>   >  作品愛と柔軟な環境整備がキャラクターを輝かせる! 『ストリートファイターV アーケードエディション』OPのキャラ制作フロー
作品愛と柔軟な環境整備がキャラクターを輝かせる!<br/> 『ストリートファイターV アーケードエディション』OPのキャラ制作フロー

作品愛と柔軟な環境整備がキャラクターを輝かせる!
『ストリートファイターV アーケードエディション』OPのキャラ制作フロー

<2>プロジェクトに合わせた最適なワークフローの構築

本作では短期間でハイクオリティな作品を制作するため、綿密なワークフローの構築と、自動ツールの作成等スタッフが効率的に作業できるようテクニカル面のサポートも充実していた。大規模な制作プロダクションでは社内で固定のワークフローが運用されているケースが多いが、白組・三軒茶屋スタジオではフルCG、セルアニメーション、実写、ストップモーションと制作案件の性質が多岐に渡り、規模も案件ごとに異なるため共通のワークフローは存在せず、案件ごとに最適なワークフローを構築していくことが慣例なのだという。

テクニカル面の多くを請け負ったCGテクニカルスーパーバイザーの初鹿雄太氏は、本プロジェクトがスタートした4月当初からカプコンとの打ち合わせに同席し、プロジェクトの性質を理解した上でワークフローの構築を進めていった。「納品までの4ヶ月という時間の中でいかにクオリティの高い作品を効率的に制作するか、まずは早急にワークフローを決める必要がありました」(初鹿氏)。


  • 初鹿雄太/Yuta Hatsushika
    白組 CGテクニカルスーパーバイザー

ディレクターの小森啓裕氏と話し合いを重ね、"キャラクターを強調したムービーをつくる"という部分に焦点を絞り、モデリング、モーションキャプチャ、レイアウト、ルックデヴ、エフェクト制作など並行に走る全ての作業の終着地点を1つに集約するため、社内のソフトウェアの環境とスタッフの意向をヒアリングしながら丹念にワークフローを構築。初鹿氏は「今回はモーションキャプチャを使用し、また、舞台らしさの演出表現のために床面への映り込みに気を配るという前提があったため、リアルタイムのリフレクション描画がMayaや3ds Maxよりも格段に速いMotionBuilderをレイアウト~アニマティクス完成までの工程に全般的に活用することにしました」と語る。また、プロジェクト効率を上げるため、リガー以外のスタッフでも簡易的な筋肉表現やフェイシャルセットアップが行えるよう自動化するツールの整備など、普段ボトルネックとなりがちな工程の排除を行なったとのこと。

・ワークフロー


初鹿氏が本作のために組んだワークフロー。作業のながれに加え、Maya、3dsMax、MotionBuilderのツール間の連携がわかりやすい。「Tool」アイコンは内製ツールを表す

・インゲームアセットを3ds Maxに読み込みCAT化


カプコンから支給されたMayaデータを3ds Maxにインポートし、そのモデルとボーンデータを、内製ツールを併用しながらCATに変換、同時にスキンウェイトも継承していく。こうしてCAT化されたリグをMotionBuilderにもっていき、再び3ds Maxに戻せるよう調整されている

・MotionBuilder上でのレイアウト

MotionBuilder上でのレイアウト作業の様子。本作では、「実際の舞台と同じ手法を使った演出をする」というコンセプトの下、キャラクターが黒塗りの映り込みが入る質感の床面に立って演技をしているようなカットが数多くある。床面への反射が構図に大きく関わるため、リアルタイムで反射を描画可能なMotionBuilderが重宝された

・ブラッシュアップしたモデルとリグを統合する内製ツール

左:リグとブラッシュアップしたモデルを統合する内製ツール「BodyAddon」のUI。簡易的な筋肉表現の構築もこれに含まれている/右:ブラッシュアップしたモデルに自動的にフェイシャルリグを構築する「FacialAddon」のUI


上記2ツールの使用イメージ

「BodyAddon」ツールによって構築された簡易的な筋肉表現のためのリグの例。腕を曲げたときなどに生じる筋肉の膨らみのON/OFFと、膨らみ具合の調整が可能。本来ならばリガーと連携する、もしくは作業者自身でリグを構築しなければ対応できない部分だが、このツールによりモデラーでもリグを調整できるようになり、ポーズごとに筋肉表現のセットアップを行なった。アニメーターもこのリグを使用してショットごとに筋肉の誇張表現が行える。そのほか、肘・膝の尖り具合なども動的に調整できるようになっている

・モーションとフェイシャルのライブラリ

制作にあたってゲーム内の表情や動きについても全て再現可能な環境にするため、カプコンから提供されたインゲームのフェイシャルアニメーションおよびモーションを全てライブラリ化。フェイシャル、インゲームモーション、モーションキャプチャデータは全て同じフォーマットのアニメーションデータとして読み込みが可能となっている。上段はフェイシャルライブラリのUIと使用画面、下段はモーションインポーターのUIと使用画面




・SHOTGUNによる進捗管理


シーケンス管理にはSHOTGUNが使用された

  • 『ストリートファイターV アーケードエディション』
    開発・販売:カプコン
    リリース:発売中
    価格:4,990円+税(パッケージ版)、4,620円+税(ダウンロード版)
    プラットフォーム:PS4、PC(ダウンロード版のみ)
    ジャンル:対戦格闘アクション
    www.capcom.co.jp/sfv/

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