>   >  テレワーク、海外事例にアニメーターのお金の話まで。デジタル作画におけるトピックが集結〜ACTF 2019レポート(2)
テレワーク、海外事例にアニメーターのお金の話まで。デジタル作画におけるトピックが集結〜ACTF 2019レポート(2)

テレワーク、海外事例にアニメーターのお金の話まで。デジタル作画におけるトピックが集結〜ACTF 2019レポート(2)

<3>「北米トップスタジオにおけるアニメーションのフルデジタル化事例」
by Toon Boom Animation

最後にカナダ・Toon Boom Animation本社より、カスタマーサクセスディレクターを務めるマリーイヴ・チャートランド/Marie-Eve Chartrand氏の講演「北米トップスタジオにおけるアニメーションのフルデジタル化事例」を紹介する。海外事例という珍しさと、当日最後の講演ということもあり、比較的小さな会場は満員状態に。

Marie-Eve Chartrand氏(Toon Boom Animation)

北米におけるデジタルアニメーション制作では、フルデジタルで制作する「ペーパーレスアニメーション」と、紙に描いた原画を取り込み、キャラクターをパーツごとに描き、パペットのように組み合わせて制作する「カットアウトアニメーション」の2種類の手法が活用されている。国をまたいでの制作もあるため、途中でフローが入れ替わることもままあるのだという。日本のアニメ業界とはかなり趣が異なるようだが、やはり市場のニーズに対応するために効率化された制作フローが求められ、過去のやり方を変えていかねばならなかったという点においては、現在の日本のアニメ業界と似た状況だったとのこと。

2つの手法が混在する北米では、このごちゃ混ぜ感を上手く融合させて制作を行なっているのだという。道具は何でも良いのでより良いアニメーションを効率良くつくろう、という意識が何より重要とのこと。例としてペーパーレスの作品とカットアウトの作品が両方紹介されたが、正直見た目の仕上がりは変わらない。もちろん作業工程内での得手不得手はあるのかもしれないが、どちらであってもクオリティには差はないようだ。

デジタルを選ぶ理由はいくつかあるが、ひとつは従来の手法がそのまま使えること(この点は本イベント全体を通して重要性が伝えられている)、それに加えてキャラクターのデザインやポーズの自由度、再利用が容易であること、拡大縮小が可能であること、また実質的な部分ではゴミ取りなどの作業がなくなる点などが挙げられた。もちろん課題もあり、作業者のトレーニングに割り当てる時間や新しいことへのトライのリスク、機材もそうだが周りの監督やプロデユーサーの理解など、簡単に導入できているわけではないのだという。それでもやはり将来的なメリット(というより必然性だろうか)が大きいため、今後も徐々に浸透していくのだろうと感じた。

<4>ツールからお金の話まで充実の展示ブース

展示ブースではお馴染みWacomの液晶ペンタブレット、定番となりつつある株式会社セルシスCLIP STUDIO PAINTコダック アラリス ジャパン株式会社の高速スキャナなど様々な展示がなされていた。いくつか詳しく紹介しよう。


  • 株式会社セルシス(CLIP STUDIO PAINT)


  • TVPaint Animation

経営創研株式会社は「補助金活用&経営支援サービスコーナー」として、経営コンサルタントが補助金の活用法についてなど、経営相談を受けていた。お金の話というのはなかなか話しにくいものだが、仕事として請け負う以上は欠かせないものだし、特に自営業者は情報が少なくつい1人で頑張ってしまいがちであるから、こういった話を気軽にできる環境はありがたい。

パンケーキ株式会社/トワフロ株式会社は「2DアニメにBlenderやVRペイントツールなどの3Dツールと手法を取り入れたアニメの制作」として、3D空間にVRシステムを使って絵を描いていくと、立体的かつ2Dの絵として表現されるという、何とも面白いデモを行なっていた。VRを使って実際の空間の中で3Dモデリングを行うところまではわかるのだが、結果として2Dの作画のように見える。慣れるまでは大変そうだが、これはむしろ今後アニメでもCGでもない新たな表現ができそうな、そんな雰囲気のツールだった。


  • パンケーキ株式会社/トワフロ株式会社


  • 株式会社サードウェーブ

全体的に「今まで遅れていたテクノロジーをもっと取り込もう!」という雰囲気に包まれたイベントだった。アニメの制作は決してたやすいものではなく、多くの労力の元に作品が生まれている。参加しているアニメ業界の方々は、大変そうだけれどもそれでもやはり楽しそうに見えた。過去のやり方はもちろん長年培われてきたノウハウが詰まっているし、結果も十二分に出ているわけだが、今後ももっと作品づくりに没頭するためには、デジタルで効率化し、省けるものは省くべきだと感じた。これまでのノウハウをいかに上手く、また段階を追ってスムーズに浸透させていけるかが今後の課題だと実感したセミナーだった。



  • アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2019
    日時:2019年2月2日(土)
    場所:練馬区立石神井公園区民交流センター
    主催:一般社団法人日本アニメーター・演出協会(JAniCA)、ACTF事務局
    共催:株式会社ワコム、株式会社セルシス
    www.janica.jp/course/digital/actf2019.html

特集