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『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』におけるRedshiftレンダラの実力

『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』におけるRedshiftレンダラの実力

mental rayとRedshiftの設定

使いやすさもツールを選択するときの大切な要素だ。mental rayとRedshiftの使用感の親和性を設定画面の構成から比較する。

▲マテリアル設定画面の比較。mental ray Arch & Design マテリアル(左)とRedshiftのマテリアル(右)は、いずれも一般的なフィジカルベースの設計になっている。パラメータも同様の箇所が多く、こうしたツールを使ってきたアーティストであれば、すぐに馴染めるとのこと

▲レンダリング設定画面。こちらに関しても、基本的な部分は一般的なレイトレーサーとして共通箇所が多く、基礎的なパラメータさえ理解していれば戸惑うことなく使用できる。参考として、同様の意味をもつパラメータを同じ色で囲んだ。左がmental rayで、右がRedshift

Redshiftによる画づくり

レンダラの使い分けや切り分け方はオーソドックスだが、作画の質感にフォトリアルな表現を採り入れた本作ならではの画をつくるために、特殊なAOVを多く出力している。

▲完成画

▲Pencil+で出力したカラー(左)とライン(右)素材。このセル調の素材をベースとして、Redshiftから出力した各種AOV素材を重ねていく

以下の8画像は、Redshiftで出力した素材。



  • ▲AO


  • ▲フォールオフ



  • ▲戦艦内部の間接照明


  • ▲環境反射



  • ▲金属反射1


  • ▲金属反射2



  • ▲流体金属マスク


  • ▲シェーディング素材

セル調の案件で出力することの多い【AO】、【フォールオフ】に加え、一部ではあるが【戦艦内部の間接照明】、【環境反射】、【金属反射1】、【金属反射2】、【流体金属マスク】、【シェーディング素材】も出力された。「レンダリング速度がそのまま画づくりのしやすさにつながっています。ライティングも確認しやすく、今まで時間的に出すのを控えていたような素材も、今後アニメのフローに乗せられると思うので、ルックを開発していくのが楽しみです。ここまでレンダリングが速いと、セル調のライン素材等もRedshiftで出したくなってくるので、今後の更新に期待したいですね」(高賀茂氏)

光の表現の向上

Redshiftの導入によって、光の表現も大きく向上したという。mental rayやV-Rayもそうだが、一般的にスペキュラはライトが当たって白くキラッと光った要素が個別に出力される。しかしRedshiftでは、一時反射が全てスペキュラとして出てくるため、他のレンダラではリフレクションとなるものがスペキュラとして出てくるという特徴がある。戦艦の間接照明を例に表現の差を比較してみよう。

▲mental rayで出力した戦艦の間接照明パス

▲Redshiftで出力した戦艦の間接照明パス。Redshiftの方が、照明から漏れ広がる光が一層美しく繊細に表現されている。mental rayでもサンプル数を上げていけばRedshiftと近い表現も可能だが、タイトになりがちなアニメ制作のスケジュールの中ではあまり現実的ではない。そこで、mental ray使用時はサンプリング数や反射・屈折回数などの設定を切り詰めていたというが、Redshiftの導入によって、レンダリング時間が飛躍的に短くなり、反射や屈折、エッジ(アンチエイリアス)を含め、美麗な表現ができるようになったという。高賀茂氏は「本作は反射などの素材も乗せていますが、一般的なアニメ作品の場合、Pencil+の素材とAOを出して重ねるような画づくりが大半です。いろいろな素材を出して、TVシリーズでもこった画づくりが時間的に間に合うようになったら面白そうですね」と話す

Alembicを用いたエフェクトのレンダリング

本作ではイゼルローン要塞と絡む水面(流体金属)の表現が必要であった。ボリューミックなエフェクトだが、まずAlembic経由で水面素材をHoudiniから3ds Maxへ読み込み、その後Redshiftで水面や反射のレンダリングを行なっている。

▲Houdiniでシミュレーションした水面のエフェクト

▲Alembicで読み込み、調整を行なったメッシュ

▲完成画。Redshiftでレンダリング、コンポジットした。RedshiftはFumeFX標準のボリュームレンダリングには未対応のため、現状では爆発などのパスは標準レンダーで出力している。しかし、VDB形式であればRedshiftでレンダリングできるため、今後はエフェクトのキャッシュをRedshift対応のVDB形式へ変換し、よりスムーズなフローとなるように整備していく予定とのこと

レンダリング時のエラー対応

Redshiftを使用する際に注意したいこととして、Windowsのリモートデスクトップ由来のエラーがあったという。リモートでレンダーサーバの稼働を確認していたところ、レンダリングエラーになる不具合が多発したそうだ。結論としては、リモートデスクトップでPCにアクセスした時点で、OpenGLのバージョンがダウングレードされ、Redshiftに必要な機能が使えなくなることが原因であった。再起動をすればバージョンが戻り使用できるようになるが、レンダリング中にリモートデスクトップを使用するのは注意が必要だ。現在は、リモートデスクトップツールとして「UltraVnc Viewer」を使うことで、問題なく対応しているという



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