■シーン制作のながれ
第1話のカット269を参考に、艦隊戦の制作フローをみていこう。本作ではスケジュールを考慮して、ドッグファイト以外の艦隊戦はラフ原画を省くフローが採られた。その代わり、レイアウトを詰めるためにディテールアップコンテが描かれている。その大まかなプランニングを基に、3DCGでモーションを付けていく
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▲3ds Maxの作業画面。様々な角度から確認して作業を進める -
▲コンテのアングルから見た3ds Maxの作業画面
▲完成画。カットの内容を文字にしてしまえば「直進してビームを撃つ」だけだが、実際にはかなり多くの要素が盛り込まれている
■シーン制作における3Dレイアウト
ここでは、第1話カット47を例に3Dレイアウトについて紹介する
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▲作業画面。あらかじめモデリングされた戦艦の艦橋に参考用のキャラクターモデルを配置し、カメラを決定する。キャラクターモデルを配置する際には、設定に合わせて身長も調整された -
▲決定されたレイアウト。背景は2Dで描かれるため、この画像を出力して作画用紙へプリントする
こちらは第2話カット39で用いられた3Dレイアウトの例
▲3ds Maxの作業画面
▲完成画。3Dレイアウトは作中の様々なシーンで活用され、クオリティアップに貢献した。キャプテンシートが映っているカットは必ず3Dレイアウトを使用することで、効率的に作業を進めている
■背景表現〜2Dの場合〜
宇宙空間は広大なため、実際の宇宙を想定すると、カメラがPANしない限りは、カメラがどんなに移動しても背景の星は動いて見えない。しかし、それでは戦艦が動いていないように見えてしまい、迫力のない映像となってしまう。そこで、戦艦が進攻しているという速度感を演出するため、AE上でBG素材をスライドさせて表現している。「2D作品的なアプローチに近づけるための努力ですね」(森本氏)。視聴者に馴染みのある作画アニメ的な表現を採り入れることで、誰もが受け入れやすい作品が目指された
▲フヴァル星系の背景素材
■背景表現〜3DCGの場合〜
▲先述の通り、ドッグファイトのシーンの背景は、スピード感を演出するために立体的に作成している。AE上で全天の宇宙を作成し、3ds Maxから出力したカメラモーションに、移動や回転を加えるかたちで疑似的に速度感を与えた。比較動画を見れば一目瞭然だが、背景が立体的に動くことで、スピード感のあるカットに仕上がった
■迫力あるドッグファイト
続いて、ラフ原画を用いたドッグファイトのシーン制作について紹介する
▲各工程の比較。上から絵コンテ、ラフ原画、完成画だ。2枚の絵コンテの間の演出を絵コンテが補い、3DCGでつないで仕上げていく
▲絵コンテ
▲ラフ原画の一部。ドッグファイトは非常に複雑な動きのため、ラフ原画が作成された
▲完成画。王道の飛行を行うワルキューレ(銀河帝国)と、トリッキーな飛行が可能なスパルタニアン(自由惑星同盟)という設定を存分に活かしたカットとなった
▲第12話カット214の、視聴者の目に残る3DCGのエフェクト例。画像は3ds Maxの作業画面だ。ドッグファイトの高速で複雑な動きをわかりやすくするため、GhostTrailsで軌道が追加された。また、このカットのワルキューレのように、動きにひねりを入れて綺麗な螺旋を描くことで、画面的な映えも意識しているという
▲完成画