>   >  16名の豪華講師陣による2日間短期集中講義! 「 CGWORLD MASTER CLASS ONLINE Vol.1」 レビュー
16名の豪華講師陣による2日間短期集中講義! 「 CGWORLD MASTER CLASS ONLINE Vol.1」 レビュー

16名の豪華講師陣による2日間短期集中講義! 「 CGWORLD MASTER CLASS ONLINE Vol.1」 レビュー

<3>フルCGからセル調まで網羅した「アニメーションコース」

■最良を目指して丁寧に動きを付ける! アニメーションコース〈Day1〉

ここからはアニメーションコースの様子をお伝えしていこう。初日のスタートを切ったのは、CGWORLD.jpで連載をもつ若杉 遼氏による『すぐに使えるフェイシャルアニメーションの基礎技術』だ。タイトル通り、すぐにでも使えそうな具体的なテクニックを手描きイラストを交えつつわかりやすく解説してくれた。アニメーションはひとつひとつの小さな動きが集まって大きな演技になるのだと思い知らされる講義であった。

▲若杉 遼氏

続いて、トンコハウス中村俊博氏による『3Dアニメーションにおける2Dブロッキングワークフロー』では、アニメーションのブロッキングを2Dの手描きで始めるという独特のフローが紹介された。確かに最近のリグは自由度が増しているとはいえ、手描きの方がポージングの自由が利くだろう。3Dアニメーションだから最初から最後まで全て3Dでつくる必要はない、という考え方は目からウロコで、ブロッキングのための手描きのシンプルなキャラが活き活きと動いている様子は印象的だった。

3本目の講義は、日本の2Dアニメーションで作画監督として活躍中の立中順平氏による『手描きアニメーターのスケッチ~アニメーションの下描きに使えるスケッチのポイントを解説』。手描きでの人物スケッチのコツを教えてくれたのだが、手描きをするときの人体のブロッキングの仕方がわかりやすく語られた。ひとつ前の中村氏の2Dブロッキングに挑戦する際などにとても役に立ちそうなテクニックだ。3Dアーティストでも2Dで画を描けることはメリットが多いので、ぜひ取り入れたい。

初日の最後を締めくくったのはYAMATOWORKS坂本隆輔氏による『結構知らない⁉ 良いアニメーターになるために絶対必用な能力とは!~周りのアニメーターと差をつけるアプローチの仕方、マル秘テク!~』だ。制作の現場で他のアニメーターとどのように差別化していくか、メンタル面などの自己分析から始まり、Mayaでカットを制作していくデモンストレーションへと続く。日本アニメらしいセル調アニメーションの画づくりは、どのようなCG制作の現場でも参考になるはずだ。キャラクターの変形を駆使して、どんどんと魅力的な画になっていく様子は見応えがあった。

3Dからセル調までバラエティに富んだ初日の所感としては、技法や方法論は各講師それぞれオリジナリティがあるが、最良を目指して丁寧にアニメーションをつくる姿勢は共通していることが伝わってくる1日であった。演技や動きのイメージづくりからはじまり、カットやアニメーションが完成していく様子を目のあたりにできたことは貴重な体験となった。

▲若杉 遼氏による『すぐに使えるフェイシャルアニメーションの基礎技術』のセッションの様子。具体的なテクニックを手描きイラストを交えつつわかりやすく解説してくれるので、初心者でも問題なく理解できるだろう。若杉氏は「1000 paper cuts(紙での小さい切り傷も1000集まれば致命傷になる)」の例えを用いたが、アニメーションもひとつひとつの小さな動きが集まって大きな演技になるのだとつくづく思い知らされるような講義であった。ちなみに若杉氏は、海外でアニメーターとして活躍する傍ら、AnimationAidを設立するなど若手の育成にも積極的だ


■ベテランアニメーターによる高品質な講義。アニメーションコース〈Day2〉

アニメーションコース2日目は、DNEGのベテランアニメーター小山 誠氏による『四足歩行アニメーション講座 (初級編)』からスタート。動物のリファレンス動画を見ながら動きを検証した後、Mayaで四足歩行のアニメーションを付けていく実戦形式の説明へと進む。コンセプトアートコースの上杉氏の講座でも感じたように、ベテランクリエイターが迷うことなくつくり上げていく様子を見ているだけで多くの気づきがあり、その工程がすでにエンターテインメントである。


▲小山 誠(氏)とMCを務めたCGWOLRD沼倉編集長(右)


続いて2本目の講義は、カナダでアニメーターとして活動しながら、若杉氏と共にAnimationAidを運営する藤原淳雄氏による『アニメーションを磨くテクニック~アニメーションのレベルを上げるポリッシュを詳しく解説~』だ。具体的な作例を挙げての楽しい解説で、彼自身がアニメーション制作を楽しんでしているからこそ、情感たっぷりのアニメーションが仕上がるのだ。テクニックも大切だが制作を楽しむことも大切だと再認識した。

株式会社オプティカルフォース廣田天氏による『MV 「Fly with me」アニメーション徹底解剖~MV 「Fly with me」を事例にアニメーションのポイントを解説~ 』では、カットをつくるアニメーターとしての視点だけではなく、アニメーションディレクターとして「全体を通して演出する」といった目線で解説。監督とのやり取りや、アニメーターへの指示の出し方を含めディレクションのノウハウが詰まった講義であった。

そしてアニメーションコースの最後を締めくくったのは、MORIE Incを率いる森江康太氏による『MORIE Inc.'s ディレクションワークメイキング~GReeeeN「星影のエール」MUSIC VIDEOの裏側お見せします~』だ。この作品で森江氏は、アニメーターではなく監督を務めたとのことで、監督としてアニメーターに求めることや、それら要望にアニメーターはどのように応えていくかといった一連のプロセスについて具体的に解説された。アニメーター目線のセッションが多い中、監督による講義は珍しくとても新鮮である。

以上、2日間で24時間にもおよぶ全セミナーを駆け足でレビューしたが、これまでに培った技術と知識を惜しみなく伝授してくれることに感動してしまった。CGに関する情報は玉石混交でネット上にあふれている時代でもあり、本当に良質な情報にめぐり合うのは簡単なことではないが、この2日間で行われた講義の品質はどれもクオリティは折り紙付きだ。スキルアップはもちろんのこと、モチベーションアップのためにもぜひ参加してみてほしい。


『四足歩行アニメーション講座( 初級編)』

▲参加したハリウッド映画が40作品に上る」というDNEGのベテランアニメーター小山 誠氏による『四足歩行アニメーション講座 (初級編)』の様子。動物のリファレンス動画を見ながら動きを検証しつつ解説していく。次に、実際にMayaを使って四足歩行のアニメーションを付けていくでモンストレーションが行われたのだが、巧い人ほど迷いなく最短距離でアニメーションを付けていくもので、つい簡単に見えてしまい「自分でもすぐにできそうだ」と錯覚してしまうほどであった(苦笑)



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.267(2020年11月号)
    第1特集:バーチャルヒューマン・エッセンシャルズ
    第2特集:ニュースタンダード特化型ツールの現在地
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2020年10月10日

特集