CGモデルのラインを活用〜アニメ特有のデザイン手法1
続けて、アニメならではの 3DCG 活用法を2つ紹介していきたい。1つ目は、CGモデルの輪郭線の利用である。
「デザインする上では、メカに限らずシルエットの美しさがすごく重要です。そのため、輪郭線(ライン)のレンダリングは必ず行なっていますよ。その意味では、モデリング中にプレビューで表示されるガイドのラインも実はディテールを描く際に便利な存在だったりするので 、3ds Maxのプレビューをそのままプリントスクリーンして、Photoshop作業時の下絵に敷いたりもしています」。
そうしたニーズを満たすべく、3ds Max用ノンフォトリアリスティック・シェーディング・プラグイン PSOFT Pencil+ を新たに導入したそうだ。
具体例として、TV版『機動戦士ガンダム00』セカンドシーズンに登場する反政府組織「カタロン」の軍事拠点レゾルスのドックをデザインフローを紹介しよう。
まずは、手描きスケッチをベースに骨格となる部分をモデリングする。
© 創通・サンライズ・毎日放送
完成モデル(左)と各種ナビゲーションガイド&輪郭線をプレビュー表示させた状態(右)
モデリングを終えたら、輪郭線のみレンダリングして Photoshop に読み込む。後は、その上から手描き(柳瀬氏の場合は、ペンタブレットを使いデジタルで描いている)でディテールを描き加えて完成。最終的なデザインとカラーリングはPhotoshopで行うため、CGモデルとの差異が生じるが、そうした場合はデザイン画に注釈を添えているとのこと。
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3ds Maxから書き出したラインパス(左)と、Photoshop でディテールを描き加えている途中(右)
「レゾルスは小惑星を改造した軍事基地という設定だったので、岩肌を手描きでレタッチしました。有機的なデザインをする場合は、やはり手描きに分がありますね。キャラクターデザインも多少は手掛けているので、デジタル・スカルプトやNURBSモデリングにも興味はあるのですが、今は新たに勉強する時間がありません(苦笑)」。
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完成したデザイン画
3Dで"箱庭"を構築しておく〜アニメ特有のデザイン手法2
2つ目は、そのものズバリ「3Dでシーンを構築する」ことだ。
「コックピットや艦船ブリッジなど、クローズドな空間をデザインする場合、たとえ一方向からのデザインしかオーダーされていない場合でも3Dで作っておくことがあります。TVシリーズなどでは、話数が進んでいく中で後から『あのシーンの逆アングルをデザインしてもらえませんか?』などと言われることが往々にしてあるので、そんな時に役立つんですよ」。
下に載せたのは、『劇場版ガンダム00』に登場する中東使節団専用艇ブリッジのデザイン例。CGで"箱庭"を作る場合もまずは手描きでラフスケッチを描くという。
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ラフスケッチ。この段階でも非常に緻密で驚かされる
「近頃、アニメ制作でも3DCGで完成させるケースが急速に増えてきてますよね。その意味でも、デザイン画に加えてCGデータを渡すことで、デザインのエッセンスを本制作へと効率良く伝達できるのかなって考えています」。
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(左上)CGモデル、(右上)ラインパス、(左下)Photoshopでディテールを描く途中、(右下)ベタと注釈を加えた完成デザイン画