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新しい試みによるオリジナルTVアニメシリーズ『ブブキ・ブランキ』の3DCG(サンジゲン)

新しい試みによるオリジナルTVアニメシリーズ『ブブキ・ブランキ』の3DCG(サンジゲン)

BOOST 01
サンジゲン流ワークフロー

本作ではFileMakerを使用し、香盤情報や作業進捗のデータベース化に着手した。スタッフが多くなってきたことでの情報の整理、例えばデータの所在を明確にすることでミスを減らすといった制作管理システムのニーズがあり、現在ではTVシリーズの運用に必要不可欠な存在となっている。

[香盤表]
独自の香盤表で素材と工数を俯瞰する

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アニメーションの映像制作において絵コンテが設計図とするならば、香盤表は設計図から素材や予定工数を割り出した情報を分解した指示表である。本作よりデータベースを使用して制作管理情報をデータ化・みえる化して共有することで、管理フローそのものの進化を図っている。香盤表ではまず制作スタッフが絵コンテからカットの情報を読み解き、1カットずつ登場キャラクターや必要な要素を記入していく。サンジゲンではそれを基にアニメーションディレクターがスタッフの割り振りや工数見積もりといった実務的な処理を加えるという、制作管理の基になる工程だ。従来は表計算ソフトを使用して同じように全部のカットの要素を個別に記入していくケースが多かったが、データベース化することで書式も統一され、複数のスタッフが情報の更新を同時に行える点が大きなメリットになっている

[モデル一覧&モデル詳細]
全体から細部までモデルの状況を把握する

新しい試みによるオリジナルTVアニメシリーズ『ブブキ・ブランキ』の3DCG(サンジゲン)

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モデルの一覧にはキャラクター、プロップ、メカなど種別ごとに登録が可能で、概要と作業工数の見積もり、現在の作業進捗状況がひと目でわかる仕様になっている。細かく項目が分かれているのは、キャラクターモデルを例に挙げてみると、基となるモデルの制作、リギングなどのセットアップ、フェイシャルのパターン作成、パーツごとに作成と、各工程でも並行して作業可能な箇所があるため、別々のスタッフが担当しているケースも多く、細かな進捗の把握が必要になっているのが理由だ。もちろん、発注から予定工数、消費している工数の日数まで自動計算されており、膨大な量のアセットが必要なTVシリーズでは進捗が一度に俯瞰で確認できることも重要な点である。ここから各アセットの情報に紐付いたファイルパスやチェック状況、完成のリリース情報についてマクロからミクロまで深く追跡することもできる点が、データベースによる管理の大きなメリットと言えるだろう

[発注書]
作業発注から進捗管理まで網羅する

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モデリング、アニメーション、全ての工程に関して「作業発注」という段取りを採用していることも特徴のひとつだ。これは社内の作業であっても便宜上「発注」というシステムを使用しており、アニメーションディレクターと制作スタッフが相談して作業を発注し、作業者はその登録されたタスクを受注してステータスを更新していく。もちろん外部のスタッフやプロダクションが参加する場合は制作スタッフが代理としてステータスを更新することで、全ての要素をタスクとしてデータベースに登録し、進捗管理を行うことが可能だ。発注書の中身としては、作業内容はもちろんのこと、参考資料や、担当スタッフの休日予定、チェック担当者の割り当てまで、非常に細かいデータが記載されている。発注したタスクは作業者のPCにポップアップメッセージによって通知され、発注があったことをすぐに確認できるようになっている。また、作業者側は「作業開始」のボタンをクリックすることで進捗記録スタートとなり、データベースに情報が反映されるしくみだ

[チェック&チェックバック]
フィードバックもカバーすることで確実に

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各工程からのチェックに関しても必ず記載を行うシステムになっているが、これは同一のデータベースに情報を全て上げることによって一覧で管理できるだけでなく、あるときは伝票で、あるときは口頭で、といったフィードバック情報のバラつきで起こる情報の確認漏れを防ぐと共に、同じフォーマットで履歴を重ねていくことでチェックの内容自体の把握を明確化させることが目的になっている。また、アセットだけでなくカット数も膨大になっていくため、アニメーションのチェック工程でもこちらのシステムがフル活用されている。例えば個別のカットのステータスを細かく追うことも可能だが、一覧のページからチェックの内容を記載することも相互に記述することもできる。このデータベース機能によって何百というカットのムービーの閲覧からフィードバックの記載まで、ディレクターや管理側の負担を軽減することが可能になっている

[アップローダー]
データのアップロードはツール経由で効率的に

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チェック用データのやりとりにおいても、チェックする側、される側、管理する側と三者がデータの把握がしやすい方法を採用している。まず、作業は発注情報と香盤情報から最新の該当データを読み込んで行い、チェック段階に入った時点で作業者自らがあらかじめ指定されているチェック担当者に見てもらうデータをアップする。このアップ作業ではファイルパスを自動的に添付してデータも送信できるようになっているため、画像やムービーだけでなく3ds MaxAfter Effectsのデータまで、特定のチェックフォルダに送信することが可能だ。そのタスクを受け取ったチェック担当者も文字ベースのフィードバックだけでなく、あらゆる形式のデータをフィードバックできるようになっている。これはビューアで立ち上げるのではなく、あえて該当データのファイルパスの指定をすることで、必要な情報は文字情報だけでなく「何でもやり取りできる」ようにという、業界ならではの仕様になっているのが特徴だ

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© Quadrangle / BBKBRNK Partners

COLUMN
より良いものを生み出すための環境整備

プロジェクト単位での管理情報からスタッフひとりひとりの状況、アセットやアニメーションの進捗状況まで、データベース化したことによるメリットは大きい。表計算ソフトとアナログな情報管理システムだけに頼っていた従来は、どうしても情報の抜けや最新バージョンのデータの所在確認等で管理面でのロスが起こっていた。そこでデータベースに情報を全て移行することで管理負担が軽減され、スタッフ間の意思疎通もしやすくなり、データの差し替え等のミスも格段に減ったという。もちろん、現在進行形で開発継続中であり、高速なデータ転送やコードの軽量化、運用ハードも含め強化を図っているとのことだ。

語弊のある表現かもしれないが、映像業界では決して「派手で目立つ」部分ではないものの、デジタルで何かを運用する場合は当然ながら運営管理もデジタル化して合理化できないと管理コストだけがかかってしまう。それを開発できる環境も重要であり、「オリジナルのツールを開発できる」という資産はデジタルの現場においては非常に強力な武器になる。制作現場とR&D部門が密接な関係を保てているがゆえに地道なベースを構築することができるサンジゲン。無駄な管理コストの圧縮だけでなく、ひいてはスタッフが画づくりにより集中できる環境の提供につながり、デジタルでアニメーションをつくる上での生産性の向上に大きく貢献していると筆者は感じた。

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