>   >  ゲーム・映像・建築分野の業界人がUnreal Engine 4の可能性を語り尽くす〜「UE4 業界人パネルディスカッションセミナー in 大阪」
ゲーム・映像・建築分野の業界人がUnreal Engine 4の可能性を語り尽くす〜「UE4 業界人パネルディスカッションセミナー in 大阪」

ゲーム・映像・建築分野の業界人がUnreal Engine 4の可能性を語り尽くす〜「UE4 業界人パネルディスカッションセミナー in 大阪」

他のゲームエンジンと比較したUE4のメリットは?

ここで、司会の坂井氏から投げかけられた「他ゲームエンジンと比べてのUE4の優位性とは」との議題に対し、中村氏は「BluePrint(以下BP)に初めて触れたときは衝撃だった」と答えた。「コンテナ同士を繋ぐだけで簡単に処理が書け、想定しうる機能はBPだけで制作できる。むしろできないことを探すほうが難しい。ゲーム制作で困ることがないほど機能が充実している。BPだからこそできたことも多い」(中村氏)。

一方、簡単に、自由につくることができるゆえに負荷が高い処理になってしまうケースも見受けられるため、規模によってはあらかじめエンジニアに見てもらい判断することを斎藤氏は勧めていた。その後斎藤氏より直近で追加されたUE4の新機能について紹介がなされ、各分野のパネラーはそれぞれ、Niagara、Chaos、PixelStreamingなどUE4の新機能への興味を示していた。

建築分野では、Unreal Studioの出現が業界の常識を大きく変えようとしていると梁河氏は話す。「建築分野で利用されるBIMソフトRevitで設定したパラメータやマテリアルは驚くほど素直に、破綻なく読み込みが可能です。BIMで制作したデータには、例えば机であれば大きさ、高さ、材質、制作工場など様々な情報が付属している、照明器具の割付や設置位置など、根拠をもって計画された情報をそのまま読み込むことができる」。

続いて建築分野で話題のビジュアライゼーションツール、Twinmotionにも言及。「UIがとてもシンプルかつわかりやすく、天候の変更など簡単な操作で制作できる。ただし実行ファイルで書き出した場合容量が大きくなりがちな点や、UE4との連携が弱いと感じる」と梁河氏が使用感を語り、「UE4と比べても学習コストが低い点は大きなメリット」だとメーカー側の視点から斎藤氏が言い添えた。

また、UE4におけるVRコンテンツ制作については、「UE4製のVRコンテンツは多く、高クオリテイのVRコンテンツ制作なら選択肢に入りやすい。Epic Gamesが提供している『Robo Recall』などのコンテンツサンプルや、チュートリアルが充実しており敷居は低いと思う」(中村氏)。

質疑応答

セッションの後半は、事前に参加者からあらかじめ募集した質問に、パネリストが回答する形式で行われた。

Q:BIMや点群からのモデリングについて

「点群のインポートは可能。自動生成ソフトはあるが、点群の精度向上とともに 自動生成の難易度も上がっていると感じる、そのままモデルとして使用できるかは難しいところ」(梁河氏)。

「映像分野では点群データを撮影現場のアタリとして用いたり、IBL(イメージベースドライティング)として利用することもある」(小宮氏)。

似たような技術で、フォトグラメトリを映像のシーン設計に活用する場合もあるという。SNS等で点群を用いた表現が散見されることから、参加者も各分野やUE4での活用方法に注目している様子だ。

Q:各分野で今後活かされると感じるUE4の機能は?

「UE4は機能が豊富でどれも有効利用できると考えているが、特にComposureによるリアルタイムコンポジット機能には注目している。これまでゲーム内で動画にせざるをえなかった部分をリアルタイムで実現可能になるかも」(中村氏)。

「海外のニュース番組で気象情報等を扱う際に、デジタルセットとしてUE4を用いている例がある」(小宮氏)。

また、UE4のVersion 4.23ではMicrosoft HoloLensへの対応が予定されており、HoloLensのコンテンツ開発にUE4を利用する例が増加するだろうというパネラー陣の見解も示された。

Q:映像制作において、プリビズ以降の工程にリアルタイムレイトレーシングを用いることは可能?

「これまでDCCツールでプリビズのシミュレーションを行う際はカメラリグなどを制作する必要があり大変だったが、UE4ではマーケットプレイスでプリビズ用アセットが販売されており、併せてライティング計画も可能で非常に有効性を感じる。また現実世界でプリビズを行う場合は天候や日照など環境要素にも気を遣う必要があったが、UE4内でよりリアルなシミュレーションができることは画期的」(小宮氏)。

未知数の実力をもつリアルタイムレイトレーシングの今後の活用事例が期待される。

Q:映像を学ぶ学生がUE4を学習するメリットは? UE4を使えることに需要はある?

「UE4を用いた仕事は多数ある。映像分野に限らず多種多様な制作に関われる可能性がある」(中村氏)。

パネラーが共通して口にしたのは、UE4は目的ではなく手段であり、選択肢の1つにすぎない。ツールに囚われず、将来を見据えて学びを広げれば良いのではないか、ということだった。

Q:3DCG制作において技術発展が足りない工程、自動化されてほしい部分は?

「30年以上前から制作方法に劇的な変化がない、未だに頂点を編集して制作を行なっている」(坂井氏)。

「3DCGに共通して言えることだが、ファイルのフォーマットが発展途上で技術発展のネックになっているように感じる」(中村氏)。

「例えば紙に対して間取りを書き数値を与えれば自動でモデリングができるようになれば嬉しい。3Dのモデリングが建築分野の人間にとって参入障壁になっていると考えている。また、同じくファイルフォーマットの共通化を望んでいる」(梁河氏)。

「シナリオを読ませると物語が自動で出来上がってほしい(笑)。ビッグデータを活用して映像の盛り上がりをヒートマップで表し、制作に反映させることなどは既に行われているので、データを利用したしくみで制作が捗ると嬉しい」(小宮氏)。

他にも、UE4の出版業界での利用事例に関する内容や建築コンテンツ利用の方法など、ゲーム以外の業界での利用に関する質問がみられ、会場の関心の高さが窺えた。

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