>   >  なぜゲームクリエイターになりたいのか? ポートフォリオJAMを通して考える「駿馬 NAGOYA DAI-KAIKOU『大邂逅』」レポート
なぜゲームクリエイターになりたいのか? ポートフォリオJAMを通して考える「駿馬 NAGOYA DAI-KAIKOU『大邂逅』」レポート

なぜゲームクリエイターになりたいのか? ポートフォリオJAMを通して考える「駿馬 NAGOYA DAI-KAIKOU『大邂逅』」レポート

企業紹介

午後からはイベントに協賛し、審査員も務めた三洋物産・ツェナワークス・ドリコムで、各々の担当者から会社紹介が行われた。エリアごとに分かれた説明会では、会社概要や主力タイトルの説明などに加えて、インターンなど就職活動につながる情報や、会社での働き方、職種問わずの質疑応答などが行われた。学生たちにとっても、企業パンフレットの内容を考えた後だけに、こうした会社の説明を、また違った角度で捉えることができたように感じられた。

●三洋物産

ロングセラーを続ける『海物語』シリーズを筆頭に、パチンコでシェア30%を占める業界最大手。本社を名古屋に構え、オリジナルタイトルとIPタイトルをバランス良く開発している。「インターンに参加することで、ポートフォリオをじっくり見てもらえる。企業側も親心のようなものがわく」と強調。10月19日に名古屋、11月2日に東京で開催される自社インターンの告知もなされた。
www.sanyobussan.co.jp

●ドリコム

『みんゴル』などスマホゲームでIP戦略をとるドリコム。「with Entertainment」をモットーに、ユーザーの期待を超えたモノづくりを進めている。毎年10名程度の採用を予定しており、プログラマー向けには2週間、ゲーム企画向けには3日間のインターン、アーティスト向けには1日のワークショップを実施しているという。入社後は1ヶ月間でアプリの企画からリリースまでを行う、グループワークでの新人研修も実施している。
www.drecom.co.jp

●ツェナワークス

コンシューマからスマートフォン向けまで幅広く開発を行なっている同社。社員数も数十名規模と、高い技術力とアットホームな社風がもち味だ。通年採用を実施しており、インターンも随時受け付けている。地方の学生に対して、交通費や滞在費の補助制度もあるとのこと。会社説明の大半は参加者からの質疑応答に充てられ、応募作品の形式や1日の働き方など、様々なディスカッションが行われた。
www.zener.co.jp

KAIKOUトーク

三洋物産の木村 修氏・ツェナワークスの笹平大介氏・ドリコムの人事担当者を回答者に迎えたパネルディスカッション「KAIKOUトーク」も行われた。興味深いやりとりが行われたので、内容を抜粋して紹介する。

ファリアー馬場保仁氏(以下、馬場):学生の印象は?

ドリコム人事担当者(以下、ドリコム):最初は大人しい印象を受けたが、グループワークの後半から付箋が飛び交い、自分なりの意見が言えるようになっていった。その変化が印象的だった。

三洋物産・木村 修氏(以下、木村)いくつかの学校でセミナーも行なっているが、そのときと比べて真剣度がちがっている印象を受けた。そろそろ就活について考えないといけないといった具合に、皆さんスイッチが入っているようだ。

ツェナワークス・笹平大介氏(以下、笹平):いよいよ、うちの娘よりも下の世代が就活する時代になってきたと実感した。今回の課題は起業がテーマで、本当に難しかったと思う。皆さん自分なりに考えて発表していて、今後が楽しみだ。

馬場:プレゼンテーションの最終講評を聞きたい。

木村:中間発表のときは「大丈夫かな」というチームがほとんどだったが、一晩で必死につくり上げてきてくれた。すごく成長していると思う。惜しむらくは、全体の整合性が不十分なチームが多かったこと。開催前の1時間で資料を確認して、整合性を取ることができれば、100点がもらえたと思う。

ドリコム:どのチームも自分たちなりにつくりきっていた。中途半端ではなく、つくりきることが大事。社会に出たら納期がついて回る。そこを意識したものづくりを行う力が少しはついたのかなと思う。

笹平:「読み手のことを考えて書く」ことに苦労していたチームが多かったのではないか。仕事でも「相手の思考をコントロールするような書面にしろ」と良く言っている。自分の企画を通すための書類と、クライアントから仕事をもらうための書類では、書き方や順番が違う。次はもっとわかりやすく、伝わるような資料をつくれるようになってほしい。

馬場:参加者のプレゼンを聞きながら、ゲームはすごく人を救っているんだなと思った。その一方で、ゲーム以外の普段の生活で感動していることは何か?も知りたくなった。自分は「いつもより1つで良いから新しいことに感動できる自分でありたい」と思っている。実際、ゲーム業界には趣味人が多い。皆さんの趣味は何?

笹平:昔から釣りを続けている。しばらく忙しくてできなかったが、最近また楽しむようになった。

木村:毎年新しい遊びをやっている。昔ハマっていて、その後止めてしまったことを、改めて遊びなおしてみるなどもしている。長く人々に楽しまれているものには、必ず理由がある。自分で遊んでみて、それを分析するのが楽しい。

ドリコム:自分の家のまわりの、良く知っている道を散歩するのが好き。いろいろな人と会う仕事なので、いろいろなことを発見できる自分でありたいと思っている。

馬場:欲しい人材像について教えてほしい。

笹平:技術よりも人柄重視で、その人と一緒に仕事をしたいと思える人を採っている。スキルは入社後にいくらでも教えられるし、まったく新しい技術が生まれて、それが主流になることもあるので、学生に求めてもしかたがない。ゲームをつくりたいという熱意をもっている人と仕事をしたい。

木村:遊技機は大人しか遊べないが、高齢者まで幅広く遊ばれている娯楽でもある。自分の両親や祖父母にも楽しんでもらえるような遊びが考えられるような人が理想。とはいえ、なかなか難しいと思うので、新しい遊びをつくれる人と一緒に仕事をしたい。

ドリコム:会社的には「真摯であること」、「変化に挑戦できること」、「本質を捉えること」を上げているが、結局は「ユーザーが遊んでいるときの顔が思い浮かべられるか」だと思う。それができれば先の3つも必ずできる。特に弊社はIPモノが多いので、ファンを想像できるか否かが重要。

馬場:新卒の育成方針について教えてほしい。

ドリコム:入社後2ヵ月間、アプリ制作などの新人研修を行い、6月から現場に入る。その後も1年目の間はメンターをつけて育成し、2年目から主力として活躍できるようにしている。実際にエンジニアリーダー、3年目から主力ゲームのディレクターやプロデューサーになる者もいる。全体的にフラットな組織体系で、どの部署の誰に話を聞いても良いと徹底している。

木村:3年前から新卒の採用に力を入れるようになった。メーカーとして新しい遊びをつくってヒットさせるには、起業家マインドが必要で、そのためには生え抜きを育てなければ上手くいかない。我々は会社から多額の開発資金を投資してもらい、その何倍にもするのが役目で、かなりハートが強くないとできない。そうしたビジネスが一緒にできるような人材を目指して育成をしている。

笹平:社会人研修はするが、現場に出て、現場に触れることが一番大切だと思っているので、メンターをつけて入社した翌日から現場に投入する。会社の規模が小さいため、教えるのではなく、自分で触れてもらうほうが効率的。OJTだけに任せるのではなく、四半期に一度、面談する機会なども設けている。

馬場:インターンの受け入れなどは行なっているか?

笹平:通年採用で通年インターン募集をしている。学校の単位を認めるものと、アルバイト型の両方を行なっていて、内定前も内定後もインターンができる。地方の学生も交通費や滞在費などについて相談してほしい。自腹で来いとは言わない。

木村:短期のワークショップインターンは行っているが、長期の就業体験的なインターンの受け入れはしていない。内定後は月に1回何かしらの行事や、翌年のインターンのサポートなどをしてもらっているが、学生のうちは様々な体験をしてほしいと思っている。そのためアルバイトも弊社以外で行うことを推奨している。

ドリコム:IPタイトルが多いためその時々で受け入れが変わるが、希望者については内定者アルバイトを受け入れている。最近あったのは、自分たちでボードゲームをつくったので、社員の人に遊んでもらって感想が聞きたいというもの。内定前の学生でも、自分の体力が続く限り見るようにしている。

会場から質問:ゲームの楽しさは人によってちがう。皆さんの「楽しい」を教えてほしい。自分の「楽しい」と比較したい。

木村:他人の「楽しい」について聞くよりも、自分自身がどんなときに楽しいと感じるのか考えて、それを整理して、友達と比較して、分析してみると良い。それによって自分自身が見えてくる。ただ、最終的には自分の価値観しか頼るところはないと思う。

ドリコム:自分も同じで「楽しい」を「何となく楽しい」で済ませずに、分析することが大事。その上で他人の「楽しい」を知りたいのであれば、人気コンテンツを体験したり、人気スポットに行ったりして、比べてみると良い。

笹平:ものづくりが好きでゲーム業界に入った。プラモデルも、料理も、ゲームづくりも、何でも好き。ただ、つくるだけではなくて、つくったものに対して他人から感想が返ってくることが総じて楽しい。そんな風に自分の「楽しい」を分析して、他人と比べてみてほしい。

会場から質問:ゲーム以外のことも体験したいが、なかなか時間がとれない。1万円以下の予算で楽しめる、ゲーム以外のオススメの娯楽について教えて欲しい。

笹平:できることは何でもやってほしいし、忙しいことを言い訳にしてほしくない。友人と徹夜で飲んだり、ゲームをしたりするのに、時間がないことを言い訳にしちゃう子がいると、おかしくないかな?と思ってしまう。その上で自分が嫌いなこと、興味がないことに積極的に触れてほしい。自分も一人芝居、ウィンドウショッピング、嫌いなジャンルの映画などに触れるようにしている。

木村:6,000円あったら馬場さんのように乗馬体験ができる。馬にまたがると視点が高くなる。逆に視点が下がる例で言えば、カートレースもできる。好きなゲームの題材になっていることを現実でやってみるのも良いかもしれない。ネットで人狼をするのが好きなら、実際に人狼をやってみるとか。「1万円あったら何をしよう」リストをつくって、上から順番に制覇していくと良い。

ドリコム:19年新卒への入社前課題が「これまで触れたことのないエンタメを体験する」というもの。歌舞伎や能を見に行ったり、京都で舞妓体験をしたりした学生もいた。普段と違う体験をすると、新しい発見がある。

馬場:前職では毎週、メンバーに各自の趣味についてプレゼンテーションをしてもらう時間を取っていた。ときにはそれがきっかけになって、みんなで体験したりもした。そんな風に最初は熱心に説いてくれる人と一緒に体験するのが良いと思う。クリエイターは人から変わっていると思われたいところがある。しかし、人と同じ体験を踏まえた上で、ちがったことをやるのが良いと思う。

最後に「自分が好きな道を究めるのか、好きな道を多少あきらめてでも、就職するのが良いのか」という質問があった。これに対して笹平氏は「ちょうど一昨日、娘と同じ話をした」と前置きした上で、「父親の立場でいえば、自分の好きにしたら良い」と述べた。「自分の好きなことだけを選択したら、かなり厳しい責任がついて回る。そのかわり、就職すれば好きなこと以外も求められるが、ある程度の収入が保証される。だからこそ好きにすれば良い」。

ちなみに「好きなことだけをしているように思われるかもしれないが、自分もゲーム業界に入って、好きなゲームだけをつくって生活しているわけでは、決してない」と補足した。それでも笹平氏が仕事を続けているのは、特定のジャンルやタイトルではなく、ゲームをつくること自体が楽しいと思えるからだ。「特定のジャンルをつくるのが好きという気持ちが、自分には良くわからない。もしそれを求めるなら、かなり狭き門になる。その覚悟があるなら、突き進めば良い」。

また木村氏は「会社で働いていても、自分の好きなようにつくれるチャンスはいずれ来る。ただし、それまでは修行の時間。早く『好きにつくって良い』と言われるよう進むことが、多くの人にとって幸せに近づく方法だと思う。ただし、中には自分のやりたいことだけをやって生活できる人もいる。その可能性を否定するものではない」とコメント。ドリコムの人事担当者は「なりたい自分になるために、何が必要か分解できれば、嫌なことでも必要性が見えてくる」とした。

馬場氏は「結局はお金の重み」だとして、精神の安定を得る材料のひとつになるのが収入だとした。もちろん、お金がすべてではないが、お金がないとできないことが多くなり、且つ、心が荒む......苦笑。また、奨学金を得て進学している学生に対して(会場でも半数の手が挙がった)、「奨学金は未来の自分からの借金」だとして、奨学金を返済するために就職するという考え方もあるとした。「奨学金を返しながら、会社で働いてスキルを磨き、返済し終わったところで、自由に選択すれば良い。その頃には、それだけのスキルや人脈もついてくる」。

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