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空撮&VR撮影機材に注目!!写真&カメライベント『CP+ 2016』イベントレポート

空撮&VR撮影機材に注目!!写真&カメライベント『CP+ 2016』イベントレポート

VRコンテンツの素材撮りに「使える」360度カメラ

今年はVR元年と言われ、いよいよ「Oculus Rift」や「PlayStation VR」、Valve「Steam VR」に対応する「Vive」といったHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が発売される。

新ハードへの期待感から、大手ゲームパブシッシャーからインディまで、多種多様なコンテンツが開発されている今、開発者を悩ませているのは「360度全周囲見渡せてしまうこと」ではないだろうか。

もちろん、それがVRの最大の特徴であり没入感の源泉なのだが、プレイヤーが自由にカメラを操作できるゲームを除いては、今まで作る必要のなかった部分まで用意しなければならないことを意味する。そこで、製作するVR空間のうち遠景に相当する部分を360度カメラで撮影して、画像変換、加工を経てスカイドームに貼り付けてしまうといったアプローチが考えられるだろう。遠景を作成するコストが削減できるほか、キャラクターや近景にポリゴン予算を大きく割くことができフレームレートの維持にもつながる。

今回出展されていた製品で、この用途にいますぐ使えそうなのは、昨年10月にすでに発売されているリコーの「THETA S」だ。背中合わせに設けられた2つのレンズからは、最大5376×2688サイズの画像が得られるため、加工前の素材として実用レベルと言えるだろう。価格も、実売で4万円前後と気軽にテストできる価格帯に抑えられている。

RICOH THETA S:https://theta360.com/ja/about/theta/s.html

一方で、撮影したそのままの状態で、360度見回せる動画を見せるといった映像コンテンツの場合、いわゆる「VR酔い」の問題もあって、手振れ補正のない「THETA S」ではなかなか厳しそうだ。とはいえ、会場に多数出展されていたスマートフォン、アクションカメラ用のハンディなスタビライザーを併用したうえで、ポスト処理でもソフトウェア的に補正してやれば、意外と視聴に耐えるかもしれない。

▲現在のところ、民生用機として、もっとも容易に入手できるのが「THETA S」。エンドユーザーレベルで全周囲見渡せるVR写真を撮影することができる

▲リコーブースには、サムスンから昨年12月に発売された「GEAR VR」でVRコンテンツを体験できるコーナーを設置

「CES2016」に引き続いて参考展示ながら、4K動画が撮影できると発表されているニコンの「KeyMission 360」も、「THETA S」と同様、2つのレンズで全周囲をカバーする360度カメラだ。アクションカメラとしてのコンセプトを強調しており、会場には多彩なマウントアクセサリと共に、自転車に乗るマネキンに展示されていた。

発売を今春としているものの、詳細なスペックや価格については、CP+でも発表がなかった。静止画像も「THETA S」を超える解像度となる可能性が十分にあるため、現時点ではニコンの発表を待ったほうがいいかもしれない。

▲今春発売予定のニコン「KeyMission 360」。360度撮影が可能なアクションカメラとして、マウント以外にもリモコンや水中用ハウジングをラインナップ

▲アクションカメラの代名詞ともいえる「Go Pro」に220度、250度、280度の魚眼レンズ「Entaniya Fisheye」を取り付け、VRカメラに改造するキットもEntaniyaブースで展示されていた。「Go Pro」を6台、16台と組み合わせるシステムよりは遥かに手軽で安価だ

実のところ、今年のVR HMDのリリースラッシュを当て込んで、エンドユーザーでもVRコンテンツが手軽に撮影できるカメラが発表されるのでは、と期待して会場に足を運んだのだが、残念ながらVR用途を打ち出したカメラの展示は、ごく少数であった。HMDという新しいハードウェアの普及には、ゲーム以外のコンテンツの拡充も重要だ。エンドユーザーが自分で写真や動画を撮って楽しめるという要素が、スマートフォン普及の鍵となったこともあり、VRにおいてもカメラメーカーに同様の動きを期待したい。

TEXT&PHOTO_谷川ハジメ(トリニティゲームスタジオ)

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