から搭載されたGPUベースのレンダラ「ProRender」が新規対応機能と共にさらに使いやすく、そして高速になった。昨今では様々なGPUレンダラが登場しているが、R19時点でのProRenderはお世辞にも使いやすいレンダラではなかった。しかし、R20からマルチパスへの対応やSSSへの対応、各種モーションブラー&グラフィックスボードのメモリに依存しないアウトオブコアメモリへの対応、シャドウキャッチャーの搭載等、かなり実践的なレンダラへと進化を遂げた。特にSSSは非常に高速で美しく、従来のSSSマテリアルがそのまま使用できるため、大きく表現の幅が広がるだろう。また、多くのレンダラがNVIDIA系列のGPU しか動作しないことに対し、ProRenderではAMD系のGPUにも対応しているため、Macユーザにとってはかなり心強いレンダラとなるだろう。もちろんGPUレンダラとしてリアルタイムプレビューをしながらのシーン構築が可能なため、これまで他のGPUレンダラを使用できない環境にいたクリエイターにとっても心強い存在のはず。GPU性能にもよるがレンダリング速度もそれなりに速く、非常に美しいレンダリング結果を得ることが可能だ。反面、プレビュー時のジオメトリやマテリアルの更新等の遅さはやや気になる部分のため、今後の改良に期待したい。

サブサーフェス・スキャタリングのリアルタイムプレビュー

アンモナイトを樹脂で型取りしたようなマテリアル。ProRenderのSSSならば比較的美しい状態でリアルタイムで確認しながら調整可能。SSSの設定もシンプルなため、戸惑いは少ないだろう

R20新機能を組み合わせたシズルの表現

米粒はMoGraph+ボリュームビルダーにて生成、ごはんと味噌汁(具なし......)のマテリアルはSSSで作成している。C4Dではこうした複合技で素早く密度の高いシーンをつくることができる

そのほかの注目機能

ほかにも新機能、強化された機能があるので最後にいくつか紹介しよう。

まずは「マルチインスタンス」である。従来のインスタンスでは扱いきれなかった大量のインスタンスを生成することができる。また、インスタンスの表示方法を変更することで、ビューポートの描画が極端に重くならず、それどころか10万インスタンス程度ならかなり軽量に調整することが可能だ。もちろん複数のオブジェクトやアニメーションにも対応したインスタンス機能なので、例えば群衆や大量の動物の表現など、これまでは制御の難しかった大量のオブジェクト制御が可能となった。ProRenderにも対応しており、プレビューもそこそこスムーズである(ただし初回の計算のみ、それなりに時間がかかる傾向にはある模様)。

R20からモーショントラッキングのワークフローが改善された。これまでのモーショントラッキング機能では難しかった複雑なトラッキングを、さらに整理されたUIにて強化しているため、実写との合成案件などの際に非常に力強い機能になってくれるだろう。また、R20からはレガシー機能が整理されており、未来のC4Dに向けてコアを改修している。そのため、旧来型の一部プラグインは再コンパイルが必要になったり、使用不可になったものもあるのだが、それと同時により安定して高速なソフトウェアへと進化している。いわばレガシー機能に代わる新たな開発ツールやAPI等の改修が行われており、プラグイン開発者やスクリプトを多用するユーザーにとっては、より開発のしやすい環境になったと言えよう。今後のC4Dにもひき続き期待したい。

マルチインスタンスでアンモナイトのモデルを2万個複製したもの。アンモナイトのモデルはボリュームビルダーから生成したため63万ポリゴンほどあり、合計ポリゴン数を考えると恐ろしい。テスト時には10万個くらいの複製までは、それほど動作が重くならなかった印象である



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