>   >  【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(前篇)
【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(前篇)

【創刊200号記念】『TERAI YUKI』〜テライユキとの再会〜(前篇)

02.『TERAI YUKI』のコンセプト

そんな「テライユキ」を蘇らせてくれたのが、本誌連載でもお馴染みのTransistor Studioだ。
「今回は、200号という記念すべき表紙グラフィックなので、通常のCGWORLDでは見られないビジュアルを目指しました。そこから思いついたのが、あえてモノクロで描くこと。ファッション誌や広告グラフィックにあるような、スタイリッシュなスナップ写真というコンセプトの下、制作を進めることにしました」と、森江康太ディレクターはふりかえる。「そして、モノクロのグラフィックの上に落ち着いた感じのゴールドで文字が載れば洗練さと同時にゴージャスな感じも出せて、200号メモリアルにふさわしいビジュアルに仕上がるのではないかというねらいもありました」(秋元純一ディレクター)。


  • 実写チームとの打ち合わせ資料として描かれたイメージボード(2015年2月4日時点)。当初から、「モノクロ写真+ゴールド文字」というコンセプトがあったことが窺える。実は、この文字を金色に、というのはTransistor Studioにグラフィック制作をお願いする以前から筆者と本誌アートディレクターの間で決めていたことだった。それが、こちらから切り出す前に森江氏から同様のコンセプトを提案され、驚くと同時に不思議な縁を感じたものだ

03.スチール撮影

今だから白状するが、200号の表紙グラフィック制作はいつにも増してスケジュールがタイトであった。森江氏と秋元氏に最初に相談したのは1月上旬だったが、そこから、原作者くつぎけんいち氏へ許諾を求め(ありがたいことに即決でご快諾いただけた)、リファレンスとなる画像を取り集めている間に199号の校了作業が佳境にはいってしまったため、プロジェクトが本格的にスタートしたのは2月にはいってからのこと。その一方では、表1のCGWORLDロゴは箔押し(金箔)をあしらえるといったひと手間加えることも決めていたため(=表紙の校了が通常よりも数日早まる)、Transistor Studioにとっての実質的な制作期間は2週間弱であった。
「スケジュールがタイトになることは当初から予想していました(苦笑)。また、テライユキを復活させる上では、その間の10数年でテクノロジー面でもCG表現が進化してきたこともイメージに込めたいと思ったので、現在流行りのセルルックなどではなくフォトリアル路線で表現しようと考えていました」(森江氏)。そこから導きだされた戦術が、実写スチールを利用すること。背景を実写にすることで、CG・VFX作業はテライユキ本体に注力することができる。

実写撮影時の様子。フォトグラファーと並んで仕上がりを想像する森江ディレクター。実写スタッフも本作のようなCGキャラクターへのリプレイスは初めての試みということで、面白がりながら作品のクオリティアップにつながる様々なアイデアを出してくれたそうだ

実写撮影にあたっては、森江氏が以前から交流のあるフォトグラファー山本 大氏に協力を打診。5年後に東京オリンピックを控えていることなどもふまえ、東京駅など東京を想起させるロケーションで撮影することが決まった。「撮影は4箇所で行い、50テイクちかく撮りました。テライユキは、素体モデルの制作を先にはじめていましたが、使用するスチールを決めてからでないと作り込めないため、校了ギリギリまで制作していました。その点は企画当初から了承してもらっていましたけどね(笑)」(秋元氏)。

(左)現場での打ち合わせの様子。ダイナミックなしぐさで構図を提案するフォトグラファーの山本 大氏/(右)ヘアメイク、スタイリストの素早い身のこなしに感銘を受けたそうだ

森江氏自ら衣装のシワの具合を直すことも。実際の女性モデルをガイド撮影することで、ポーズや衣装のディテール表現などを効率的にフォトリアル路線で仕上げることが目指された

現在のCG技術の発展を本作に反映させる試みのひとつとして、シーンリニアワークフローが導入された。「制作期間も限られていたので、技法自体は特別なことはしていませんが、HDRIを撮影し、V-Rayのマテリアル設定で調整し、NUKEでコンポジットワークを行いました。また、最終的なモノクロ加工は作業効率の面からAfter Effectsで行なっています」(森江氏)。

HDRI撮影の様子

本プロジェクトではシーンリニアワークフローを導入。そのリファレンスとして、カラーチャートならびにサンプル球体(銀玉&白球)の撮影も行われた。一連の写真はしっかりと補正が施されているのは、被写体となった伊藤浩之氏(シーンリニアワークフローの取りまとめおよびライティングを担当)のアー写として活用されることを想定してのものだろうか

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