>   >  「建築写真」と「広告CM」─「ビジュアライゼーション」が繋ぐ分野横断の知見共有〜「Tokyo ArchViz Camp」
「建築写真」と「広告CM」─「ビジュアライゼーション」が繋ぐ分野横断の知見共有〜「Tokyo ArchViz Camp」

「建築写真」と「広告CM」─「ビジュアライゼーション」が繋ぐ分野横断の知見共有〜「Tokyo ArchViz Camp」

<2>広告・PV制作におけるビジュアル制作ワークフロー

次に登壇したのは、広告映像メインの映像制作プロダクションである「SOARZROCK」に在籍するCGディレクター・デザイナーの寺村太一氏。広告PV制作におけるワークフローについて語った。

広告用CGは、ゲームやアニメと異なり、CG制作に関わる人数が少ない場合が多い。そのためモデラーやアニメーター、エフェクトなど様々な職種に分かれるCGに関連する他の業界と異なり、全ての工程に携わるジェネラリストが多いという。また、モーショングラフィックス作業やAfterEffectsなどによるコンポジット作業を少人数のクリエイターが行う広告系のCG制作では、多機能でAfterEffectsとの連携性に優れるCinema 4Dの利用者が増えているとのこと。

  • 寺村太一氏

次に寺村氏は広告CM制作のながれについて説明。広告CM制作は複数の広告代理店に声がかかり、コンペを行なって制作会社を決定する。制作会社の外部にカメラマンやCGを担当する会社がいる場合が多いが、SOARZROCKは社内にCG部をもつのが強みだという。さらに工程を下図のように紹介した。

特にこの中で重要なのは「プリプロダクション」だと語る。企画準備段階で行うプリプロダクションは絵コンテの制作、スタッフやキャスト選定、予算確認、スケジュール確認など多岐に渡るが、よい広告CMができるかどうかはこの工程にかかっていると説明する。

GPUレンダラの登場が変えた広告映像制作のフロー

次に2つの広告CM制作事例を交えながら、具体的な制作フローについて解説した。これまで納期に余裕のある案件でしかできなかったフルCGCMがOctane RenderRedshiftのようなGPUレンダラの登場により、ワークフローが変わり、比較的短納期や低予算のCMでも制作できるようになったのが近年の大きな変化だと語った。具体的には、GPUレンダラの登場でリアルタイムで映像を確認しながら制作できるようになったことにより制作スピードが向上し、クライアントの要望に応えるスピードが向上したという。

制作事例の1つとして紹介された「アムール・デュ・ショコラ〜ショコラ大好き〜」(ジェイアール名古屋タカシマヤ/2020年1月17日(金)〜2月14日(金))」のCMでは、実写とCGを合成する映像を制作した。

『開店20周年記念 2020 アムール・デュ・ショコラ 〜ショコラ大好き!〜』

本事例では「遊園地」というコンセプトに沿って制作された絵コンテに対し、ダミーのモデルを用いて絵コンテがアップされてから数時間で遊園地のプリビズを制作したという。

このプリビズにより撮影計画(カメラの機材やレンズの種類の選定など)、撮影のシミュレーションもCG上で行えるためイメージの共有が促進され、その後の工程のスムーズ化につながったという。これは社内にCG部がある同社だからこそ制作部(プラニングを行うチーム)とプリビズを介した検証を手軽に高頻度で行えるからだと説明した。また自身も撮影に立会い、その場で仮合成を行い、仮編集した映像をクライアントに確認したという。ここでも社内にCG部をもつ同社であれば、会社間の調整の必要がなく、素早い対応や判断が行えるというメリットがあるとのこと。



<3>限られた時間の中で制作を行う「雑誌写真」と「広告CM」

寺村氏が紹介した制作事例はどちらもCGの制作期間が2〜3週間ほどだったという。また、Y氏の携わる雑誌は月刊誌のため、基本的に撮影は一日で終え、1日でレタッチを終えなければならないスピード勝負となる。

そのため限られた時間の中でいかに素早く制作を行うのかを考えることが必要となる。GPUレンダラの登場や、編集ソフトの進化など様々な技術の進化により制作が早くなった。そのため、変化する作業フローや組織構造に対応するための投資こそ必要だとも語られた。

会場にはCGに携わる聴講者が多く見られたが、建築写真に携わるY氏に対して使う機材や具体的な作業フローについてなどの様々な質問が上がった。異なる業界でありながら、そこの裏にあるテクニックや悩みには共通する点もあるのだということが伺える機会となった。



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