Topic4:可動用データ作成
様々な要素を考慮して関節を追加する
DAはもともと肘・膝の可動はしない前提で制作が進んでおり、その仕様でイベント展示もしていました。しかし、様々なイベントで多数のユーザーにDAを手に取ってもらったところ、「肘・膝の可動」や「ペタンコ座り」を可能にしてほしいという要望が多かったため、最終的に仕様に盛り込むことになりました。
この関節の追加というのが少々難題で、単純に関節を入れ込めばOKというものではなく、量産コスト、強度、保持力、可動範囲といった様々な要因を考慮して最大の効果を得られるように設計していかねばなりません。特にコストのことを考えると関節は共通で使い回せるようにしたいので、両部位でしっかりと使えるよう調整しています。8cmという小さなサイズの中でできる限りのことを詰め込みました。
▲可動させる必要が出てきたため、関節パーツを配置できる部位をまずデザイン画上で検討します
▲コストのことも考えつつ、簡素なパーツ構成で最大の可動を確保できる関節形状と位置を模索しながら関節を配置していきます
▲小スケール、簡素な構成の中でも試行錯誤の末、バランスを崩すことなく要望通りのポージングが可能になりました
Topic5:共通規格による武装と素体の設計
武装の自由自在なカスタマイズ
ここまで素体部分について説明してきましたが、DAはこれに武装が取り付けることで、ひとつの商品として仕上がります。この武装は、共通規格のジョイントによって素体に取り付けられるよう設計しています。ジョイントを共通とすることによって、様々な武装の組み合わせが可能になり、想像以上の自由なカスタマイズが行えるようになります。
つまり、「自分だけのDA」をつくることができるという大きな強みが生まれました。まずは難しいことを考えず、格好良い感じ、かわいらしい感じと自由にパーツを組み替えてみて、自分だけの小隊を作って楽しんでもらえればと思っています。
▲DAは素体各部に、武装を組み付けるための穴が共通規格にてデザインされています
▲穴の形状を各パーツ共通にしていることで様々な組み換えが可能となります
▲実際にイベントにて展示された組み換えの一例。パーツの取り付け方によってこのような「自分だけのDA」をつくることができます
Topic6:業界初!可動フィギュアの無料配布への挑戦
素体3Dデータ配布による可能性の提示
DAはフィギュアの販売に留まらず、業界では初めての試みとなる素体3Dデータの無料配布も計画しています。無料配布版は肘・膝の関節をオミットした状態での提供ですが、これはまず第一に出力時のデータの取り回しやすさを考えてのものです。続いて、近年個人向けの3Dプリンタが普及拡大しているとは言え全てのユーザーが3Dプリンタを所持しているとは限らないため、出力代行サービスを利用した際の造形費も考慮しています。
しかし、肘・膝の関節以外の仕様は商品版と同等であり、DAの製品としての発売時期はこの記事の執筆現在未定となっていますが、無料配布版は2015年12月の配布開始を目標として鋭意準備中です。設計したわれわれとしては、商品版に先駆けて無料配布版をどんどん立体出力してもらって、オープンソースならではの自由なアイデア、モデリングを楽しんでいただきたいと考えています。
▲ダウンロード版におけるDAのパーツ構成。肘・膝の可動はオミットされていますが、もともとの製品における仕様ですのでご安心ください!
▲無料ダウンロード版のメリットを簡潔にまとめてみました。バンバン出力して遊び倒してください
▲ダウンロードした素体を使ったオリジナルカスタマイズの一例。DAはこのようなユーザー発信のカスタマイズを奨励しています
<staff>
映像制作をメインに秋葉原で活動中。デジタル原型やグッズの企画提案等、映像以外のものづくりにも積極的に取り組みながら業務の幅を広げております。若い社員が多いので、これからも様々なことに挑戦したいと考えております。また、今年の9月より3Dプリンタを社内に導入したので今まで以上に原型業務にも積極的に取り組んでいく予定です!
www.icrea.co.jp
<information>
PVC製塗装済み可動フィギュア
「DESKTOP ARMY」
全高:約8cm
発売元:株式会社メガハウス dt-a.jp
TEXT_ 市川寛大(株式会社イクリエ)