Physical law 物理法則
落下~落下運動は等速ではない!物理法則を意識する上で最初に考えるべきものは重力です。特殊な演出を除いて、重力の影響を受けない動きというのはほぼありません。重力を上手く感じさせることのできる動きを作ることができれば、違和感はかなり解消されます。重力が最も顕著に影響する動きのひとつに落下運動があり、ここではそれについて解説していきます
▲キャラクターが画面上部に浮いています。ここからキャラクターが落下していくことになります。このポーズのポイントは、手足を左右に大きく広げ、胴体が手足よりも下方向に沈んでいるところです。これは、胴体が身体の中で最も重いパーツのため、このようなポーズにしています。こうすることで、キャラクターが落下しようとしているという状況がワンポーズだけ見てもわかるようになります
▲先ほどより身体全体が少しだけ下がっています。ポイントは、胴体に比べて手足はそこまで下がっていないという点です。これは同じく、パーツによる重さのちがいを強調したものですが、実際の自由落下運動は重さによって速度は変わりません。ここでは体に引っ張られ、空中に手足が少しでも残ろうとしているキャラクターの感情を表現するために、あえてこのようなポーズにしています
▲先ほどよりもさらに下方へと落ちています。ここから落下運動の特性が顕著になってきます。ここで押さえるべきポイントは「落下運動は等速では行われない」という点です。重力の影響を受ける落下運動は、徐々に加速していきます。そのため、今回のキャラクターの落下もこのポーズ以降は徐々に下方への移動幅が増えていくことになります
▲さらに落下幅が増えているのがわかります。キャラクターも地面にぶつかる直前のような顔をしています。ここで顔に少しストレッチを入れてやると、より効果的になります
▲地面に落ちてしまいました。落下幅はここが最も大きくなっています。1枚目から順に落下幅を見てみると、徐々に大きくなっているのがわかると思います。これは加速していることを意味します。このように、落下運動は等速では行われず、徐々に加速していくということを頭に入れておきましょう
▲完成されたアニメーション
慣性の法則~ものはその場に残ろうとする!続いて慣性の法則について解説を行います。慣性の法則とは「運動の第1法則とも呼ばれ、慣性系における力を受けていない質点の運動を記述する経験則である」(Wikipediaより)という、とても難しい言葉で説明されていますが、わかりやすく言えば電車の中で電車が動いたときに進行方向とは逆に身体が動いてしまったりするあれです。これを噛み砕いて説明すると、ものがその場に残ろうとする性質と言い換えることができます
▲キャラクターがスケートボードに乗っています。ここではキャラクターの重心は左右の足のちょうど真ん中にあるため、非常に安定したポーズをとっていると考えられます
▲スケートボードが少し動きます。すると、キャラクターの上半身が進行方向とは逆に傾きます。上半身がスケートボードの動きに置いていかれた状態です。このとき、キャラクターのパーツの中で最も重いパーツが頭になります。重いものにはより強く慣性が働くので、頭はその場に強く留まろうとするのです
▲さらにスケートボードが前進します。上半身(特に頭)は相変わらずその場に留まろうとしています。このときの注意点として、1枚目に比べて重心は非常に不安定なポーズとなるため、両手を広げてバランスを保とうとしている様子を出すとよりグッドです
▲先ほどよりもさらにスケートボードが前進します。それに引っ張られるように頭の位置も下がり気味になってきますが、まだその場に留まろうとしています。スケートボードの動きが等速運動をしているのに対して、キャラクターの動き、特の頭の移動は加速運動をしているのがわかります(※1)
※1:CGアニメーションでは往々にして全ての動きが等速運動になってしまいがちです。このようにパーツごとに加速度が異なる動きにすると、CGくささを消すことができます
▲最後にキャラクターがバランスを崩しそうになり、重心を低くしてスケートボードの上でバランスをとっている様子です。このように重心を低くすることで、不安定な状態であることを演出しています。また、手を左右に広げることで、その不安定さをよりいっそう強調しているのもポイントです
▲完成されたアニメーション