>   >  ドローン元年となるか!国内外のドローンが集結!日本初!民生用ドローンイベント「Japan Drone 2016」イベントレポート
ドローン元年となるか!国内外のドローンが集結!<br>日本初!民生用ドローンイベント「Japan Drone 2016」イベントレポート

ドローン元年となるか!国内外のドローンが集結!
日本初!民生用ドローンイベント「Japan Drone 2016」イベントレポート

<3>ドローン業界の雄DJIと韓国製の競技用ドローンも出展

前述の2社に対して、2月の「CP+ 2016」と比較して、おとなしめのブースを構えていたのが、業界最大手のDJIだ。

ブースには、「CP+ 2016」時点では発売されていなかった、同社の最新機種「PHANTOM 4」も展示されていた。同機は、映像の送信可能距離が「PHANTOM 3」の2kmから3.5kmへと伸びている。また、バッテリー容量も約20%増の5350mAhに強化されており、その結果フライト時間は5分伸びて28分となった。最大飛行速度も毎秒16mから20mにスペックアップしている。カメラユニットの性能は「PHANTOM 3 Professional」とほぼ同等で、改良のポイントは「映像の歪みを36%、色収差を56%まで減少させた」というレンズと、画角47度のフルHD1080P動画を120fpsのハイスピード撮影可能という機能のみにとどまる。もっとも、空撮にとって重要な機体の安定性は、新しいビジョンポジショニングシステムの搭載で、水平方向のホバリング制度が±0.3mと劇的に改善している。普及価格帯の製品として、いよいよ成熟してきたといえるだろう。

現時点の公式ストア価格では、「PHANTOM 3 Professional」が予備バッテリー付きで139,900円に対して「PHANTOM 4」が189,000円と、「PHANTOM 4」のほうが35%ほど高価だ。無視できないスペックアップもあって悩ましいところだが、ドローンでの空撮がどんなものなのかを試す目的なら「PHANTOM 3 Professional」が狙い目だろうか。

広範な利用用途が見えているなら、本格的なプロユースにも使える「Inspire 1 PRO/RAW」以上ということになるだろう。スペック上の機体安定性は、後発の「PHANTOM 4」が勝るものの、「Inspire 1 PRO/RAW」にはマイクロフォーサーズ規格のイメージセンサーを採用するカメラユニットが搭載されている。空撮する映像ソースの画質がいいに越したことはない。飛翔後に機体が変形し、カメラのフレーム内に足が入らないようクリアランスを取るのも大きな特徴だ。ブースにアテンドしていた担当者に話を聞くと、「やはり高品質な映像ソースを得るには、「Inspire 1 PRO/RAW」に分があり、価格に見合った結果が得られる。50万円以上と決して安くはないが、プロなら手の届く範囲の価格ではないか」とのコメントが得られた。

▲DJIブースの模様。DJI公式サイト:http://www.dji.com/jp/

  • ▲DJIの最新機種「PHANTOM 4」はハイアマチュアからプロ用エントリーモデルとして最適

  • ▲「Inspire 1 PRO/RAW」は、機体の工夫、ジンバル、カメラユニットすべてが「PHANTOM」より1グレード上

中国勢とは毛色が異なるレース競技用のドローンを展示していたのは、韓国のDROGENだ。空気抵抗を意識したキャノピーが採用されており、余分なペイロードを必要としないため、機体も700g前後と軽い。展示されていた同社のハイエンド2機種のうち「LOBIT 320R」は130km/h、「LOBIT 300GT」は100〜120km/hのスピードが出るというから、並みの電車や車より速いということになる。こちらは、純粋なホビーやその延長としての競技用ということで、往年のラジコンのイメージに近い。

とはいえ、速さのみを追求した機体なのかといえば両機種ともそうではない。スペック表によると1/3インチ700TVLとあり、機体前面のカメラからD1(720x480)か960H(960x480)程度の解像度で撮影できる。低高度を時速100キロ以上のスピードで飛行するドローンからの撮影素材は、解像度的にやや厳しいものの、視聴したときに得られる感覚的なスピードは相当高速だと思われる。シチュエーションによっては活用可能な撮影素材が得られるのではないだろうか。価格は、韓国の公式ショップで、それぞれ59万9000ウォン(約5万8000円)、49万9000ウォン(約4万9000円)と、大人のホビーとして十分手の届く範囲に収まっている。日本の代理店が決まっているとのことだが、日本での販売価格もそれほど大きく変わらないのではないかと思われる。

▲DROGENブースの模様。DROGEN公式サイト(韓国語のみ):http://www.lobit.co.kr/

  • ▲DROGENの競技用ドローンラインナップ。本稿で紹介したモデル以外にも「LOBIT 100F」や「LOBIT 220」といった廉価モデルも展示

  • ▲「LOBIT 300GT」は100〜120km/hのスピードが出る機体で、競技ドローンによるレースはエキサイティング

冒頭でも触れたように、現在の日本のドローン市場は実業がメインで、一言で「空撮」といっても、その意味するところは目視に代わる建築物の検査や土地の測量、はたまた農薬の散布といったものが想定されている。そのため、今回の「Japan Drone 2016」では、特に日本のメーカーにそういった目的を主眼に置いた製品が多い印象だった。状況把握だけなら、そこそこ及第点レベルの画像、映像が得られれば良く、測量では精度の高い測距に主眼がシフトしてしまう。CG映像制作のニーズを満たすような撮影素材の美しさを追求した製品は、いわゆる日本のものづくりでは、どうしても後手に回ってしまうのだろう。

ドローンを利用するユーザー側の立場からいうと、ドローンの製造開発元が、日本の会社であろうと中国の会社であろうと、目的を達成するために必要十分な能力を備えてさえいれば、あまり関係がない。ただ、日本のドローン企業が、出遅れてしまったがために、政府や地方自治体の補助金が落ちやすかったり、製品価格が高止まりしそうな業種業態のニーズに傾倒し、汎用ドローンのメインストリームたる市場で競争しうる製品を開発して、中国企業とシェア争いをしながら市場を広げようとしないことに対しては違和感を感じる。

もう市場の雌雄は決していて時すでに遅し、というならば、政府や地方自治体が、製品の最終工程を担うメーカーや、農業利用のための購買に補助金を出す必要はないように思える。代わりに部品メーカーに補助金を出し、補助金を受けた日本企業は部品のサプライヤーに徹して、製品としての表の顔は中国企業に任せても良いのではないか。そうすれば、ユーザーは機能的にさほど差異がない国産の高いドローンを買う必要はなくなるし、中国メーカーの製品を買うことで日本の部品メーカーも潤うのだから、産業育成のための税金投入効果も高いのではないだろうか。「Japan Drone 2016」は、そんなことを考えさせられる1日となった。

  • ▲競技用ドローンのスピードレースも開催。実況席にお邪魔してパシャリ

  • ▲展示会場すぐ隣のレース会場に詰めかけた観衆。安全ネットにぶつかり絡まったままのドローンも

TEXT_谷川ハジメ(トリニティゲームスタジオ

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