>   >  「福岡から海外へ」映像コンテンツの海外展開を目的として設立された映像コンテンツ産業研究会の取り組みとは?
「福岡から海外へ」映像コンテンツの海外展開を目的として設立された映像コンテンツ産業研究会の取り組みとは?

「福岡から海外へ」映像コンテンツの海外展開を目的として設立された映像コンテンツ産業研究会の取り組みとは?

CGW:海外のバイヤーから見た日本の印象は?

松下:手塚治虫作品にはじまり『ドラえもん』『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』など海外でも人気の作品が多いので、日本のストーリーのアイデアや企画がユニークであるとよく言われます。でも制作費が高いイメージがあるので、日本とはプリプロの部分だけで、制作は東南アジアのスタジオと組むことを勧められます。

CGW:行政としてはどのような思いで取り組まれてますか?

楠本賢司氏(以下、楠本):まず、福岡の企業が"本気でやりたい"と思っている想いを大事にしたいと考えています。福岡市も一緒に何か出来ないかと考えて施策を考えて、事業を実施するように心がけています。その中で、行政も一緒にやりませんかと民間の方々から声をかけていただいたのは本当に嬉しく思っています。

基本的には、自治体として、1社の作品だけを売り込むことが難しいので、行政として支援できることは展示会や交流会等の「場の提供」だと思います。官民が一緒にやることで福岡で制作されたオリジナル作品を「FUKUOKA ANIMATION」として見せることができますし、「福岡はアニメーションの街」としてのブランディングが出来あがって来ると、産業振興だけでなく観光の面からもプロモーションが出来ると考えています。

  • また、自治体が地元の企業等の声を聞かずに策定した事業は失敗しがちだと感じているのですが、日ごろから民間の方からの意見を聞き、時には一緒に汗をかいて考案した事業なので方向性が共有できており、参加企業も我々も動きやすく成果に繋がりやすいと考えています。

CGW:昨年活動をした成果はいかがですか?

松下:実績は数作品でした。現実は難しいですね。要因は分かっていて、作品の数も多くないし、求められている作品のターゲットが子供向けでチャンネルごとに様々でレンジも狭かったりで......。日本ですでにヒットしてるものであれば売れるけど、まだ日本でも放送されてないものには興味を持たれないので、それなら企画の方がいいという先ほどの話につながります。

一方で去年アヌシーアニメーションフェスティバルのマーケットに参加した時に、フランスのバイヤーに、どうしたらテレビ局が買ってくれるか聞いたら「フランスのプロデューサーがいないとウチは買わないよ」と言われたりとか。海外では、法律でテレビの一部の枠は自国のスタジオから作品を買うように定められてることが多く、完成作品が海外から入り込む隙は限られているようです。

CGW:活動してみて大変だったことは?

松下:バイヤーとアポイントを取るのに苦労しています。映画祭やマーケット会場に行くだけで会えるわけでもないので。入場パスを買うと来場バイヤーの情報も提供されるのですが、こちらの認知度が低いこともあり、事前にコンタクトをとってもなかなか返事が来ない。まだまだ自分自身を含め、売り込めていないということが課題ですね......。

  • さらに会うことはできても向こうは一気に大勢と会うので、覚えてもらうのに苦労します。なので、帰ってきてからのコミュニケーションが重要で、相手方にいかに好感を得らるかがに気を使っています。今は毎年顔を出して、またアイツが、日本から(福岡から)来てると印象づけている段階ですね。

楠本:そこに対して我々としては、いかに福岡の企業が現地で活動しやすくなるかという、側面的な支援をしています。現地入りする前に「福岡からこの企業が渡航します」という情報を向こうの政府や関係機関に流し、交流の契機や糸口になるようなきっかけを作りをしています。日本にいるうちから、詳細な情報を流し、事前に綿密なコミュニケーションを取ることで渡航する企業が円滑にコンタクトが取れるだけでなく、効率よいネットワークの構築ができればと考えています。

CGW:最後に今年の活動内容とこれから目指すべき姿を教えてください。

松下:今は、作品や企画の掘り起こしとセールス資料作成に専念してて、10月から3月の間に出来るだけ多くのマーケットに参加する予定にしてます。TIFFCOM(東京国際映画祭の併設マーケット)からカナダ、その後はシンガポール、マイアミ、韓国など。
今年は作品だけでなく企画アイデアも多く集まっているので、昨年以上に実績をあげたいですね。 最終的には、実績を重ねていって、福岡に行けば、海外への商流があるよ。というのを国内のクリエイターの皆さんに認知してもらえるところまでいけたらと思います。

楠本:考え方としては松下さんとほぼ同じです。若者が多く、活気のある街であるところやきちんと福岡でビジネスが出来るというところを、世界に向けて特にアジア向けてはしっかりと発信し続けたいです。


福岡では「福岡をゲームのハリウッドに」をスローガンとして2004年に組織された地元ゲーム会社の団体・GFFが知られてきた。それから10年を経て登場した映像コンテンツ産業研究会。今後はこちらの取り組みにも注目しておきたい。また、現在福岡市では県外からのU/Iターン促進プログラムとして『福岡クリエイティブキャンプ』を実施している。県外からの移住者で条件を満たせば40万円の応援金が支給されるプログラムだ。これから海外にチャレンジしたいクリエイターは福岡で働くことも視野にいれてみるのもいいかもしれない。

TEXT_真狩祐志
PHOTO_蟹由香

■関連リンク
福岡クリエイティブキャンプ 2015:http://fcc.city.fukuoka.lg.jp/

Profileプロフィール

松下 由香/Yuka Matsushita<br>楠本 賢司/Kenji Kusumoto

松下 由香/Yuka Matsushita
楠本 賢司/Kenji Kusumoto

(写真・左)松下 由香氏(映像コンテンツ産業研究会/モンブラン・ピクチャーズ)
長崎生まれ、アメリカ育ち、高校より福岡在住。 営業、事務・経理、マーケティング職を経て、2012年モンブラン・ピクチャーズ設立と同時に、事務・経理として入社。 過去のキャリアと英語が話せるという理由だけで、2013年から海外ビジネス展開を兼任、2014年より福岡市からの委託事業により、自社コンテンツに加え、福岡のアニメスタジオ制作のコンテンツを預かり、海外のテレビや映画のマーケットへ参加しセールス活動を行う。 主にASEAN・ヨーロッパを中心に海外を飛び回り、アニメコンテンツの市場開拓と海外でコンテンツをマネタイズする仕組みを構築中。

(写真・右)楠本 賢司氏(福岡市経済観光文化局コンテンツ振興課)
長崎生まれの福岡育ち。 大学卒業後,民間企業・国家公務員を経て,福岡市役所へ入庁。 福祉分野を経た後に,念願が叶って昨年度から現在の部署に。 仕事と称し,公私ともにゲームと映像にハマる日々を過ごす。

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