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2,560×1,600ドット表示が可能な30型ワイド液晶ディスプレイ「U3011」。デル製ディスプレイにおける上位グレード「デジタルハイエンドシリーズ」に加わった新機種だ。大画面と超高解像度の表示環境を提案する今回の製品を実際にクリエイティブワークを行なっている制作環境の中に導入し、その性能を書き連ねていきたい。

30インチのゆとりある表示領域と高視野角

長らく1画面環境から離れていたのだが、今回改めて1画面の良さを実感している。現在、デュアルディスプレイ環境で映像制作を行なっており、その広さには満足してたものの、何が足りなかったのかようやく気付いた次第だ。仕事場では、20インチのディスプレイ2台を各1,680×1,050の解像度で表示させているのだが、知らないうちに前のめりになっていた。文字をしっかり読もうと、ディスプレイに近づいていたのである。顔が近付くとディスプレイは視野の大部分を占めるようになり、端の文字を読むために目と頭を動かして画面を斜めから覗き込むようになる。そう、画面と文字のバランスが不適切だったのだ。

今回レビューした「U3011」のドットピッチは0.2505ミリ。30インチ(75.6cm)のパネルサイズで2,560×1,600という、フルHDの約2倍の表示領域を実現させているわけだが、ゆったりと椅子の背にもたれかかってもしっかりと文字が読める。身体が疲れないから心もストレスを感じない。
IPSパネルを採用することで視野角も水平・垂直共に178°を実現。四隅で多少のコントラストの低さを感じるがそれは筆者が神経質なだけだろう。画面を斜めから見ても階調は滑らか、色相の変化は皆無である。ひとつの画面上で作業を行うそのスケール感は懐古的で、やもすると狭さを感じるのではないかと危惧していたが、不自由さは全くもって感じない。逆に、ひとつの画面だからこそ感じる視野の安定感と距離感。頭を動かすことなく視点の移動だけで作業を快適に進められる。穏やかな気持ち。この安定感は体感しないとわからない極上の贅沢なのかもしれない。

30インチの大画面と2,560×1,600ドットの高解像度を両立

3ds Max 2011のUIを表示させた例。パラメータの大きさ(見え方)から、その表示領域の大きさが判るはずだ。レンダリング設定ウィンドウやマテリアルウィンドウなどを立ち上げた状態でも不自由なく作業が行える。ウィンドウを立ち上げたり消したりするアクションが格段に少なくなるのは、デザイナーにとって嬉しいところ

IPSパネルによる広視野角178°を実現

正面と側面(約120°)からの見え方を比較してみた。正しく色表現される角度を求めて、顔を左右上下に移動させなくて良いというのは実に快適だ。大画面と高視野角を両立しているので、複数人同時での映像チェックをしたい時は重宝するだろう。残念ながら標準スタンドにはピポッド機能は用意されていないが、16万円弱というコストパフォーマンスを考慮すれば気にならない

10bit RGB表示の有効性

HDが標準となった現在、画角が大きくなった分、マッハバンドや色の破綻にこれまで以上に気を使って制作しなくてはならない。マッハバンドの低減に関してはRGB各チャンネルごとに10bitでレンダリングを行うことによって解消するはずだ。そうなると、10bit ディスプレイは必要最低限の機能と考えられる。マッハバンドの存在は不良として扱われるので確実に低減しておかないと制作プロダクションのイメージダウンに繋がりかねない。そうした意味でも「U3011」は有効だ。ガンマ色温度を数値で細かくカスタマイズするといった機能は備えていないが、その分、価格を16万円弱に抑えることに成功した。カラーグレーディング作業などを行わないCG制作の現場にはうってつけだろう。

RGB 8bitの表示イメージ

8bit素材の表示例。滑らかなはずのグラデーションに等高線のような段差の帯が生じていることを確認できるだろうか。これが8bit レンダリングに発生するマッハバンドである。U3011は10bit表示に対応しているので、ここでは擬似的にAE上で8bitチャンネルの静止画を表示させている(8bit表示のみのディスプレイでは、このように見えてしまうはずだ)

RGB 10bitの表示イメージ

10bit素材の表示例。U3011のような10bit表示に対応したディスプレイを導入することにより、マッハバンドなどの不具合・ミスを未然に防ぐことができる

また、スチルカメラなどで使われるRAWファイルでの動画撮影など、ビデオ規格ではない素材が増えた分、色破綻の可能性も当然増えてくる。sRGBは100%、Adobe RGBは99%をカバーしているため、現像時に適切な色空間への変換を、ディスプレイ上で最終形を目視確認できるのはとてもありがたい。色域が適正に再現できていないディスプレイを使用しての色変換作業では、許容量であるはずのカラコレなのに、ディスプレイ上では色破綻が起きてしまうため変更量を抑えざるをえない。無闇にハイスペックを追う必要はないが、作業内容に適した機材を用意して、デザイナーには納得のいくまでクリエイティブワークを追求させたいものだ。

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動画応答性能と豊富な入出力インターフェイス

動画応答速度は中間階調で平均7ms。IPSパネルとしてはなかなか良いのではないだろうか。地上波テレビの通常のスタッフロール程度なら確実に文字を読むことができた。深夜の小さくて細かい、そして速度の速いスタッフロールに関しては残像により読みにくくはなったが、輪郭が溶けて読めなくなるようなことはもちろんない。何よりも30型ワイド画面による迫力が十分にあり、プリセットを変えることで広色域と高コントラストでメリハリが効いて鮮やかなのである。
入出力端子は、HDMI×2、HDCP対応DVI-D×2、DisplayPort×1、アナログD-Sub×1、コンポーネントビデオ×1を用意。さらにUSB2.0アップストリーム×1、USB2.0ダウンストリーム×4に加え、7-in-1メディアカードリーダも搭載している。きつい前屈で机下のPCに手を延ばさなくてもよいのだ。座ったまま指でちょいちょいっとカードを差し込めば認識してくれる。ああなんて極楽なのだろう。

「U3011」本体左側面の外部接続インターフェイス

本体左側面にはUSB2.0×2と7-in-1メディアリーダ(SDカード、MMC、メモリースティック/PRO、CF、Microdrive、スマートメディアの7種類に対応)スロットが用意されている。椅子に座ったままカードを差し込み、手軽に中身を確認できるというのはありがたい

「U3011」下部の外部接続インターフェイス

その他の入出力端子はディスプレイ下部にまとめられている。向かって右から、USBダウンストリーム×2、USBアップストリーム、コンポーネントビデオ、HDMI×2、VGAコネクタ、DVI-Dコネクタ×2、DisplayPort、オーディオ出力(5.1ch対応)。オーディオ出力はオプションで用意されているデル製サウンドバーが接続可能。また、U3011の高解像度を堪能するには2,560×1,600ドット出力が可能なグラフィックスボードから、デュアルリンクDVI-DもしくはDisplayPortを使って入力する必要がある。RGB 10bit表示も同様だ

個人的に気に入ったのが、OSDメニューである。メニューから各種設定を行う際にボタン確認を何度もした経験はないだろうか? どのボタンが何の役目なのかボタンと画面の見返しをしたことはないだろうか? 筆者はそうした経験が多くある。その度にモニタを見ては目の光彩が絞られ、ボタンを見ては光彩が開かれの繰り返しで設定するのが嫌になることも多々あった。
しかしU3011では、設定時にボタンとディスプレイを行ったり来たりする必要がない。ディスプレイ上に文字を表示させる方式なので、目の疲れは格段に軽減された。小さなことかもしれないが2D、3Dを問わずデザイナーにとって目は大事な商売道具。かゆいところに手が届くインターフェイスと言えよう。

「U3011」OSDメニュー

青く光るLEDライトに手を触れるだけで「ピッ」と鳴るので設定する際に判りやすい。ディスプレイに現れる指示に従い設定を進める仕様のため、視点と光彩(目の中の絞り)を動かす必要がほとんどなく目に優しい状態で設定が行える
 
 

動画でも確認してほしい。動画は、メインメニューを一通り表示させた後に「カラー設定→ガンマ」にてガンマの設定をPCからMACに切り替えてみたものだ

CG制作の作業効率を高める有効な選択肢

今回のレビューを通じて、継ぎ目のない1画面で集中して作業できることがこんなにも高揚するものだったかと改めて実感した。U3011は大画面表示と必要十分な色再現性能を両立させた上で、豊富なI/Oを用意することにより、CG・映像制作だけでなく、動画視聴にも幅広く対応した製品である。シーンを担う汎用性、そして価格とのバランスがとても魅力的だ。安価のディスプレイは世の中にゴマンとある。しかし、使う度にその「バリュー感」でニンマリできるディスプレイと出会うことは滅多にない。やはり安かろう悪かろうなのだ。
人の身体とは正直なもので、見にくければ見やすい位置に、作業がやりにくければやりやすい位置へと自然と体を動かしてしまう。そして、その不自然な体勢が視力低下や筋肉痛、肩こりなどをひき起こす元因となっているのかもしれない。視力や体型など個人的な要因が多いのかもしれないが、実際にU3011でCG・映像制作を試してみたところ、正しい姿勢を保ち、通常よりも楽に一連の作業が行えた。ハードウェアはソフトウェアやプラグインと異なり、縁の下の力持ちとして終始制作業務を下支えするもの。それゆえに使い勝手の良い機材を選びたいものだ。

TEXT_田中啓生(VISIBLEX)
PHOTO_弘田 充・大沼洋平

「Dell U3011」製品画像

Dell U3011

価格:159,170円(直販価格)
問い合わせ先:デル オンラインストア
TEL:0120-912-469
デル「U3011」製品情報ページ