>   >  過去バージョンとの比較からみるAutodesk 3ds Max 2011 の実力
過去バージョンとの比較からみる<br />Autodesk 3ds Max 2011 の実力

過去バージョンとの比較からみる
Autodesk 3ds Max 2011 の実力

ビューポートキャンパス

Autodesk 3ds Max 2011 から待望のビューポート上でオブジェクトにペイント可能なビューポートキャンバスが搭載された。UV自動アンラップとテクスチャベイクが搭載されてから、自動で[アンラップ→焼き込み]を多用していたユーザーも多いと思うが、UVがバラバラになり過ぎてレタッチ不可能になったり、UVの編集に時間を取られる事も多かったと思う。このビューポートキャンバスはUVさえ設定されていれば自由にペイントできるため、テクスチャ作成の時間が短縮できる。Photoshop形式のレイヤーを保持したままの編集と保存が可能なので、テクスチャの当たりをビューポート上で描いておいてPhotoshopなどの外部ペイントツールで仕上げることもできる。

3ds Max 2011「ビューポートキャンパス」使用例

実際にオブジェクトにペイントしたところ。UVが繋がっていない箇所でもペイントが簡単に行えてしまう。アンラップ上でもペイントできるのでツール間の移動が少なくて済む
 

パターンブラシや、スタンプ、多少のフィルタも使用できるので、UVの繋がっていない部分でのペイントに威力を発揮するだろう。さらに同じく新機能であるオブジェクトペイントや前バージョンからの機能であるフリーフォームツールのPolyDrawも併用すると、背景のモデリングなどにも役に立ちそうだ。今まで他のツールに切り替えて作業していた部分がMAX内で完結出来るのは作業時間の短縮に大きく貢献するだろう。

Quicksilver ハードウェアレンダラ

近年GPUを使った高速処理や物理計算などGPUを積極的に使う流れ(GPGPU:GPUによる汎目的掲載)があるが、Quicksilverもそういった類のハードウェアを利用したレンダラの一種である。GPUを利用することにより、高速に比較的高画質なレンダリングが可能になった。使用可能なマテリアル及びマップに制約はあるが、一度レンダリングするとシェーダがキャッシュされるので2枚目からは数秒でレンダリングを終えてしまうこともある。今後増えてくるであろう4Kなど高解像度のレンダリングやステレオスコピック3D(立体視)用に左右の映像をレンダリングしなければいけない場合など、短納期の場合など強力なツールになりそうだ。

Quicksilverによるハードウェアレンダリング検証

Quicksilverにて8K(8,192×4,320)サイズのレンダリングを試してみたところ、わずか9秒で終えてしまった。締切間際などクリティカルな局面では頼もしい味方になるだろう
 

シャドウはもちろん、アンチエイリアスやレイトレース反射、アンビエントオクルージョンなども設定できるので、ある程度までリッチな画質に仕上げることも十分可能である。ただし、利用の際はGPU性能によって速度が左右されるため注意が必要だ。場合によってはソフトウエアでレンダリングした方が有利なケースもあるので、状況によって使い分けると良いだろう。

mental rayとのレンダリング速度比較

フルHD( 1920×1080)のアニメーションを、mental ray(3ds Max 2008)とQuicksilver(3ds Max 2011)で100フレームづつレンダリングしてみたところ、前者が約4時間かかったのに対して後者は約13分30秒で済んだ。mental rayと完全に同一の画を描画するわけではないので単純な比較はできないが、1フレームあたり約8秒という驚異的なスピードは実に魅力的だ

確かなスケールメリットを実感

今回は主に 3ds Max 2008 と比較する形で 3ds Max 2011 の有用性をレポートしてみた。旧バージョンとUI上の差が大きく違っていないことや互換性の確保の都合上、導入を躊躇しているユーザーも多いのではないだろうか。しかし3世代前の製品と比べると、ここに上げた以外の部分の改善点も多数存在する。弊社では特に作業時間の短縮に力を入れている。作業時間の短縮は単に急いで制作するということではなく、作業するデザイナー自身が工夫し現場レベルでワークフローを改善していくことに意義があると考えている次第だ。レガシーな環境で職人技に頼っていては労働環境や業界が良い方向に進化しない。
はっきり言ってしまうが、今回取り上げた基本となるテクスチャリング、レンダリング、アニメーションといった基本操作では、旧バージョンでも順を追って設定していけば、出来上がる結果にそう違いはない。しかし、実現するまでにかかる時間や求められるスキルに大きな差があるのだ。3ds Max 2011 ではそのようなツールが多数搭載されている。限られた時間を有効に利用し、ワークフローを改善していくためのきっかけとして導入を検討してみてはいかがだろうか。

TEXT_大本珠樹@PD Tokyo Inc.
 
《今回のレビュー環境》
OS:Windows 7 Professional(64bit)
CPU:Intel Xeon X5560(2.8GHz)×2
グラフィックスボード:Quadro FX3800
RAM:DDR3(12GB)
HDD:FUJITSU MBA3147RC (147GB 15000 Dual SAS)×2
※機材協力_日本ヒューレット・パッカード

Autodesk 3ds Max 2011パッケージ画像

Autodesk 3ds Max 2011

価格:515,550円(新規製品、オンラインストア価格)
対応OS:7/Vista/XP
問い合わせ先:オートデスク インフォメーションセンター
TEL:0570-064-787(ナビダイヤル)
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