BOOST 03
新たな制作技法と作画表現
本作は過去のサンジゲン作品と比べてキャラクター数も多く、シーンもよく変わり、また武器を持っているなど、制作におけるハードルが格段に上がっている。3DCGのさらなる活用と表現力向上のため、技術的にもいくつもの新しい試みが行われた。その進化した部分について一部紹介しよう。
RLAファイルの活用本作では通常よりレンダリングのレイヤー数を減らし、キャラクター1体に対してほぼカラーとラインの2種類のみのレイヤー構成となっている。それを可能にしたのがRLAだ。RLAはファイル出力時のフォーマットで3Dにおける要素を多数含められるが、よく使われるZ深度ではなく、本作ではマテリアルIDとオブジェクトIDを使用している。キャラクターをIDで要素分解してレイヤー数を最小にまで減らした上、Z深度を使用しないためレンダリングも軽い。懸念していた目などのテクスチャマスクで色を分けている部分に使えるかテストしたところ、マスクを切っていた瞳のハイライトなども細かくIDで分けられることがわかり、部分的にオブジェクトの一部が発光する場合にはオブジェクトIDを使用、ジャギーの問題についてはアンチエイリアスのプラグインを使用して対応した
3Dモデルとレンダリング設定
各ID
豊かな表情づくり生き生きとした表情をつくるため、キャラクターの表情には全キャラ個別に約80種類もの3Dモーフが用意されている。それに加えバーテックスの移動やポリゴン編集、FFD変型にレタッチとアレンジを加えることで表情をつくっていく。作成する際は、キャラクター性に合った表情となるように表情集<A>を参考にしながらモーフ<B>を作成。大事なのは、誰がつくっても一定のクオリティを保てる基準となるモーフを最初に作成しておくことだという。当然目パチ口パクもあるが、細かいところでは目はテクスチャでマスクを切って色を付けているため、ハイライトや影なども個別に動かして位置を調整することが可能で、横アングルや顔のアオリに対応できるように鼻と顎にはコントローラが仕込まれている。基本的にはモデルの差し替えなども行わず、特殊な表情として、3Dのライトでは再現できない作画のようなフットライトの影用テクスチャマップも全キャラクター分用意されており、マップの切り替えによって自動でフットライトになるように仕込まれている。<C>はフットライトの影の入り方を指示したもの
線の作画的アレンジPencil+では線に強弱をつける、作画で言う入り抜きの設定をすることができる。しかしサンジゲンはこれだけでは満足せず、3DCGのレンダリングで入り抜きの設定をした線を出力した後に、撮影工程でさらに強弱のメリハリをつけるべく、After Effectsの「チョーク」エフェクトによって2ピクセルほど太らせる処理が加えられた
撮影処理を施した完成画。なおアップ時にはよりいっそうメリハリを出し、さらにラフエッジなどでの強弱も追加される。この処理によって作画のタッチを再現し、見ている人に印象づけることが可能だ。実際に見てみると、何も処理されてない画像では線の印象が薄く、作画の線のような「強さ」は感じられないが、処理後の画像を見ると入り抜きだけではなく線のかすれ具合も再現されており、その粗さによって作画の線のような雰囲気が感じられる
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TVアニメ『ブブキ・ブランキ』
TOKYO MX / AT-Xほかにて放送中!
原作:Quadrangle
監督:小松田大全
キャラクターデザイン:コザキユースケ
制作:サンジゲン
製作:BBKBRNK Partners
bbkbrnk.com
©Quadrangle / BBKBRNK Partners