POINT 04
赤をイメージカラーとした『P5D』らしい画づくり
アウトローを感じさせるカッコ良さが光る
『P3D』とは打って変わって、『P5D』のOPムービーからは力強い印象を受ける。BL影を用いてはっきりとしたコントラストにしていることも、ひと役買っている様子だ。そして、全体を通してアウトローなイメージを抱かせるつくりは、ピカレスク・ロマンをテーマとする原作ゲームとのつながりも意識させる。「OP序盤の奥村 春と佐倉双葉が一緒に踊るシーンで、春のおしりがぶつかって驚く動作があるんですが、ここはアトラスさんでも好評でした!」と松浦氏。短い時間の中で、キャラクターの人間性まで上手く落とし込んでいる。それを受けて鎌田氏は「全体を通した雰囲気が本作の一番のポイントですね。市川さんは、いつでも"良い感じに"という要望だけなので苦労します」と苦笑しながらも「ドメリカでは、スタッフはオペレーターではなくクリエイターだと考えています。それぞれが良いと感じるものや、その人の持ち味を活かしてくれる社風ですね」と結ぶ。映像作品としてはどちらも2分足らずと短くはあるが、そこにはクリエイターひとりひとりが責任をもって向き合い、試行錯誤を重ね、最良のものを追求した「影の時間」が隠されているのだと感じさせられた。
『P5D』OPムービーの特徴
『P5D』のコンセプトは「ストリート」、「地下鉄」、「レトロ感」、「レコード」、「グラフィックアート」。都会で悪さをしているアウトローをイメージしている。イメージカラーについては、こちらも原作と同じ「赤」が採用された。また『P3D』と『P5D』に共通して、ゲーム原作のポップな印象や原作内に登場するアイコン、花吹雪のエフェクトを採り入れることによって、原作とは大きく異なるゲーム内容でありながら、シリーズとして統一感のある仕上がりにしている
絵コンテ
場面カットの一部。全体的に赤で統一されている。ちなみに、ビルのイコライザーのようなエフェクトは、AEで作成されたもの。曲に合わせてレベルが動くように、エクスプレッションで制御している。「事前にエフェクトが発生する場所までフィックスできるのは、全てのカットでCGレイアウトを作成している強みですね」とCGの飯田祐輝氏。このエフェクト表現は『P3D』へ流用することで効率化も図っている
スタッフオススメ! あらゆる歩きモーションをつなげて制作した主人公のカット
こちらは、制作陣が口を揃えて「見せ場」だと話すダンスシーン。主人公が踊りながらひたすら左へ歩いていく10秒ほどのカットだが、その裏には大変な苦労があったという。ダンスのモーションキャプチャはあくまで本編のために収録されているため、当然横に歩き続けるような動きのモーションはなかった。そこで、ありとあらゆるダンスの動きから歩くモーションを切り取り、繋ぎ合わせることで、この一連の動きを作成している。「AEで足の位置を調整するなどして、少しの隙もないように動きを繋いでいったので、とても大変でした」と兼平氏は話す。上手く繋げない箇所は手付けにしたり、どうしても難しい場合には作画で中割りしたりして対応しているという
絵コンテ
AEの作業画面。CGでおおよそのアタリをつけている
CGアニマティクスの連番画像
第一原画。ここではCG素材と同じポーズで描かれているが、最終的には、より見映えのするポーズへと作画で修正されることとなった
TVPaint Animationの作業画面。プレビューで確認しつつ、コマ数や動きを調整して描いていく。約10秒と長めのカットではあるが、TVPaint Animationは重くならず、ストレスなく作業が行えたそうだ
セル素材。実はこのシーンでは、脚を長くする修正も施されている。カット枚数があるだけに、その苦労は相当のものだった様子
完成画。スタッフそれぞれの努力や想いが積み重なり、この見応えのあるシーンが仕上がった
コンポジットによる世界観の統一
『P5D』ではイメージボードを用意しておらず、撮影処理の段階で画づくりの調整を行なったという。まずは各カットを1本に繋げ、全体のバランスを考慮しながら、カットごとに適した赤色となるよう処理していく。それでは撮影処理前(左)と後(右)で比較して見てみよう
撮影処理前(左)と後(右)。単なる赤色ではなく、ストリート感のある「オシャレな赤」でまとめられた
撮影処理前(左)と後(右)。こちらのカットでは、ノイズを乗せることでレトロ感を表現している
撮影処理前(左)と後(右)。ミラーボールの表現にも工夫が施されている。CGレイアウトが作成されたことにより、背景の3Dモデルの形状に合わせて光が当たるような処理を施すことで、リアリティのある表現となった。なお、素材は作画と同時に渡されているとのこと
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