動画応答性能と豊富な入出力インターフェイス
動画応答速度は中間階調で平均7ms。IPSパネルとしてはなかなか良いのではないだろうか。地上波テレビの通常のスタッフロール程度なら確実に文字を読むことができた。深夜の小さくて細かい、そして速度の速いスタッフロールに関しては残像により読みにくくはなったが、輪郭が溶けて読めなくなるようなことはもちろんない。何よりも30型ワイド画面による迫力が十分にあり、プリセットを変えることで広色域と高コントラストでメリハリが効いて鮮やかなのである。
入出力端子は、HDMI×2、HDCP対応DVI-D×2、DisplayPort×1、アナログD-Sub×1、コンポーネントビデオ×1を用意。さらにUSB2.0アップストリーム×1、USB2.0ダウンストリーム×4に加え、7-in-1メディアカードリーダも搭載している。きつい前屈で机下のPCに手を延ばさなくてもよいのだ。座ったまま指でちょいちょいっとカードを差し込めば認識してくれる。ああなんて極楽なのだろう。

本体左側面にはUSB2.0×2と7-in-1メディアリーダ(SDカード、MMC、メモリースティック/PRO、CF、Microdrive、スマートメディアの7種類に対応)スロットが用意されている。椅子に座ったままカードを差し込み、手軽に中身を確認できるというのはありがたい

その他の入出力端子はディスプレイ下部にまとめられている。向かって右から、USBダウンストリーム×2、USBアップストリーム、コンポーネントビデオ、HDMI×2、VGAコネクタ、DVI-Dコネクタ×2、DisplayPort、オーディオ出力(5.1ch対応)。オーディオ出力はオプションで用意されているデル製サウンドバーが接続可能。また、U3011の高解像度を堪能するには2,560×1,600ドット出力が可能なグラフィックスボードから、デュアルリンクDVI-DもしくはDisplayPortを使って入力する必要がある。RGB 10bit表示も同様だ
個人的に気に入ったのが、OSDメニューである。メニューから各種設定を行う際にボタン確認を何度もした経験はないだろうか? どのボタンが何の役目なのかボタンと画面の見返しをしたことはないだろうか? 筆者はそうした経験が多くある。その度にモニタを見ては目の光彩が絞られ、ボタンを見ては光彩が開かれの繰り返しで設定するのが嫌になることも多々あった。
しかしU3011では、設定時にボタンとディスプレイを行ったり来たりする必要がない。ディスプレイ上に文字を表示させる方式なので、目の疲れは格段に軽減された。小さなことかもしれないが2D、3Dを問わずデザイナーにとって目は大事な商売道具。かゆいところに手が届くインターフェイスと言えよう。

青く光るLEDライトに手を触れるだけで「ピッ」と鳴るので設定する際に判りやすい。ディスプレイに現れる指示に従い設定を進める仕様のため、視点と光彩(目の中の絞り)を動かす必要がほとんどなく目に優しい状態で設定が行える
動画でも確認してほしい。動画は、メインメニューを一通り表示させた後に「カラー設定→ガンマ」にてガンマの設定をPCからMACに切り替えてみたものだ
CG制作の作業効率を高める有効な選択肢
今回のレビューを通じて、継ぎ目のない1画面で集中して作業できることがこんなにも高揚するものだったかと改めて実感した。U3011は大画面表示と必要十分な色再現性能を両立させた上で、豊富なI/Oを用意することにより、CG・映像制作だけでなく、動画視聴にも幅広く対応した製品である。シーンを担う汎用性、そして価格とのバランスがとても魅力的だ。安価のディスプレイは世の中にゴマンとある。しかし、使う度にその「バリュー感」でニンマリできるディスプレイと出会うことは滅多にない。やはり安かろう悪かろうなのだ。
人の身体とは正直なもので、見にくければ見やすい位置に、作業がやりにくければやりやすい位置へと自然と体を動かしてしまう。そして、その不自然な体勢が視力低下や筋肉痛、肩こりなどをひき起こす元因となっているのかもしれない。視力や体型など個人的な要因が多いのかもしれないが、実際にU3011でCG・映像制作を試してみたところ、正しい姿勢を保ち、通常よりも楽に一連の作業が行えた。ハードウェアはソフトウェアやプラグインと異なり、縁の下の力持ちとして終始制作業務を下支えするもの。それゆえに使い勝手の良い機材を選びたいものだ。
TEXT_田中啓生(VISIBLEX)
PHOTO_弘田 充・大沼洋平

Dell U3011
価格:159,170円(直販価格)
問い合わせ先:デル オンラインストア
TEL:0120-912-469
デル「U3011」製品情報ページ