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ディレクションシーズが伝授!<br/>超効率的3DエフェクトTIPS(遊技機向け映像からスマホゲームまで)

ディレクションシーズが伝授!
超効率的3DエフェクトTIPS(遊技機向け映像からスマホゲームまで)

Topic 02 立体感を強調するデザイン

立体エフェクトの構成要素を確認

立体的なエフェクトは派手に見せるのに効果的だと述べてきたが、そもそも立体的なエフェクトとはどういうものなのか。立体的に認識しやすいのかを、遊技機では欠かせない「インパクトエフェクト」を例題に、エフェクトを構成している要素を分析していく。

例題のエフェクト構成は基本的なものとする。イン(0~59フレーム)、ループ(60~89フレーム)、アウト(90~119フレーム)。 図柄に対してインパクトエフェクトが入り、ループ尺で状態キープ、アウトで図柄からエフェクトが消える内容とする。まずは「イン」の部分で立体感を強調している部分は、図柄停止前に予備動作として画面手前からインしてくるトレイル。こちらは遊技者に対して視線誘導としての意味がある。強くアピールする手法として、手前から図柄へと流れる流体を出す。単純に光を集めるのではなく、素材の贅沢感と画面奥へ吸い込まれる動きで遊技者の興味を引く。このように奥へ流れることで立体感が認識できている。

次に停止アクションのインパクトとして、画面手前にクロスして飛んでくる衝撃波。誘導した視線から爆発させて、画面にぶつかるようにカメラギリギリをなめて通過する。衝撃波の収束と開放は今までも常識的に組み込まれているものだが、それを立体的なパーツに置き換えているだけである。続いての強調ポイントは「ループ」時の図柄に巻きついている流体だ。キープする意味合いなのでテンションは低め。図柄を中心にY軸で回ることにより曲線の立体感が認識でき、止まっていると立体感はなくなる。動きとセットで考えないと立体感は生まれないということだ。また、立体的につくると動きがぬるく見えてしまうことがあるが、アニメーションにはタメツメが必須。セルアニメのエフェクトのようなキレと贅沢な3D素材が融合してはじめて完成と言える。平面の動きに奥行きの動きが足されるので「動きの情報が多く、見ているとストレスを感じる」=「見応えがある」=「派手に見える」と感じるのである。

立体的なエフェクトに見えるポイント

▲インでは、何かが起こると興味を引く、吸い込み集中線を立体的にする<A> 。パーティクルが流れることで立体感を認識でき、遅いものと速いものを混ぜることで擬似的な立体感も出す。インパクトはとにかく目に刺さるように勢いを重視し、バランスよく画面全体が埋まるようにレイアウトすることがポイントだ<B> 。フラッシュも忘れずに。<C> のループ状態は長い時間見ることになるので、とにかく綺麗なイメージでデザインが印象に残るようにシルエットに気をつける。<D> のアウトでは一気に小気味良くはけるのが基本で、インほど強さはいらないが、演出が発展する場合にはインパクトが必要だ

動きが映えるデザインバランスが大事

▲エフェクトは、立体感を強調するパーツと平面的なパーツで構成されている。<A> メインパーツ/<B> サブパーツ/<C>FumeFXパーツ。大事なのは全体のバランスだ。エフェクトが見やすくなるよう、パーツごとに重なりすぎないようにすることがポイントとなる。よく陥りがちなのが、曲線的な動きに直線の動きを混ぜたりして動きをつぶしてしまうことだ。エフェクトの流れも、奥に向かうものと手前にくるものを同位置にかぶせると上手くいかない。立体エフェクトを作成する際は、空間の中で力の流れを整えることで説得力に大きなちがいが出てくる。作成する前にエフェクトのシナリオをしっかり構成することが重要だ

派手に見せるためにはメリハリが必要

▲派手に見せるためには、いかに目に残るようにするかがポイント。グローをかけすぎてボケたようなパーツだけで構成すると、フワッと目に馴染みすぎて、輝度を上げても印象に残らない。速く動くものはモーションブラーでボケていた方がカッコ良いが、少し速度を遅くしたものでエフェクトのシルエットを瞬間に認識できる程度にクッキリと見せると、メリハリが生まれて見応えがあるように感じる。色も同系色で輝度・彩度に差をもたせて、手前と奥で変えると立体感が見やすくなり効果的である。<A>メリハリのない例/<B>メリハリをつけた例

Topic 03 ディレクションシーズの取り組み

システム化された遊技機エフェクト制作環境

立体的なエフェクトはこれまで作成者のスキルレベルに依存する難易度の高い作業であったが、作業内容を分析して各工程で作業雛形データを作成しワークフローに組み込むことにより、スキルの差に影響なく量産できる体制を整えることができた。雛形に当てはまらないプロジェクトごとの1点ものを作成するときには、リードアーティストがコンセプトを作成する意味も含めて担当している。ここでは、各工程での雛形に沿った作業とはどういうものかを紹介していこう。

まずはコンポジターが担当する部分。3DCGデザイナーがトレイルエフェクトをシーン作成する際に使用する、ループ処理済みの動画テクスチャの作成だ。各プロジェクトに合わせて作成期間を設けて素材を作成していく。トレイルに貼る目的なので、真横に長い画像比率を基本仕様としている。3Dでカメラにかなり近く表示されることが多いので、寄っても劣化しないようにかなり大きめのサイズで作成。次に3DCGデザイナーの作業だが、FumeFXのシミュレーションとトレイル(テクスチャ使用)の雛形の2つがある。2つの雛形シーンは同一のカメラとエミッタで制御し、トレイルのアニメーションを作成すれば、同時にFumeFXのエフェクトも即時にシミュレーションを開始できる。コンポジターがつくり込んだ動画テクスチャをエフェクトの芯として使用するだけで、同じ軌道で発生するFumeFXのボリューム感のあるフルイド素材が同一シーンで作成される。なお、遊技機定番のアニメーションパターンがシーン内に登録してあり、指示に近い動きから作業を開始できるので時短が可能。調整の難しいFumeFXも仕様内であれば完成想定がブレないため、動きを付けてシミュレーションをかけるだけの作業時間で済んでいる。トレイルの3Dレンダリングも軽いので、素材待ち等のタイムラグも発生しづらい。コンポジターはこれら3D側からの素材を組み込んで演出を完成させていく。

差し替えをスムーズにする仕様統一



▲3Dトレイルに様々なテクスチャをスムーズに貼り変えるためには仕様を統一しなければならない。画像サイズ、発射方向、尺を揃えることで、テクスチャデータを別のものに変えてもそのまま演出に組み込むことができる。尺も端数を出さずに30フレーム刻みで用意している。遊技機では1秒、2秒ループ等の計算しやすいフレームでループ処理を行うことが多いからだ。<A>差し替え用動画テクスチャ/<B>3Dトレイルにテクスチャを適用している様子

▲3Dトレイル<A>とFumeFX素材<B>は混在させることが可能だ。FumeFXによる雛形はシミュレーション計算領域とカメラを全て統一している。ポイントによってFumeFXのエミッタを動かしており、同ポイントに3Dトレイルの雛形を読み込んでリンクさせることで、つくり込んだ3DトレイルにFumeFX素材を纏わせることができるようになっている。これにより、エフェクト表現を一段階上げることが無理なく行え、修正を行う場合も同じアニメーションを共有しているので、再シミュレーションをかけるだけで作業の負担は少ない

Compositor Linkを活用



▲3ds MaxからCompositor Linkで3Dトレイルのエミッタ座標をインポートし、トレイル素材に巻きつくようにパーティクルを足して表現の強化を行う<A> 。Trapcode Particularでライトをエミッタにしてインポートした座標とエクスプレッションで位置を結ぶだけで座標にリンクする。あとは自由にパラメータを調整するだけだ。完成に近い状態を確認しながらパーティクルの軌道や量を調整するにはAfter Effectsで行なった方が速かったので、この手法を採っている。パーティクルにあてるテクスチャも即時調整できるので、細かいコントロールがしやすい。<B><C>はパーティクルのテクスチャを差し替えた例

Profileプロフィール

ディレクションシーズ/DirectionSeeds

ディレクションシーズ/DirectionSeeds

山口 絢(ディレクションシーズ・執行役員)、國雲好隆(同、3DCGディレクター)、中西 亮(同、アートディレクター)

株式会社ディレクションシーズ

株式会社ディレクションシーズ

ディレクションシーズは、パチンコ・パチスロ液晶ソフトの企画・デザイン・液晶制御をはじめ、コンシューマー・スマホ・VRゲーム等の3DCG制作を行なっています。アニメを題材としたトゥーンCGの開発実績が多く、2Dならではの魅力を活かした3DCGモデルを作成、手付けアニメーションでアクロバティックにグリグリ動かすプリレンダームービーを得意としています。なお、ディレクションシーズでは案件増加に伴い積極的に人材採用中です。ご興味ある方はぜひご応募ください。
www.d-seeds.com
cgworld.jp/jobs/30001.html

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