>   >  頭から木がニョキニョキ生えてくる? 学生ならではの個性豊かなVRコンテンツ15作品が並んだIVRC2018決勝大会
頭から木がニョキニョキ生えてくる? 学生ならではの個性豊かなVRコンテンツ15作品が並んだIVRC2018決勝大会

頭から木がニョキニョキ生えてくる? 学生ならではの個性豊かなVRコンテンツ15作品が並んだIVRC2018決勝大会

●10:TeleSight - HMDによるVR体験者の視点を介した傍観者とのインタラクション -(Laval Virtual Award in IVRC2018)

慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 Embodied Media Project
チーム名:マネキンヘッズ

VR HMDの装着者と非装着者におけるコミュニケーションをテーマとした作品。VR HMD装着者はVR空間内で手元のコントローラを使用し、シューティングゲーム体験が楽しめる。これに対してVR HMD非体験者はマネキン型現実拡張デバイスの目を覆うことで、モンスターの攻撃を防御できる。マネキン型現実拡張デバイスは、VR HMD体験者の頭部の動きに伴い、向きや角度がリアルタイムに変化する。

●11:Be Bait! ~求めよ,さらば食べられん~(Unity賞・ドスパラ賞)

東北大学大学院 情報科学研究科システム情報科学専攻 北村研究室
チーム名:Fishers

ルアーになって水中を引きずられ、大型肉食魚に補食される感覚を疑似体験できる作品。体験者はハンモックに横たわり、体を左右にくねらせることで大型肉食魚の注意を引き寄せられる。無事補食されると上方からカバーで包まれる一方、口から食道、そして胃の中に進める。VR体験だけでなく、たくさんの魚が回遊するなど、水中のビジュアルも高いクオリティで表現されている。

●12:天獄渡り(チームラボ賞)

筑波大学 システム情報工学研究科 知能機能システム専攻
チーム名:暗黒メガコーポ 極

人間は恐怖感を覚えると膝が痙攣する。この現象を逆手に取り、外部から膝に振動を与えて、擬似的に痙攣させることでユーザーに恐怖感を覚えさせることを目的とした作品。VR空間の中では、セグウェイを操って、高所に架けられた橋を渡るコンテンツを体験できる。前後左右に傾く台や、セグウェイを模した持ち手など、総合的なデバイス体験で恐怖感を演出している。

●13:無限滑り台(ヘキサゴンジャパン賞)

甲南大学 知能情報学部 知能情報学科 田村研究室
チーム名:ウロボロ戦隊スベンジャー

VR空間内でループ構造の滑り台を「無限に」滑り落ちることができる作品。椅子にはベルト状のローラーが組み込まれており、Arduinoで回転数が制御される。これに送風機での風力制御と、滑り落ちる速度に合わせたVR空間内での風景の動きを組み合わせ、Unity上で総合的な制御を行うしくみだ。方向転換や急な加減速がないため酔いにくく、様々なシチュエーションの滑り台が体験できた。

●14:蹴球インパクト

慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 Embodied Media Project
チーム名:Team南葛

漫画やアニメなどでお馴染みの、サッカーの必殺シュートをVR世界でくり出せる作品。センサが搭載されているスリッパを履き、VR HMDを装着すれば準備OK。あとは実際に足を蹴り、相手チームとのPK戦に挑戦していく。利き足側のスリッパは背後の装置に紐で繋がっており、足の動きがいったん紐で制限されたのちに、紐がリリースされる。これにより足がボールに当たったときの衝撃が表現されている。

●15:Suspense Creeping Bomb

長野県松本工業高等学校 電子工業科 電子工学部
チーム名:アルカディア Ⅶ

いわゆる「脱出ゲーム」をVR的に解釈・発展させた作品で、アミューズメントパークに設置された時限爆弾を、通風口を這い進んで見つけ出し、時間内に撤去するのが目的。通風口はルートがツリー状になっており、壁に描かれた図案などを手がかりに進んで、正しい色のリード線を切断すればミッション成功になる。アミューズメントパークという設定を活かして、様々なバリエーションの通路が用意されている。

狭義のバーチャルリアリティを超えて

バーチャルリアリティの「バーチャル」とは、現物・実物(オリジナル)ではないが、機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザーの五感を含む感覚を刺激することにより、理工学的に創り出す技術およびその体系とされる(Wikipediaより引用)。答えは常に自然の側にあり、研究者は自然に学べというわけだ。そのため、きちんとエビデンスを取り、作品制作に活かすことが重要になる。

しかし、IVRCでは総合優勝に輝いた「ブレインツリー」を筆頭に、現実には体験できない感覚を提供する作品も多く見られる。IVRCは「バーチャルリアリティ」と謳っているが、実際にはロボットやインタラクティブ技術を含めた、より広義な作品を対象としているからだ。これまでも自分自身とハグできる「Sense-Roid」(2010)など、既存概念に囚われない、多彩な作品が登場してきた。

こうした姿勢が学生ならではのユニークな発想力や、最新デバイスから段ボール・ガムテープまで、ありとあらゆる素材を活用して力技で創り出す手づくり感と相まって、他のコンテストには見られないユニークな作品を世に送り出してきた。IVRC作品の上位入賞作品がSIGGRAPHのEmerging Technologiesに採択される例も多く、世界中の参加者から高く注目されるという。

また技術だけでなく、"インスタ映え"を意識した作品やブース展示の美的センス、テーマパークのアトラクション体験にも似たストーリーづくりなど、様々な要素が絡み合う奥の深さも特徴だ。IVRCを経てゲームやエンターテインメント業界に進む学生も多く、人材育成の機会としてもユニークな存在として知られている。来年度にどのような作品が登場してくるか、今から楽しみだ。

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