>   >  日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>
日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>

日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>

<3>ハリウッド商業主義の中で見つけた答えとは


日本のコンテンツが海外進出できないだけではなく、中国のコンテンツが日本を席巻するかもしれない――。国産コンテンツがこれほど豊かな現状では、にわかに信じがたいところだが、それはまもなくやってくると予測される。その根拠は先ほどの人口問題に帰する。今後10年間で日本は5%人口が減少すると見込まれている。コンテンツ産業も衰えていくなかで、物語を映像化する余裕があるかどうかはわからない。だからこそまだ力がある今のうちにひとつでも日本原作の作品を海外に配給して、日本のコンテンツに触れたことがない会社に売り込む必要があると長渕氏は言う。

マンガ大賞を獲った作品の映像化権をすばやく取得し、企画書をつくった長渕氏。だが、ハリウッドは企画書や脚本が飛び交う世界。コネクションがある長渕氏が送っても作品の山に埋もれて反応がないことはしばしばだったという。そこで改めて企画づくりを見直していった結果、ひとつの答えとして見つけたのがローカライズだった。『ポケモン』はモンスターの名前を1体ずつきちんとローカライズしたネーミングをしている。そのように丁寧なクリエイティブがキャラクターを生き生きとさせたという。長渕氏は取り扱っている宮部みゆきのホラー作品のローカライズにおいてもそれに倣い、丁寧につくり進めていった。さらにハリウッドに送る際にももう埋もれさせないようにと考えた。そこでハリウッド世界で、本当につくりたいものをつくれずに葛藤している監督へと狙いを絞った。それに反応してくれたのは長渕氏の知人であったアンドレス・ムシェッティ監督だった。幸運なことに彼の『MAMA』(2013)を宮部みゆきが気に入っており、クリエイター同士が繋がった格好になった。監督が動いたことでエージェンシーも動き出したという。

長渕氏がこれまでのハリウッドビジネスで見つけた答えは、行き詰ったときこそ「クリエイティビティの追求・見直し」と「ターゲットの変更」であったとひとまず結論づけた。


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<4>日本の映像業界に与える影響とは

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