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今年5月にリリースされた「Autodesk 3ds Max 2011」。最新版でも多くの新機能が搭載され、発売時には月刊CGWORLDでもレビュー(本誌144号に掲載)を行なった。今回は、2008年にリリースされた「Autodesk 3ds Max 2008」と比較する形で、最新版を改めて検証してみる。
スレート マテリアル エディタ
Autodesk 3ds Max 2011(以下、Max 2011)では、マテリアル エディタが視覚的に判りやすいノードツリー型のスレート マテリアル エディタへと大幅に改良された。前バージョンまでは他人が作ったマテリアルを利用したり、共同作業を行う際、階層が深いマテリアルだと全体を把握するのに時間がかかったものだが、このスレート マテリアル エディタではノード全体がワイヤーで連結されたツリー状となって表示されるため、非常に判りやすい。もちろん表示だけでなく、実際に連結や切断、挿入などインタラクティブに操作が可能で、使用感は少し前のディスクリート製品のような感じで使い勝手がよい。
新たに実装された「スレート マテリアル エディタ」。複数のマテリアルに跨ったインスタンスなどが把握しやすい。ノード間にマップを追加するのも簡単だ
ツリー表示のメリットとして、インスタンスの操作や把握が簡単になったのも大きな利点だ。他人が作ったマテリアルで同じマップが何度もロードされていたり、どこまでがインスタンスなのか解らずマップを修正後、レンダリング後に気づく、といった経験がないだろうか? そうしたミスの軽減や理解の早さ、修正のし易さといった面で強力なツールになるにちがいない。なお、従来のマテリアル エディタも「コンパクト マテリアル エディタ」という名称で残されているのは用途やユーザーの好みで臨機応変に使い分けられるのでありがたいところだ。
従来型のマテリアル エディタ。現在もコンパクト マテリアル エディタという名称で残されている
標準搭載されたCAT
CAT(Character Animation Tools)は非常に強力なキャラクターアニメーションのツールだ。Autodesk 3ds Max 2010まではサブスクリプションでの提供となっていたが、Max 2011より標準搭載となったので改めて紹介したい。
CATの従来からあるキャラクタースタジオに対する優位性として、豊富なプリセットと多足歩行の動きを付ける際の効率性が挙げられるだろう。CATには多数の構築済みのリグがプリセットで用意されている。もちろん各部は編集可能なのでプリセットをベースにしてオリジナルのリグを制作することも可能だ。リグの各部に腕や足を自由に追加することができるのに加え、IKも設定済みの状態で追加されるので、リグ構築にかかる時間が大幅に短縮されるはずだ。
豊富なプリセットの一部
次に、キャラクタースタジオのBipedでは4足またはそれ以上のアニメーションを作成しようとすると相応に時間が掛かったが、CATを使えば歩行アニメーションをほぼ自動で生成してくれる。歩行パターンもCAT Motionのパラメータを調整することで柔軟なカスタマイズが可能で、パスノードと呼ばれるヘルパーを設定することで歩行を制御できる。特筆すべき点は地面への接地が簡単に設定できる点であろう。この機能により階段の昇降や不整地での歩行といった比較的手間のかかった作業が短時間で終了できる。さらにスキニングを強力にサポートするCAT Muscleや、筋肉ストランドなどのツールも積極的に利用していくと効果的だろう。
不整地の歩行アニメーションも、ほぼ自動で行なってくれる
歩行の調整はアニメーションを再生したまま出来るので、素早い調整が可能だ
ビューポートキャンパス
Autodesk 3ds Max 2011 から待望のビューポート上でオブジェクトにペイント可能なビューポートキャンバスが搭載された。UV自動アンラップとテクスチャベイクが搭載されてから、自動で[アンラップ→焼き込み]を多用していたユーザーも多いと思うが、UVがバラバラになり過ぎてレタッチ不可能になったり、UVの編集に時間を取られる事も多かったと思う。このビューポートキャンバスはUVさえ設定されていれば自由にペイントできるため、テクスチャ作成の時間が短縮できる。Photoshop形式のレイヤーを保持したままの編集と保存が可能なので、テクスチャの当たりをビューポート上で描いておいてPhotoshopなどの外部ペイントツールで仕上げることもできる。
実際にオブジェクトにペイントしたところ。UVが繋がっていない箇所でもペイントが簡単に行えてしまう。アンラップ上でもペイントできるのでツール間の移動が少なくて済む
パターンブラシや、スタンプ、多少のフィルタも使用できるので、UVの繋がっていない部分でのペイントに威力を発揮するだろう。さらに同じく新機能であるオブジェクトペイントや前バージョンからの機能であるフリーフォームツールのPolyDrawも併用すると、背景のモデリングなどにも役に立ちそうだ。今まで他のツールに切り替えて作業していた部分がMAX内で完結出来るのは作業時間の短縮に大きく貢献するだろう。
Quicksilver ハードウェアレンダラ
近年GPUを使った高速処理や物理計算などGPUを積極的に使う流れ(GPGPU:GPUによる汎目的掲載)があるが、Quicksilverもそういった類のハードウェアを利用したレンダラの一種である。GPUを利用することにより、高速に比較的高画質なレンダリングが可能になった。使用可能なマテリアル及びマップに制約はあるが、一度レンダリングするとシェーダがキャッシュされるので2枚目からは数秒でレンダリングを終えてしまうこともある。今後増えてくるであろう4Kなど高解像度のレンダリングやステレオスコピック3D(立体視)用に左右の映像をレンダリングしなければいけない場合など、短納期の場合など強力なツールになりそうだ。
Quicksilverにて8K(8,192×4,320)サイズのレンダリングを試してみたところ、わずか9秒で終えてしまった。締切間際などクリティカルな局面では頼もしい味方になるだろう
シャドウはもちろん、アンチエイリアスやレイトレース反射、アンビエントオクルージョンなども設定できるので、ある程度までリッチな画質に仕上げることも十分可能である。ただし、利用の際はGPU性能によって速度が左右されるため注意が必要だ。場合によってはソフトウエアでレンダリングした方が有利なケースもあるので、状況によって使い分けると良いだろう。
フルHD( 1920×1080)のアニメーションを、mental ray(3ds Max 2008)とQuicksilver(3ds Max 2011)で100フレームづつレンダリングしてみたところ、前者が約4時間かかったのに対して後者は約13分30秒で済んだ。mental rayと完全に同一の画を描画するわけではないので単純な比較はできないが、1フレームあたり約8秒という驚異的なスピードは実に魅力的だ
確かなスケールメリットを実感
今回は主に 3ds Max 2008 と比較する形で 3ds Max 2011 の有用性をレポートしてみた。旧バージョンとUI上の差が大きく違っていないことや互換性の確保の都合上、導入を躊躇しているユーザーも多いのではないだろうか。しかし3世代前の製品と比べると、ここに上げた以外の部分の改善点も多数存在する。弊社では特に作業時間の短縮に力を入れている。作業時間の短縮は単に急いで制作するということではなく、作業するデザイナー自身が工夫し現場レベルでワークフローを改善していくことに意義があると考えている次第だ。レガシーな環境で職人技に頼っていては労働環境や業界が良い方向に進化しない。
はっきり言ってしまうが、今回取り上げた基本となるテクスチャリング、レンダリング、アニメーションといった基本操作では、旧バージョンでも順を追って設定していけば、出来上がる結果にそう違いはない。しかし、実現するまでにかかる時間や求められるスキルに大きな差があるのだ。3ds Max 2011 ではそのようなツールが多数搭載されている。限られた時間を有効に利用し、ワークフローを改善していくためのきっかけとして導入を検討してみてはいかがだろうか。
TEXT_大本珠樹@PD Tokyo Inc.
《今回のレビュー環境》
OS:Windows 7 Professional(64bit)
CPU:Intel Xeon X5560(2.8GHz)×2
グラフィックスボード:Quadro FX3800
RAM:DDR3(12GB)
HDD:FUJITSU MBA3147RC (147GB 15000 Dual SAS)×2
※機材協力_日本ヒューレット・パッカード
Autodesk 3ds Max 2011
価格:515,550円(新規製品、オンラインストア価格)
対応OS:7/Vista/XP
問い合わせ先:オートデスク インフォメーションセンター
TEL:0570-064-787(ナビダイヤル)
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オートデスク3ds Max情報サイト
パイプライン最適化キャンペーン実施中!
現在、オートデスクでは、Autodesk 3ds Max 2011、Autodesk Maya 2011、そしてAutodesk Entertainment Creation Suite 2011の3製品を対象にした「パイプライン最適化キャンペーン」を実施中だ。キャンペーンサイトでは、最新版の機能向上を第3者の調査機関による調査レポートを通じて解説するほか、最新の映画/テレビ並びにゲーム制作のパイプラインについても解説している。購入予定がない人でも楽しめるのでぜひ一度アクセスしてみよう。
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