<3>MARIによる3Dテクスチャリング
続いては、テクスチャリングについて。主にMARIで作業を進めたそうだが、まずは『Saya』のひとつ前に制作した『Courir』(クリール)を例に、ボディスーツに対する金属質のテクスチャメイキングが紹介された。
『Courir』(クリール)。本作も海外のCG系Webメディアから高く評価された
作成したいオブジェクトがどのような素材で出来ているのかのみならず、それがどういう環境でどのような使われ方をするのか等、オブジェクトの持つストーリーまで考えて汚しや劣化させることがリアリティを感じさせる秘訣とのこと。
続けて、Sayaのソックスの質感を例に取り、オーガニックな質感においてベースとなる編み込まれた糸だけでなく、その表面の毛玉感や毛羽立ったFurの質感等、そのマテリアルが構成される要素を分解してそれぞれの要素をひとつずつ表現していく様子を語った。
編み込まれた糸の表現は縦糸に赤、横糸に緑、下地に青で着色したタイリングテクスチャを作成して、MARI 3.0の新機能であるノードワークフロー(Exposed node graph and Gizmos)を用いて、それぞれの色味を抽出して高低差の量を探っていくことでリアルタイムにマテリアルの立体感を探っていけるワークフローが採用された。
MARI 3.0によるノードワークフローの作業例
当然ながら徹底的に作り込まれたのは、モデル(アセット)だけではない。リギングにおいても人の構造を全て盛り込まれて制作され、ベースとなる骨のモデルを作成し、その上からMaya Muscleを使用して全ての筋肉をひとつずつ丁寧に仕込んでいったという。このようにすることで正しい弾性と伸縮を持ったより生き物らしいアニメーションが可能になったとのこと。
Maya Muscleの作業例
本講演時点におけるSayaのボディ用リグならびにオブジェクト
フェイシャルに関しても同様に表情筋をひとつずつ作っていこうとしたが、これだけ複雑なマッスルを仕込んだ時点でかなりデータが重くなってしまったそうだ。そのため、ボディ以上に複雑に入り組んだ表情筋に関してはボーンとスムースバインドによる制御方法を模索・研究中とのことであった。
本講演時点におけるSayaのフェイシャル