<2>キャラクターアニメーションへのこだわり
RIVAが携わった業務は多岐にわたるが、ここからは質と量の両面において最も大きな労力求められたアニメーション制作の具体例を紹介したい。キャラクターアニメーションにおける技術的なチャレンジのひとつが『松葉杖をつくキャラクターの演技』だったと、メユール氏は語る。
「辺境の戦いで王の剣のメンバーのひとり、リベルト・オスティウム(CV:かぬか光明)は左脚を負傷してしまいます。その後、彼は大半のシーンで松葉杖を突いているのですが、松葉杖は『肩』『持ち手』『地面』という3つの要素それぞれと干渉するわけですが、ピッタリと合わさっていては不自然に見えてしまいます。しかも松葉杖に体重をかけているように見せなければならないので、その制御は非常に複雑になりました」。
中央で松葉杖を突いているのが、リベルト
© 2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
つまり、松葉杖とキャラクター、そして地面の関係が完全に固定された状態では不自然だが、体重をかけてみせる程度には緊密に連動して見えなければいけない。そこで担当アニメーターは、受け取ったモーションキャプチャデータを軸に、基本的には3点によるコンストレインでアニメーションの確度を上げつつ、演技用のリファレンスを大量にビデオ撮影し、これを参考にブラッシュアップを重ねたという。
特に、リベルトが怒りをあらわにするというストーリー上でも重要な演技では、それを表現するために微妙な手付けアクション、リップシンクや、呼吸の表現などを丁寧に付与していったそうだ。
上述したリベルトが激しい憤りを見せるシーンのチェック用QT。劇中でも印象的なシーンのひとつだ
もうひとつのアニメーションにおける技術的なチャレンジとして、前半に登場する主人公ニックス・ウリック(CV:綾野 剛)が、リベルトら同郷の「王の剣」メンバーたちと行きつけの屋台で会食するシークエンスが挙げられた。ここでは大量の小道具(料理や食器)がキャラクター間、キャラクターとテーブルを行き来し、さらに着席したままの演技に合わせたClothシミュレーションが求められたのだ。
「キャラクターたちはごく自然に日常芝居をしつつ、その中で小道具を相互に受け渡すために大量のコンストレイン制御が発生しました。また、キャラクターを座らせた上で衣装の干渉・相貫を避けつつClothを制御する必要があったため、非常に細やかなシミュレーション作業が求められました。キャラクター自身と衣類もありますが、同時に椅子とも干渉します。そこでキャラクターは椅子からごくわずかに浮いた状態を保ち、かつちゃんと座っているという説得力を得られるように、布としての自然な広がり方やシワが得られるよう、試行錯誤を繰り返しました」。
ニックスやリベルトが屋台で談笑するシーンより。こうした日常芝居ほど、繊細なアニメーションが不可欠となる
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これら技術面でのハードルのほか、クリエイティブな部分でのチャレンジもあった。代表的なのは、やはりアクションシーンだ。
「基本的には第2BDから支給された全身とフェイシャルのモーションキャプチャデータを基にアニメーション作業を行うのですが、当然ながら現実を超えたアクロバティックな動きについてはイチからキーフレームで動きをつけなければなりません」。
そうした演技については、手付けベースで動きを付けるわけだが、本作で徹底的に追求されたリアリティを損なわないよう、"Believable(信じられる)な画"になっているかどうか、細心の注意をもってアニメーション作業を行なったそうだ。また、演出がリアリティ重視であるかどうかに関わらず、揺れものや小道具類の動きは基本的に手付けベースであり、こちらも物量と相応の精度が求められるハードワークとなった。
RIVAが担当したアクションシーンの例。(上)アニメーションとしての完成形/(下)コンポジットとしての完成形(最終グレーディング前)
先述のとおり、実作業はもちろんのこと、パイプラインやインフラの整備という面でもハードルが高かったという本プロジェクト。それを完遂することができたことでRIVAのスタッフは確かな成長を遂げたと、メユール氏は自信をのぞかせる。
「『キングスグレイブ FFXV』は、われわれにとって大きな躍進を遂げる絶好の機会となりました。そして、インドのCGプロダクションが有する才能を存分に発揮させることができた最高のプロダクトだと自負しています」。
ムンバイのRIVAスタッフたち
info.
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映画『キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV』
10月1日(土)より、4DX & MD4X版の上映開始!
プロデューサー:田畑 端
ディレクター:野末武志
脚本:長谷川 隆
kingsglaive-jp.com