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メカデザイナー meets 3DCG 〜 第1回:柳瀬敬之

メカデザイナー meets 3DCG 〜 第1回:柳瀬敬之

作業環境

2年ほど前から仕事場を借り始めたという柳瀬氏。
「以前までは、自宅で作業をしていたのですが、あまりにも荷物が多く、狭くなってしまったのでアパートの一室を借りることにしました。自宅でやり始めるとエンドレスになってしまうので、仕事場を設けて正解でしたね」。
同時並行で複数のプロジェクトを手掛けること自体は「性に合っている」と語る柳瀬氏。ある作品ではロボットを、別の作品では背景をといった具合に、バランス良く様々なデザイン作業があると、気分転換にもなるし、それぞれのデザイン作業を集中して行えるのだそうだ。

そこで、具体的にどんな環境でデザイン作業を行なっているのか聞いてみた。
「PC ディスプレイはメインとサブの2台を横に並べています。その他に、資料映像や参加している作品鑑賞用のテレビと、設定資料を表示させるための iPad を置いています。ペンタブレットは、ワコム Intuos 4 を使っているのですが、そうですねこんな感じに......」と、実際に紙を手に取りレイアウトを描いて説明し始めてくれた。こうしたところからも根っからの絵描きさんなのだなと妙に感心してしまった。

柳瀬敬之スナップ01

ペンを手に取り、仕事場のレイアウトを実際に描いて説明してくれた

そんな柳瀬氏の仕事場がこちら(下)。メインPCはマウスコンピューターの64bitマシン(写真撮影時はDELL)、PCディスプレイはメインがEIZOの24インチ。サブモニタは三菱電機のマルチメディアモデル(PS3再生時にHDMIに切り替えている)。また、サブマシンとしてNEC「VALUESTAR」も利用しているとのこと。
「TVシリーズのチェック用に torne を使っているのですが、『torne 表示に最適』という売り文句だった三菱電機のディスプレイを思わず買ってしまいました(笑)」。期待通り動画応答性に優れているようだ。

柳瀬敬之氏の仕事場

Photo by Takayuki Yanase

右側のLCD手前に置かれているのが、iPad 。設定画などの資料を表示させているが、外出先では逆に自身が描いたデザイン画のチェックに使うといった具合にフル活用しているようだ。デザインの核となる部分は手描きにこだわる柳瀬氏だが、液晶タブレットは現在使っていないとのこと。

全ての経験がデザインに活きている

最後に、今後の目標について語ってもらった。
「自分のスタイルとして、『作品世界が求めるものは何でもデザインする』というものがあります。その甲斐もあり、TVシリーズ『ファイアボール チャーミング』 では、キャラクターをはじめ、背景や小道具に至るまで大半のメカデザインを担当させて頂きました。今後も機会があれば積極的に様々なデザインに挑戦していきたいですね」。

© Disney
『ファイアボール チャーミング』第一弾TVCM

3DCG をひとつの武器にすることで独自のキャリアを築けたとも言える柳瀬氏だが、CG との付き合い方はどのように考えているのだろうか?

「ゲーム会社など、何らかの組織に所属していれば近くに必ず CG のエキスパートがいるはずなので自ら 3DCG ソフトを使う機会は限られると思うのですが、僕のようなフリーランスの場合、作業効率を上げるためにも必要に迫られて CG を使い始めたという面があります。ですが、実際に CG を利用しているデザイナーはまだ少ない気がしますね。ソフトもハードも凄い勢いで進化しているので、これからの若い人たちの間では CG を利用する機会が増えるのではないでしょうか」。 柳瀬敬之氏スナップ02

また、デザインに限らずアニメ制作全般において 3DCG の利用度合いが高まっている昨今。柳瀬氏としても作業ツールとしてだけでなく、より高い次元から CG のデザインへの活用を考えていきたいと語る。

「自分に限れば、デザインする上で必要な機能は現在の 3ds Max で事足りているんですよね。その一方で、CG が浸透したことで求められるデザインは年々複雑かつ高度になっています。だからこそ、デザインや CG に対するスタンスを考え直す必要があると思うのです。例えば、CG で完成させるのであれば、これまではフォルムやシルエットを意識してデザインしてきましたが、CG アニメーションにとって最適なデザインを、ヒト型なら人間らしい自然な歩行ができるデザインにするべきなのではといったことですね。僕は絵描きになりたくて、モーションデザイナーを経てメカデザイナーになったのですが、たまに脳がモーションデザイナーに戻っている時がありますよ(笑)」。 ガンダム ハルート05

© 創通・サンライズ・毎日放送

今回のインタビューで印象的だったのが、「一見、無関係な経験も必ず役立つ時がくる」という発言である。柳瀬氏の場合、絵描きを志したものの、建築の製図、ゲームのモーションデザイナーと回り道をしてきたと考えていたそうだが、実際にメカデザイナーとして活動するようになってみると、物理的な整合性を考える上では建築の知識が、そして変形機構を考える上ではモーションデザイナーの経験が大いに役立っているそうだ。3DCG ソフトに限らず、これからのコンテンツ制作ツールには、そうしたクリエイターの知識や経験をシームレスに繋ぐ役割がより一層求められるのかもしれない。

TEXT_沼倉有人(CGWORLD)
PHOTO_大沼洋平

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問い合わせ先:Too デジタルメディアシステム部
TEL:03-5752-2855
e-mail:dms@too.co.jp

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-A wakening of the Trailblazer-

監督:水島精二
脚本:黒田洋介
メカニックデザイン:海老川兼武・柳瀬敬之・寺岡賢司・福地 仁・鷲尾直広・中谷誠一
CGプロデューサー:松浦裕暁

定価:7,350円(Blu-ray通常版)ほか
発売・販売元:バンダイビジュアル
© 創通・サンライズ・毎日放送
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