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若者の"イマ"をファッションアイコン化! Instagramを中心に活動するヴァーチャルモデル「imma」

若者の"イマ"をファッションアイコン化! Instagramを中心に活動するヴァーチャルモデル「imma」

こだわりの顔パーツと表情づくり
写真の印象を大きく左右する要因を細かく調整

細やかな感情を表現できる目

immaをリアルな存在として成立させている要素に目の表現がある。最終的なレンダリング画像【A】を見ると、潤いや輝き、目の焦点などを感じさせる感情豊かな目が実現されていることがわかる。瞳は2つのパーツに分けて作成されており、眼球部分【B】と虹彩部分【C】に分けられている。眼球の構造で特徴的なことは、瞳の大きさがコントロールできるようになっているところだ。大きさを変えられることで、環境のちがいによる見映えの変化に幅をもたせることができている。なお、虹彩や白目部分の毛細血管は、実際に人の目をスキャンしてテクスチャとして利用しているという。細かな部分についても、白目部分に浮き出る毛細血管やリアルな虹彩、目頭の潤んだ表現など非常にこだわりのあるつくりになっている。

女性らしい唇の表現

Instagramへの投稿で目を引くのは、グロス感やディテールが強調された唇のアップの写真だ。immaのルックを作成していく際にはInstagramに投稿するという前提で制作しているため、肌の汎用素材を利用する際にも毛穴のようなディテールをつぶしていき、スマートフォンのアプリにあるような美肌フィルタをかけたようなルックに仕上げているが、唇など表情を出す必要があるパーツは、非常に細かいディテールを表現できるようなシェーダ構成になっているという。ただ、現在はあまり生々しくならないよう情報量を抑える方向に調整しているとのことだ。

ブレンドシェイプによる表情変化

immaの表情は、15種類程度のブレンドシェイプを使ったフェイシャルリグが組まれている。「immaの表情にはとてもこだわって制作してもらっています。どのようなポーズにどのような表情を組み合わせるかで、まったく印象がちがってきてしまうからです。口を開けているのか半開きなのか閉じているのかとか、カメラ目線のポーズになっているのかとか。immaの表情を合成する実写素材に合わせた調整が細かく施されています」とM氏は話す。図は作成されたブレンドシェイプの一部と、制御用のシェイプエディタだ。

コストパフォーマンスに優れた画づくり
目的に応じて適切な手法を選択するということ

汎用HDRIを有効活用したライティング

Instagramに投稿されている写真は、実写で撮影されたモデルと背景込みのポートレートに、3DCGでつくられたimmaの頭部をコンポジットして制作されている。実写と3DCGのコンポジットだと説明されてもなかなか信じられないクオリティでコンポジットされているが、「3DCGの表現としてはそんなにフォトリアルではないルックで、かなり手づくり感のある仕上がりにしています」とモデリングスーパーバイザーの松本龍一氏は言う。通常このような実写との合成ではHDRIを撮影して3DCGをライティングする手法を採るが、今回は頻繁に様々なシチュエーションの写真を投稿しなくてはならないため、写真撮影の現場でHDRIを撮影せずに、合成する写真に最適化されたライティングのリグに汎用のHDRIを組み合わせるという、コストの低い方法が採られている。【A】は今回使用した汎用HDRIで、ModelingCafeスタッフの浦上真輝氏が撮影した曇り空の庭園写真だ。この素材をベースとして、【B】のように必要に応じてライティングを施している。

Photoshopによるコンポジット

3DCGのimmaと実写素材との合成にはPhotoshopが用いられている。最初はNUKEでコンポジットしていたが、Photoshopの方が効率良く作業することができたという。「今回はとにかく量をこなす必要があり、80点のものを100点にするためにこだわりまくって時間をかけてしまうことはNGだったので、極力良い感じに見えつつも1枚あたりの作業時間を短縮するように工夫してもらっています」と岸本氏。レンダリングもパスで分けて要素ごとに合成するというのではなく、レンダリングされたビューティを実写に合成して馴染ませていくという、実写素材同士の合成と同じ手法が採られている。3DCG側のレンジ調整だけは、V-RayによってMaya内で調整してレンダリングされている。「実写素材に合成するため、写真によってカメラやレンズの状況が異なり、個別の状況に合わせて3DCGを合成しなくてはならないのは少し苦労した部分です」と松本氏は語る。【A】レンダリングされた未加工の素材。【B】コンポジット後の完成形。Photoshopのノイズ除去フィルタやぼかしフィルタを用い、合成する写真の画像的な劣化をCGに反映させている。

まとめ
ModelingCafe.Humanの今後の展望

ModelingCafe.Humanプロジェクトではクリエイティブ面だけはなく、ハードウェアにも力が入れられている。そのひとつが2018年に導入されたフォトベースの3Dスキャンシステムだ【A】(※画像は設営途中時点のもの)。このシステムの開発運用は同社テクニカルアーティスト岡田博幸氏を中心に進められている。システムの特徴としては、フォトベースでの3Dデータ制作からカラーテクスチャの撮影まで行えること。一般的なフォトスキャンではディフューズマップの撮影どまりのシステムが多いところ、このシステムではアルベドなど複数の素材出力が可能であり、論文ベースの対応を実現している。

「当社のアドバンテージは、このシステムをベースに、モデリングに精通したスタッフがブラッシュアップを施した状態でスキャンデータを納品できることです。また、AnimationCafeと連動することで、リグやアニメーション制作にそのまま使用できるレベルのデータ納品が可能になります。これまでフェイシャルアニメーションをリアルにしたいというニーズが多かったのですが、一般的なスキャンシステムでは情報が少ないためリグを作成するのが大変でした。このシステムを使用することで、フェイシャルアニメーションの先進的なR&Dを進めることができます」と岡田氏は話す。現在はフェイシャル中心のスキャンシステムだが、今後はフルボディでスキャンできるシステムに拡張する予定だという。

【B】の女性キャラクターは現在開発を進めている「ria」だ。この画像はノーレタッチの状態でここまでのクオリティを出すことに成功している。riaはフルボディのキャラクターとして開発され、リアルタイムで演技ができるところまでを目標にしているという。スキャンシステムと共に、これからの進化が非常に楽しみだ。


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