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コンテンツ制作において 3DCG の用途が広がりを見せていく中、アニメやゲームなどのデザインワークを手掛けるクリエイターが自ら 3DCG ソフトを用いて、自身のイマジネーションを高めようとする動きが出てきた。そこで本企画では、全2回にわたり、メカデザイナーにおける CG 活用例を紹介していきたい。第1回は、メカニックデザイナーとして幅広いフィールドで活躍中の柳瀬敬之氏に、自身にとっての 3DCG について語ってもらった。

キャリアのスタートが3DCGからだった!

アニメとゲームを中心に、メカデザイナーとして活躍中の柳瀬敬之氏。ロボットや戦闘機、艦船といったいわゆるメカニックデザインだけでなく、銃器や宇宙服などのコスチューム、さらには背景まで「作品世界が必要とするあらゆるものをデザインします」と自身が語るほど、多彩なデザインワークを手掛けている。
近年の代表作は何と言っても 『機動戦士ガンダム00』 シリーズ だ。好評につき2シーズン続いたTVシリーズに続き、一昨年には 『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』(以下、劇場版ガンダム00) が公開された人気作であるが、柳瀬氏は各種ガンダムをはじめとするメカニックデザインを進める上で Autodesk 3ds Max を使い、ベースのフォルムをモデリングすることによって、美術設定の整合性や変身機構を考える際の作業効率を高めることができたという。そんな柳瀬氏は、子供の頃から絵を描くのが好きでマンガ家を志していたそうだ。


柳瀬敬之氏ポートレイト01

 

Takayuki Yanase

京都府出身。建築専門学校建築設備科卒業。スクウェア(現スクウェア・エニックス)研修ルームにアルバイト入社後、直ぐにドリームファクトリーへ移籍しモーションデザイナーとして『トバル2』(1997)等のプロジェクトに携わる。1999年にフロム・ソフトウェアへ入社したのを機に、メカデザイナーとしてのキャリアをスタート。アニメとゲームを中心にメカ以外にも幅広いデザインを手掛けている。
「WIND FALL HP」(公式サイト)

「ドンピシャの ガンダム世代 なので、昔からガンプラを作ったり、メカを描くのが好きでした。家が建築土木系の仕事をしていたのと、中学の頃から製図を描くのが好きだったので、建築系の専門学校に進学したのですが、メカや漫画を描くのはずっと趣味でした」。

専門学校卒業後は、大阪の設備会社へ就職したという柳瀬氏。しかし、設備の世界は想像よりもハードだったとか。

「いわゆる"ガテン系"の仕事の空気に慣れなくて、仕事が終わってから深夜まで逃げるようにメカ絵を描いてました(笑)。で、一度きりの人生、絵の仕事を目指そうと、会社を辞めて上京することにしたのです」。

上京して見つけたのが、アニメ誌に載っていた スクウェア(現スクウェア・エニックス) のゲーム開発スタッフの募集。これで念願の絵が描けるとさっそく応募してみたところ、無事採用されたのだが、仕事内容は当初の予想と違っていた。

「スクウェアの研修ルームという部署に入ったのですが、絵を描くのではなく、いきなり3DCG制作、キャラクターアニメーション作成を教わったのです。そして、習い始めて1週間後には当時グループ会社だった ドリームファクトリー で、完成間近だった 『トバル2』(1997) の開発にモーションデザイナーとして参加しました。実は僕のキャリアって、デザイナーでもイラストレーターでもなく、3DCG がスタートだったんですよ(笑)」。ちなみにその時、人生で初めて触った 3DCG ソフトは Softimage だったそうだ。

『トバル2』完成後も、引き続きドリームファクトリーで 『エアガイツ』(1998) などの開発に携わり武器のモーションやOPムービー用のメカモデルを担当した柳瀬氏。

「実は、ドリームファクトリーで3DCG制作のアルバイトをしながら、個人でも絵の仕事を探していました。その努力が実りまして、少しずつイラスト制作などを単発でもらえるようになってきたのでバイトを辞めようかと考え始めた矢先に、フロム・ソフトウェア がデザイナーの募集をしていたのを見つけて迷わず応募しました。まさに千載一遇のチャンスでしたね」。

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デザインワークに 3DCG ソフトを活用するきっかけ

晴れて、フロム・ソフトウェアにてメカデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた、柳瀬氏。

「フロムには1999年から2002年までの約2年と少し在籍しました。『アーマード・コア2』(2000)『叢-MURAKUMO-』(2002) のメカデザインを手掛けていたのですが、ゲーム開発ではプロジェクトの間が空くので、その時間を使って会社にあった 3ds Max を独学で研究していました。さすがに、実際のデザインワークに利用するまでには至りませんでしたが、当時から3DCG ソフトを使えばもっとデザインの表現幅を広げられるのではなないかと考えていましたね」。

それ以前にも、他の 3DCG ソフトを個人で購入してみたりもしたそうだが、イマイチ馴染まなかったとのこと。

「デザインイメージを膨らませる行為と、実際に 3DCG ソフトを操作するという行為の間でどうしても思考が分断されてしまっていたのです。ですが、3ds Max だけは違いました。例えばオブジェクトを階層付けしたい時に他のソフトではリストから選択するしか方法がなかったりしたのですが、3ds Max は UI 上で視覚的に設定できるといった感じで、頭に思い描いたイメージを具体化させる手順がすごくシンプルで気に入ったのです」。

そしてフロムを退社後は、フリーのデザイナーとして漫画雑誌へのイラスト提供やガレージキットのメカデザインなど、自身の活躍フィールドを広げていった柳瀬氏。そして、TVシリーズ 『交響詩篇エウレカセブン』(2005) を皮切りにアニメ作品にも携わるように。

「アニメのお仕事では、メカ、プロップ、背景、さらにメカでも現代劇のクルマといった具合に、チャンスがあれば何でもデザインしていました。キャリアのスタートがゲームだったのが大きいかもしれませんね。それと並行して 3DCG を利用する機会もメカだけでなくアニメの背景などにも用いるようになりましたね。フリーになってからの数年間は 3ds Max ライセンスを自分で持っていなかったので、別のソフトを使用したり、行く先々のプロダクションさんでその都度ライセンスをお借りしていたのですが、3ds Max 以外で 3DCG パイプラインを構築していらっしゃる場合は、無理を言って特別に導入してもらったりもしました(笑)。今は自分でラインセンスを持ってますよ!」。

『劇場版ガンダム00』のメカデザイン

ここからは『劇場版ガンダム00』に登場するガンダムハルートを例に、柳瀬氏のデザインワークを具体的にみていこう。
2010年9月18日に公開された『劇場版ガンダム00』は、2シーズン続いたTVシリーズを踏まえた最終章ということで、様々なデザインのモビルスーツ(以下、MS)が登場する。その中でもガンダムハルートは、TVシリーズに登場したガンダムキュリオス、その後継機であるアリオスガンダム、そしてアリオス支援用の可変型 MS の GN アーチャー(ガンアーチャー)などの機能を統合して開発されたというコンセプトを持つ、まさに本作の集大成と呼ぶに相応しい MS だ。

ハルート01 ハルート02 ハルート03 ハルート04

© 創通・サンライズ・毎日放送
GN-011 ガンダムハルート(Gundam Harute)

「ハルートは複座式(2人乗り)で戦闘機からMSへと変形します。さらに、翼はMS形態では武器になるので、大変でしたがその分楽しみながらデザインしました。デザインを行う際は、まずは手描きスケッチから始めます。3DCGを利用する/しないの判断は『機械的なデザインで、なおかつ物理的な整合性が求められるか』 次第ですね。たとえMSでも有機的なデザインだったら手描きで完結することが多いです。ハルートの場合は、変形機構を備えメインMSなので、当初から3DCG化させる予定でした。アニメの場合は、登場回数に依るところも大きいですね。制作サイドから予めCGモデルの提供をお願いされる(=デザインの段階で3DCG化しておくことで本モデルの制作負荷を軽減)こともあります」。

STEP 1_まずは手描き

どんなデザインをする時も、最初は手描きスケッチでイメージを膨らませていくという柳瀬氏。ガンダムハルートのように 3DCG 化させる場合、以前はプリントアウトしたラフを横に並べてモデリングしていたそうだが、3ds Max を使い始めてからは手描きスケッチのスキャン画像をバックグラウンドビューに設定し、その上でモデリングを行なっているとのこと。

ハルート手描きラフ01

© 創通・サンライズ・毎日放送
手描きコンセプトラフ

ハルート手描きラフ02

© 創通・サンライズ・毎日放送
手描きラフ。大分、洗練されてきた

STEP 2_3DCG モデリング

デザインイメージが固まってきたら、3ds Max でポリゴンモデリングを行う。
「3ds Max は、ポリゴンモデリングも直感的に行えるのが良いところですね。個々のオブジェクトごとにローカルの設定が行えるので、例えば任意のオブジェクトに限定した(グローバルの設定とは別に)X軸を基点に変形させるといったことがサクサクできるのです。こうした操作も、今では他ソフトでもできるのだと思いますが、3ds Maxは昔から見た目ベースで3DCG制作が行える設計思想だったので一日の長があるのではないでしょうか」。
「ロボットはシンメトリにデザインしたい」と語る柳瀬氏にとって、3ds Max の見た目を基準に各種作業が行えるインターフェイスがマッチしたと言えよう。

ハルート3DCGモデル01

© 創通・サンライズ・毎日放送
CGモデル(MS形態)完成。「デザインする上では、常に "格好良さとは何か" を意識していますが、大前提として作品コンセプトや各種設定に込められたオーダー側のニーズに100%応えることが第一。その上で、どれだけプラスαを入れ込むことができるかですね」

STEP 3_変形機構の検証

ハルートのような変形機構をデザインする上でも、3ds Max は作業しやすいという。「デザイナーとしては、飽くまでも動きそのものではなく、『ここにあのパーツを収納できるか』といった、物理的な整合性を突き詰めるのが目的なので、変形前と後のデザインを決めてモーフィングをさせれば、多くの場合は事足ります」。

ハルート変形途中01

© 創通・サンライズ・毎日放送
変形モーションの途中段階。この段階のモーションは物理的な整合性を確認するためのものであり、最終的には 3DCG 制作工程で決定される

アニメーションの演出は後の工程で行うわけなので、変形モーションに要するコマ数を気にする必要もないため、手早くギミックの合理性を確認できるのかがが重要なのだと言えよう。「その意味では、ハルートはTVシリーズに前身となるアリオスガンダムのCGモデルが既に存在していたので、まずはアリオスのモデルで変形方法だけを変えてみたりして試行錯誤していましたよ」。

ハルート変形後01

© 創通・サンライズ・毎日放送
CGモデル(飛行形態)完成

STEP 4_Photoshopでディテール追加

デザインワークに3DCGを用いるといっても、3DCGで完成させるわけではない。
「3DCGで物理的な整合性が確認できたら、適当なカメラビューの静止画を書き出して今度はプリントスクリーンで Photoshop へ移し、プリントアウトして、それを下絵にシャープペンで線画を描いていきます。CGは正確に描画されるのでどうしてもシルエットが固くなってしまうので、手描きでレタッチしてデザインに深みを加えていきます。3DCG は飽くまでも物理的な整合性の検証に使っているので、テクスチャ作成なども行いません」。

ハルート完成MS01

© 創通・サンライズ・毎日放送
ハルートMS形態完成形

ハルート完成飛行形態01

© 創通・サンライズ・毎日放送
ハルート飛行形態完成形

「ベースをCGでモデリングして、手描きでクリーンアップというのが基本的な作業の流れですが、CGを利用する場合の判断基準として作業効率もあります。例えば、手描きだけだと丸2日かかるけど、1日モデリングに費やせば残りのディテーリングは半日で終えられるから結果的に1日半で完成できる(半日短縮できる)といった時は、CGを利用していますね」。ちなみに、MSのモデリングには1体あたり約1.5〜3日で制作しているそうだが、そこからさらなるブラッシュアップに日数を要するという。

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CGモデルのラインを活用〜アニメ特有のデザイン手法1

続けて、アニメならではの 3DCG 活用法を2つ紹介していきたい。1つ目は、CGモデルの輪郭線の利用である。

「デザインする上では、メカに限らずシルエットの美しさがすごく重要です。そのため、輪郭線(ライン)のレンダリングは必ず行なっていますよ。その意味では、モデリング中にプレビューで表示されるガイドのラインも実はディテールを描く際に便利な存在だったりするので 、3ds Maxのプレビューをそのままプリントスクリーンして、Photoshop作業時の下絵に敷いたりもしています」。
そうしたニーズを満たすべく、3ds Max用ノンフォトリアリスティック・シェーディング・プラグイン PSOFT Pencil+ を新たに導入したそうだ。

具体例として、TV版『機動戦士ガンダム00』セカンドシーズンに登場する反政府組織「カタロン」の軍事拠点レゾルスのドックをデザインフローを紹介しよう。
まずは、手描きスケッチをベースに骨格となる部分をモデリングする。

レゾルス:3DCGモデル レゾルス:輪郭線表示

© 創通・サンライズ・毎日放送
完成モデル(左)と各種ナビゲーションガイド&輪郭線をプレビュー表示させた状態(右)

モデリングを終えたら、輪郭線のみレンダリングして Photoshop に読み込む。後は、その上から手描き(柳瀬氏の場合は、ペンタブレットを使いデジタルで描いている)でディテールを描き加えて完成。最終的なデザインとカラーリングはPhotoshopで行うため、CGモデルとの差異が生じるが、そうした場合はデザイン画に注釈を添えているとのこと。

レゾルス:レンダリング画像 レゾルス:ディテール追加

© 創通・サンライズ・毎日放送
3ds Maxから書き出したラインパス(左)と、Photoshop でディテールを描き加えている途中(右)

「レゾルスは小惑星を改造した軍事基地という設定だったので、岩肌を手描きでレタッチしました。有機的なデザインをする場合は、やはり手描きに分がありますね。キャラクターデザインも多少は手掛けているので、デジタル・スカルプトやNURBSモデリングにも興味はあるのですが、今は新たに勉強する時間がありません(苦笑)」。

レゾルス:最終デザイン画

© 創通・サンライズ・毎日放送
完成したデザイン画

3Dで"箱庭"を構築しておく〜アニメ特有のデザイン手法2

2つ目は、そのものズバリ「3Dでシーンを構築する」ことだ。
「コックピットや艦船ブリッジなど、クローズドな空間をデザインする場合、たとえ一方向からのデザインしかオーダーされていない場合でも3Dで作っておくことがあります。TVシリーズなどでは、話数が進んでいく中で後から『あのシーンの逆アングルをデザインしてもらえませんか?』などと言われることが往々にしてあるので、そんな時に役立つんですよ」。

下に載せたのは、『劇場版ガンダム00』に登場する中東使節団専用艇ブリッジのデザイン例。CGで"箱庭"を作る場合もまずは手描きでラフスケッチを描くという。

中東使節団専用艇ブリッジ:ラフスケッチ

© 創通・サンライズ・毎日放送
ラフスケッチ。この段階でも非常に緻密で驚かされる

「近頃、アニメ制作でも3DCGで完成させるケースが急速に増えてきてますよね。その意味でも、デザイン画に加えてCGデータを渡すことで、デザインのエッセンスを本制作へと効率良く伝達できるのかなって考えています」。

中東使節団旗艦専用艇:CGモデル 中東使節団旗艦専用艇:CGラインパス 中東使節団旗艦専用艇:Photoshopでディテール追加 中東使節団旗艦専用艇:完成デザイン

© 創通・サンライズ・毎日放送
(左上)CGモデル、(右上)ラインパス、(左下)Photoshopでディテールを描く途中、(右下)ベタと注釈を加えた完成デザイン画

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作業環境

2年ほど前から仕事場を借り始めたという柳瀬氏。
「以前までは、自宅で作業をしていたのですが、あまりにも荷物が多く、狭くなってしまったのでアパートの一室を借りることにしました。自宅でやり始めるとエンドレスになってしまうので、仕事場を設けて正解でしたね」。
同時並行で複数のプロジェクトを手掛けること自体は「性に合っている」と語る柳瀬氏。ある作品ではロボットを、別の作品では背景をといった具合に、バランス良く様々なデザイン作業があると、気分転換にもなるし、それぞれのデザイン作業を集中して行えるのだそうだ。

そこで、具体的にどんな環境でデザイン作業を行なっているのか聞いてみた。
「PC ディスプレイはメインとサブの2台を横に並べています。その他に、資料映像や参加している作品鑑賞用のテレビと、設定資料を表示させるための iPad を置いています。ペンタブレットは、ワコム Intuos 4 を使っているのですが、そうですねこんな感じに......」と、実際に紙を手に取りレイアウトを描いて説明し始めてくれた。こうしたところからも根っからの絵描きさんなのだなと妙に感心してしまった。

柳瀬敬之スナップ01

ペンを手に取り、仕事場のレイアウトを実際に描いて説明してくれた

そんな柳瀬氏の仕事場がこちら(下)。メインPCはマウスコンピューターの64bitマシン(写真撮影時はDELL)、PCディスプレイはメインがEIZOの24インチ。サブモニタは三菱電機のマルチメディアモデル(PS3再生時にHDMIに切り替えている)。また、サブマシンとしてNEC「VALUESTAR」も利用しているとのこと。
「TVシリーズのチェック用に torne を使っているのですが、『torne 表示に最適』という売り文句だった三菱電機のディスプレイを思わず買ってしまいました(笑)」。期待通り動画応答性に優れているようだ。

柳瀬敬之氏の仕事場

Photo by Takayuki Yanase

右側のLCD手前に置かれているのが、iPad 。設定画などの資料を表示させているが、外出先では逆に自身が描いたデザイン画のチェックに使うといった具合にフル活用しているようだ。デザインの核となる部分は手描きにこだわる柳瀬氏だが、液晶タブレットは現在使っていないとのこと。

全ての経験がデザインに活きている

最後に、今後の目標について語ってもらった。
「自分のスタイルとして、『作品世界が求めるものは何でもデザインする』というものがあります。その甲斐もあり、TVシリーズ『ファイアボール チャーミング』 では、キャラクターをはじめ、背景や小道具に至るまで大半のメカデザインを担当させて頂きました。今後も機会があれば積極的に様々なデザインに挑戦していきたいですね」。

© Disney
『ファイアボール チャーミング』第一弾TVCM

3DCG をひとつの武器にすることで独自のキャリアを築けたとも言える柳瀬氏だが、CG との付き合い方はどのように考えているのだろうか?

「ゲーム会社など、何らかの組織に所属していれば近くに必ず CG のエキスパートがいるはずなので自ら 3DCG ソフトを使う機会は限られると思うのですが、僕のようなフリーランスの場合、作業効率を上げるためにも必要に迫られて CG を使い始めたという面があります。ですが、実際に CG を利用しているデザイナーはまだ少ない気がしますね。ソフトもハードも凄い勢いで進化しているので、これからの若い人たちの間では CG を利用する機会が増えるのではないでしょうか」。 柳瀬敬之氏スナップ02

また、デザインに限らずアニメ制作全般において 3DCG の利用度合いが高まっている昨今。柳瀬氏としても作業ツールとしてだけでなく、より高い次元から CG のデザインへの活用を考えていきたいと語る。

「自分に限れば、デザインする上で必要な機能は現在の 3ds Max で事足りているんですよね。その一方で、CG が浸透したことで求められるデザインは年々複雑かつ高度になっています。だからこそ、デザインや CG に対するスタンスを考え直す必要があると思うのです。例えば、CG で完成させるのであれば、これまではフォルムやシルエットを意識してデザインしてきましたが、CG アニメーションにとって最適なデザインを、ヒト型なら人間らしい自然な歩行ができるデザインにするべきなのではといったことですね。僕は絵描きになりたくて、モーションデザイナーを経てメカデザイナーになったのですが、たまに脳がモーションデザイナーに戻っている時がありますよ(笑)」。 ガンダム ハルート05

© 創通・サンライズ・毎日放送

今回のインタビューで印象的だったのが、「一見、無関係な経験も必ず役立つ時がくる」という発言である。柳瀬氏の場合、絵描きを志したものの、建築の製図、ゲームのモーションデザイナーと回り道をしてきたと考えていたそうだが、実際にメカデザイナーとして活動するようになってみると、物理的な整合性を考える上では建築の知識が、そして変形機構を考える上ではモーションデザイナーの経験が大いに役立っているそうだ。3DCG ソフトに限らず、これからのコンテンツ制作ツールには、そうしたクリエイターの知識や経験をシームレスに繋ぐ役割がより一層求められるのかもしれない。

TEXT_沼倉有人(CGWORLD)
PHOTO_大沼洋平

Autodesk 3ds Max 2012パッケージ

Autodesk 3ds Max 2012

定価:535,500円(通常製品版 スタンドアロンライセンス)
対応OS:Windows 7/同 Vista Business(SP2)/同 XP x64 Edition(SP2)/同 XP Professional(SP3)他 ※動作環境に関する詳細は こちら

問い合わせ先:Too デジタルメディアシステム部
TEL:03-5752-2855
e-mail:dms@too.co.jp

PSOFT Pencil+ 3キービジュアル

PSOFT Pencil+ 3

定価:56,700円(通常製品版 スタンドアロンライセンス)
対応バージョン:Autodesk 3ds Max 2008〜2012

問い合わせ先:Too デジタルメディアシステム部
TEL:03-5752-2855
e-mail:dms@too.co.jp

『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』Blu-rayパッケージ

劇場版 機動戦士ガンダム00
-A wakening of the Trailblazer-

監督:水島精二
脚本:黒田洋介
メカニックデザイン:海老川兼武・柳瀬敬之・寺岡賢司・福地 仁・鷲尾直広・中谷誠一
CGプロデューサー:松浦裕暁

定価:7,350円(Blu-ray通常版)ほか
発売・販売元:バンダイビジュアル
© 創通・サンライズ・毎日放送
『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』公式サイト