>   >  漫☆画太郎の超問題作が奇跡の実写化! 映画『珍遊記』のVFX(スタジオ・バックホーン)
漫☆画太郎の超問題作が奇跡の実写化! 映画『珍遊記』のVFX(スタジオ・バックホーン)

漫☆画太郎の超問題作が奇跡の実写化! 映画『珍遊記』のVFX(スタジオ・バックホーン)

<Topic2>使いどころを厳選して笑いを生む3DCG

正統派のCG表現でオチとのギャップを強調

本作は合成ワークもさることながら、3DCGの使いどころを絞って笑いの演出に活かしているのが特徴的だ。「劇場でご覧いただければわかりますが、普通のシーンではあえてチープ感を出し、バカバカしいシーンほどガチに3DCGで挑むことで、ギャップをつけてギャグの面白さを演出しているんです。それが結果的には全体のVFXの作業量を抑える効果にもなっていますね」とCGディレクター北守正樹氏は語る。
3DCGの制作にはMaya 2015、トラッキングにはシーンによってはboujou、合成全般にはAfter Effects CS6を使用。爆発やエネルギー波の放出エフェクトにはFumeFXを採用し、なるべく正統派とも言えるCG表現に力を割いて仕上げている。例えば本編に登場する魔法使いが操るエネルギー弾「メラメ~ラ」や見えない壁を作る魔法「ベルリ~ノ」などは、共に1カットだけの登場シーンをつくり込むことでその次のカットのオチとの落差をあえて強調して笑いに昇華している。また、少年漫画的な"気"の表現では、太郎の場合は正統派のCGで地面の小石などを浮かせている反面、敵キャラクターの同様のシーンではCGはCGでもあえて「テグスで吊られたオブジェクト」を浮かしており、わざわざチープに見えるように物理シミュレーションもかけるというネタも仕込んでいる。作品全体ではリアリティの追求よりもインパクトとセンス勝負で一貫したVFX制作を行なっている。

チープさを際立たせる魔法のシーン







炎の魔術「メラメ~ラ」<上段3画像>はFumeFXを使った派手でリッチな炎に仕上がっている。このショットに関しては2D合成などの手法ではなく真面目にVFXとして見映えのあるショットなっているが、この後明らかになるメラメ~ラの本当の姿はぜひ劇場でご覧いただきたい。また最強の壁を作り上げる魔法「ベルリ~ノ」<下段3画像>に関しても無数の壁の素材を組み合わせているが、あとは本編にてその笑いを確認してほしい

Hairシミュレーションによるテグス表現



少年向けバトル漫画でお馴染みの「エネルギーが溜まって地面が割れ、破片が空中に浮かび上がる」という表現。太郎の方は本物として真面目にVFXショットに仕上げている<A>が、敵役が同じことをしようとするショットに関しては、「エネルギーが溜まっている風に見えるがよく見ると糸で吊っているだけ」というギャグをあえて真面目に表現しており、テグスのCGモデルにHairシミュレーションもかけて笑いのリアリティを上げている。<B> はテグスの付いたオブジェクト、<C><D>は合成前、<E><F>はCG素材、<G><H>は合成後

太郎と玄奘のバトルシーン

前半部分の太郎と玄奘のバトルシーンのCG。このようないわゆるCG映えするような派手なカットは直球勝負の3DCGで表現しているものの、全体を通して良い意味で力を抜くCG表現と労力のかけ具合にメリハリをつけることで、作品全体を通したある種の面白さを生み出すように心がけたとのこと

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