>   >  ディズニーの音と光の世界をきらびやかなパーティクルで表現! 『ディズニー ミュージックパレード』
ディズニーの音と光の世界をきらびやかなパーティクルで表現! 『ディズニー ミュージックパレード』

ディズニーの音と光の世界をきらびやかなパーティクルで表現! 『ディズニー ミュージックパレード』

<2>「ディズニー ミュージックパレード・ゲームテーマソング」ステージ制作メイキング

自動化と職人技を合わせてステージを演出する

ステージ制作は、まず楽曲のアレンジからスタートする。ベース曲をどうアレンジしたら音楽ゲームとして楽しくなるかをアレンジャーとミュージック制作班とで相談して決める。曲が完成すると、デザイナーの柳氏が絵コンテやイメージを作成。「ディズニー映画を何十回も見て落とし込んだ」という原作の世界観をゲーム上でどう表現するかを詰める。

ゲーム部分となるレールとノーツ(タップするタイミングを示すオブジェクト)の譜面作成は、自社で開発したUnityの拡張ツールを使用。譜面班が楽曲のイメージに合わせて、3D空間上に背景となる仮のオブジェクトとレールを配置し、カメラワークを含めたプリビズで構成を確認。問題なければ本制作へと入っていく。

パーティクル表現については、当初はリアルタイムレンダリングで制作を行っていたが、低スペック端末対応やバッテリーの消費低減、さらによりリッチな表現を目指すために、背景のみプリレンダリングしたムービーへと切り替えている。レンダリングサーバはオンプレミスではなく、AWS上でUnityを動かし、自動化プログラムでフレームレートごとの画像を撮影し、解像度ごとのムービーを出力するというもの。「ただ、本作はあくまでゲームなので、いくら背景が綺麗でもノーツが見えにくくなってしまうと本末転倒です。視認性を保ちつつ、一方で背景とゲーム部分とに一体感を出すように、ノーツと背景の色味などは最後の最後まで調整しています」と譜面制作リーダーの佐川氏は語る。

「演出ではカメラの動かし方も大事で、動かし方に気をつけないとプレイヤーが極度に酔ってしまいます。カメラのパンやティルトは遅延制御と補完制御を自動化し、ときには手動でパンのタイミングを遅らせるなど、様々な工夫を入れながら、最後は職人的に仕上げていくのが『ディズニーミュージックパレード』のこだわりです」(横山氏)。

ムービーの自動生成パイプライン

▲作業上の主なツールはMayaとUnity。Mayaでモデリングなど必要なオブジェクトを制作し、Unityでステージの演出や構成を行なっていく。また譜面班もUnityの拡張ツールを使って、音源に合わせたカメラデータとレールデータをつくっていく。各データはAWS上で動作しているUnityで連番画像としてプリレンダリングする。高解像度なその画像を基にAWS上で端末の規格に合わせた3種類の画面比率でエンコードして動画化する。クラウドサーバを活用することで、コストを抑えたプリレンダリング環境を実現させている

譜面班の作業内容

譜面班の作業は、Unityの独自拡張ツールが使用されている。まずイラストによる俯瞰図を参考に、音源に合わせるかたちでオブジェクトの配置、レールの設置、カメラの動きなどを作成していく。初期のレイアウト段階では背景やオブジェクトは仮当ての状態で、予定のタイミングで予定の被写体が映っているかどうかの演出面や、ゲームとしてのバランスも考慮することを意識。ステージ班など他のチームメンバーとも意見交換しながら、その後の方針を決めていく。さらに、出来上がった初期レイアウトに画像や文章で補足した「ラフVコン」を作成し、ステージの全体イメージが完成する。「ディズニー ミュージックパレード・ゲームテーマソング」をはじめとした近作では、この「ラフVコン」と内容をまとめた「方向性シート」を俯瞰図の代わりとしている



  • ▲独自ツールUI



  • ▲ステージラフモデル配置



  • ▲レール配置



  • ▲ノーツ配置



  • ▲レイアウト作業



  • ▲ラフVコン

STEP 01:レイアウト

▲譜面班による、初期のレイアウト段階。オブジェクトなどは仮当てで、タイミングやカメラアングルなどを決めていく。作業完了後、一度監修のチェックを受ける。【左】は紅葉が横切る演出、【右】は大量の音符が出る演出部分で、以降完成までの画面を比較していく

STEP 02:モデルの差し替えと簡易的な演出の追加

▲レイアウトをベースに、より最終形に近いモデルと入れ替え、簡易的なエフェクトや演出を加えた状態。追加でのカメラワークなど、デザイナーと相談しながらブラッシュアップする

STEP 03:ルックのブラッシュアップ

▲ある程度カメラワークが固まってきたら、本格的なステージのルックをブラッシュアップする。この段階では白飛びや色味はそれほど調整せず、タイミングの細かい調整などを中心に行う

STEP 04:全体のバランス調整

▲最終チェックに向けて、ステージ全体の演出バランスを整えていく

STEP 05:最終チェック

▲ほぼ完成形の状態にして、最終の監修チェックに提出。曲によっては変更要請が入り、リスクや工数を相談しながら調整する。【下段】はアグラバーの宮殿に向かう部分で、最後の最後にカメラワークが変更となった

STEP 06:完成映像

▲最後のチェックを経て、1つのステージ映像が完成する。【下段】では画面奥に宮殿を望む、見映えの良いアングルに変更されているのがわかる

© Disney. Published by TAITO



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