>   >  世界中から大注目!Youtubeで800万回以上再生された『AC Milan vs. Super Carby TOYO TIRES』はこう作られた!
世界中から大注目!Youtubeで800万回以上再生された『AC Milan vs. Super Carby TOYO TIRES』はこう作られた!

世界中から大注目!Youtubeで800万回以上再生された『AC Milan vs. Super Carby TOYO TIRES』はこう作られた!

Topic1:重要な事前準備

良い画づくりのための入念なプリビズ制作

昨年7月に企画が本格的に動き出し、演出も固まったところで、ミラノでの1回目のロケハンが8月に行われた。このロケハンでは、現地の下調べと共にプリビズ用の背景も撮影されている。

海外ロケにおいては、時間や場所、予算の制約も多く、特に今回はACミランの選手たちのスケジュールが限られていることから、プリビズ制作を入念に行い綿密な撮影プランが立てられた。そのため、ロケハンでは大量の背景素材のほか、撮影場所の位置関係や距離の測定など、細かいデータも収集されている。

これまでスランテッドが手がけてきたCM制作では海外ロケも珍しくなく、たとえ海外であっても必ず担当のCGスタッフが撮影に同行するようにしているという。本作のロケもイタリアで行われたが、ロケハンから選手の撮影など全ての工程にCGディレクターの山内 太氏とCGアーティストの児玉秀之氏が同行し、撮影のディレクション等を行なった。 スランテッドでは、スタッフはCG制作のようなデスクワークのスキルに加えて、現場での仕切りや撮影の知識が必要不可欠なのだ。

今回のプリビズ制作は、ジャストコーズプロダクションという、プリビズやモーションキャプチャに強い映像制作会社が担当している。

コンテでは具体的に描かれていない「演出意図」をプリビズに反映するスキルには、絶大な信頼を寄せているそうだ。プリビズは約2週間程度で制作されたが、すでに完成形に非常に近い映像となっており「通常ロケハンが終わった後は、ロケーションの写真と手描きの絵コンテしかない状態が多いのですが、今回は完成形に近いプリビズができていたことでクライアントにも安心していただけて、信頼を得ることもできました」と山内氏は話す。

このプリビズは、撮影場所の位置関係や距離が正確につくられているため、プリビズを基に撮影の香盤表を作成したり、カット分析を行なったりしている。 

本作では、ロケーションと選手のアクションを撮影する時間と場所が異なっていたため、特にライティングを合わせることがとても困難になると予想されていた。そこで、選手の撮影香盤に合わせてロケ場所でライティングのシミュレーションを行うなど、入念に撮影の準備が進められた。

「CG制作では、どんなソフトウェアを使用するかによって映像のクオリティが変わることもありますが、事前にきちんと考えて準備をすることで、後の合成や仕上がりのクオリティが俄然上がります。人がきちんと考えてないと良い画ができないのです」と、映像制作における下準備の重要性を山内氏は語ってくれた。

▼スケジュール

7月末の企画決定から納品まで3ヶ月程度の期間はあるが、実際の映像制作は1ヶ月程度。海外のサッカー選手を起用しているため、試合や休暇の関係で撮影時期の調整が難しかったり、現地のイベントでロケの期間が制限されたりと、国内のロケとは異なったスケジュール感となっている。なお、ミラノロケは3回にわたって行われた

▼プリビズ
本番撮影前に詳細な内容のプリビズが制作された。ロケ前の資料集めと絵コンテ、そして1回目のロケハン結果を基に、完成版のCMとほぼ同じカメラワークや演技で制作されている。

舞台となる広場や道などの大きさも実際のロケ場所と同じスケールで作成されている。基本的にロケでの実測やGoogle Mapを参考にスケールを合わせているが、ゴールのカットに使った施設は新しくまだGoogle Mapに詳細が掲載されておらず、地形も複雑に傾斜していたため、実際のロケ場所の再現に苦労したという。キャラクターの演技はモーションキャプチャが使われており、選手撮影時の参考にされている。なお、この時点ではフィリッポ・インザーギ監督の出演は確定していなかったので、女好きの選手がレフェリーと写真を撮る姿に皆が呆れるというオチだったとのこと

上記はその完成画

同様に、ヘリコプターのシーンのプリビズ

完成画

▼ロケハン


プリビズ制作や撮影プランを構築するために行われた1回目のロケハンでは、膨大な量の写真が撮影された。市街地では道に埋め込まれている石材のサイズまで計測され、プリビズやCG背景制作の資料として役立っている

▼ライトスタディ


本作のロケ撮影では、選手の実写プレートと背景の実写プレートの光の方向をどのように合わせていくかがポイントとなった。ロケ撮影の香盤を間違えてしまうと光の方向が不揃いになり、選手と背景の合成作業に影響が出てきてしまう。そこで、分刻みの詳細な香盤表を作成するために、時間帯のちがいによる日照方向の変化を確認するため、現地のスタッフが同じ場所で30分ごとにリファレンスを撮影し、太陽の動きを検証するライトスタディなどの素材が用意された

▼撮影の下準備

プリビズを基に作成されたカットシート。カットごとに、ロケ場所、登場する要素、カメラワーク、背景合成方法などが細かく具体的に記されている。このように詳細なリストを作成してカットを分析することで、時間に制約のあるロケ撮影を円滑に間違いなく行うことができるのだ

カットごとに作成された撮影ボード。カメラのレンズ口径からカメラ設置時の高さ、角度などの指示が詳細に記されている。選手と背景がまったくの別撮りであるため、非常に重要な情報だ。なお、本番撮影では想定していたものとは異なるカメラでの撮影となり視野が変わってしまうこともあったが、後調整することで乗りきったという。CG制作から撮影仕切りまで対応できるスキルをもったスタッフならではの対応だ

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