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ポリゴン・ピクチュアズのプロジェクトを支える、制作管理の仕事に迫る

ポリゴン・ピクチュアズのプロジェクトを支える、制作管理の仕事に迫る

やりたい順番やタイミングを理解し、要望に応える

トキトウ:この1年間、髙島さんは『Lost in Oz』のコーディネーターとして、どのような経験をなさいましたか?

髙島:1ヶ月間のOff-JT研修でCG映像制作の基礎を勉強した後、『Lost in Oz』を担当している先輩コーディネーターと一緒に仕事をしながら一通りのやり方を習いました。最初に担当したエピソードは先輩と一緒に行動し、エピソードを重ねるごとに自分ひとりでやる範囲を増やしていき、最終的にはひとりでエピソードの制作管理をするようになりました。

トキトウ:3DCGの知識がない状態からのスタートは大変だったのではないですか?

髙島:はい。最初に配属されたグループの上司に「CGのことがわからない」と相談したら、『Lost in Oz』のデータを使い、3DCGの制作工程を最初から最後まで解説する授業を行なってくださいました。実際のデータを見せながら順番に説明してもらえたことで、理解が深まりましたね。コーディネーターは、ただ進捗を追いかけるだけが仕事ではなく、各アーティストさんのやりたい順番、やりたいタイミングを理解し、いかにうまく組み合わせ、要望に応えるかを考える必要があるのです。そのことが、過去1年間の仕事を通して徐々にわかってきました。

サラ:ときには「これ、上がってきてないですけど、いつ上がるんですか」と追い立てなければいけない仕事でもあるので、最初のうちは尻込みすることが多いと思います。最近の髙島は、そういう仕事も含めてできるようになってきました。

髙島:最初は言い方が悪かったり、順序が悪かったりで、なかなか上手くいかなかったのですが、先輩のやり方を見ながら仕事を覚え、ちょっとずつ自分なりの工夫ができるようになってきました。プロジェクトは順調に進んでいるのか、それとも遅れているのかを判断するときには、SHOTGUNのエピソード オーバービューのページが役立ちましたね。そのページを見れば全体状況が俯瞰できますし、SVやアーティストさんに相談する際にも共通認識を得やすかったです。

サラ:エピソード オーバービューは、アセットリストやショットリストに入力された情報をもとに自動的につくられるので重宝しています。最新のSHOTGUNではグラフ表示機能が拡充されたので、進捗状況の一覧がさらにわかりやすくなりました。

▲『Lost in Oz』におけるSHOTGUNのエピソードごとのオーバービュー。アニメーション、エフェクト、ライティング、コンポジットなどの、エピソードごとの進捗状況が一覧できる


▲最新のSHOTGUNによるエピソードごとのオーバービュー。グラフ表示機能が拡充され、進捗状況の一覧がさらにわかりやすくなった。グラフ内の色は実際に管理に使用しているステータスの色を反映しており、それぞれのエピソードの現状を一目で把握できる

リテイクが多ければ、その原因を分析し、改善策を考える

サラ:『Lost in Oz』からは、SHOTGUNに蓄積されたデータをGoogleスプレッドシート上で分析することも始めました。エピソードが終わるたび、まだ記憶が新しいうちに皆で分析結果を見直し、一番リテイク数が多かったショットや、進捗率を確認することを習慣づけたのです。「あのアーティストさんは何回もリテイクが出ているけれど、問題はどこにあったのか」「エピソードを重ねる中で、リテイクの全体量は減っているのか、増えているのか」「予定していたスケジュールと実際の進捗に乖離はなかったか」といったことを客観的に分析できるようになったことで、以降のエピソードをさらに円滑に進められるようになりました。

トキトウ:すばらしい習慣ですが、アーティストさんにとっては冷や汗が出る習慣でもありますね。

サラ:リテイクが多いからと言って、必ずしもアーティストが悪いとは限りません。例えば、あるエピソードのリテイク数が多い場合、それはクライアントから来たものだったのか、ディレクターから来たものだったのかを精査することで問題が明らかになることもあります。ディレクターの指示に従ってリテイクしたものに対して、クライアントが真逆のリテイクを出していたなら、両者の考え方が合っていないことが原因という結論が導けます。

髙島:当初は分析結果をどう見ればいいのかわかりませんでしたが、ほかの人の意見を聞くうちに、だんだんと数字のとらえ方がわかってきました。リテイクが多ければ、その原因を分析して改善策を考える必要があるといったことも、エピソード完成後のふり返りを通して理解できるようになりました。

トキトウ:ふり返りによって、仕事に対する理解がさらに深まるというメリットもあるのですね。

髙島:例えば、各アーティストさんのペースがわかってからはタスクの割り振りがやりやすくなったので、「このアーティストさんは作業が早いけれどリテイクがたくさん入るタイプだから、最初の締め切りを早めに設定しよう」「このアーティストさんはリテイクが少ないから、作業期間を長めにしよう」といった判断ができるようになりました。

トキトウ:過去の具体的な数値を定期的に見直すことで、的確な判断ができるようになり、次に改善すべきことも見えてくるわけですね。

▲SHOTGUNに蓄積されたデータをGoogleスプレッドシート上で分析し、ひとつのエピソードにおけるクライアント承認の過程を表とグラフで表している。上の表では、アニメーターごとの担当ショット数、リテイク数などが示されている。下のグラフは、緑色の線が「目標として設定したクライアント承認のスケジュール」、ピンク色の線が「実際のクライアント承認の進捗」、青色の棒が「クライアント承認のとれたカット数」を表している


トキトウ:では最後の質問です。アーティストさんの高いパフォーマンスを保ち、プロジェクトを円滑に回すために、気を付けていることはありますか?

サラ:ひとりのアーティストさんに対して、複数ショットをまとめた形で割り当てるようにしています。「これらのショットはこの期間内に終われば問題ないですよ」というスケジュールを組めば、アーティストさんはその期間内で自由にタスクを調整できます。こうしておけば、私生活や体調に応じて日々の作業量を調整できるため、結果としてアーティストさんのパフォーマンスの維持につながりました。

髙島:問題が起こってから対処するのではなく、起こらないように進めるにはどうしたらいいのか、起こる可能性があることは何なのかを事前によく考えるようにしています。

サラ:この仕事はプランニングすることが一番重要なので、事前にどれくらい考えられるか、情報を集められるか、全体を俯瞰できるかが重要だと思います。

トキトウ:SHOTGUNに蓄積した情報を分析したり、皆で相談したりしながら情報を集め、精査し、リスクマネジメントをなさっているわけですね。制作管理は、非常に奥深く、いくらでも改善の余地がある仕事だと改めて感じました。お話いただき、有難うございました。

Profileプロフィール

ポリゴン・ピクチュアズ/Polygon Pictures

ポリゴン・ピクチュアズ/Polygon Pictures

左から、髙島梨紗(プロダクションコーディネーター)、サラ コルティナ(ラインプロデューサー)
www.ppi.co.jp

スペシャルインタビュー