Topic 2 リギング&アニメーション
MotionBuilderとUEで完結するアニメーションフロー
リギングとアニメーションを担当したのは舟橋明宏氏と緑川 武氏。制作工程としては通常の映像制作同様MotionBuilderでアニメーションを付け、UEにジョイント情報を受け渡すという一般的なつくり方であった。作業はキャラクターごとに担当を分けていたが、その中でも舟橋氏がリギングに重点を置き、アニメーション作業は緑川氏が中心となって進められた。全てのアニメーションは手付けによって作成されている。「人物も全て手付けとなったので、その点では苦労しました。重さの表現や、カメラの視線などはこだわった点です」(緑川氏)。通常の映像制作であれば、アニメーションにおいてもMayaがメインツールとなるケースが多いが、今回はUEで出力することが前提としてあるため、Mayaはあくまでもサブツールとして使用することとしてMotionBuilderの方に作業の重点を置き、そこからUEに渡して完結できるワークフローを組んだとのこと。
また、今作の制作において、コラット社内では若手育成という目的も含まれていたため、アニメーションに関する演技指導も力を入れたポイントになったという。困惑や恐怖といったキャラクターの感情表現に加え、主観で見ていることを意識したカメラワークなど、細かくチームでコミュニケーションをとりながら進められた。「ワンカメということでリテイク工数が非常に多くなることがあらかじめ予想されていたので、とにかくスピード感を重視したかった。しかしスピード感をもってやろうと思うと通常のやり方ではクライアントの意向を最後まで汲んであげられない。しかしUEを選択したことで、監督やクライアントの意向によるカメラ調整なども割と早いタイミングでレスポンス良く出すことが可能となりました。さらに、常にファイナルに近い質感で見ることが可能になります。この成果は大きかったと感じています」(米山氏)。
メカのリギング&アニメーション
レイブレード・インパルスとボルトレックスのジョイント構造
コントロールリグ
今作に登場するメカは人物とは異なる4足歩行の上、逆関節の部分がある。その部分はMotionBuilderに関する著書をもつ高野氏にアドバイスを受けながら試行錯誤し、最終的にFBIKを選択したとのこと。UEがスケルタルメッシュをサポートしていることにより、アニメートされたメッシュの取り込みは容易であったようだ。商品カットとしての決めポーズを要所要所に入れながら、一枚画としてどこを切り取ってもかたちになるよう、レイアウトやポージングにはアニメーションチーム一丸となって力を注いだとのこと
Houdiniによるキャタピラのアニメーション
戦車のキャタピラのリギングにはHoudiniが活用された
セッティングはエフェクト担当の神谷拡希氏によるものだ。「Houdiniではノードを繋げてキャタピラを回すことは比較的容易にできます。最初はAlembicキャッシュで読み込ませてみましたが、なぜかアニメーションが遅れ、他のアニメーションとズレが生じるなど問題が発生したため、最終的にはジョイントのアニメーションに変換しました【画像上】。リアルタイムエンジンで映像を出すには、それに適したつくり方をしていかなければいけないというのが今後の課題となりました」(神谷氏)
カメラワーク
「ストーリーの基になる絵コンテは、最初にポイントとなる3枚ほどのラフイメージを描き、街の俯瞰図を基にカメラ位置を描いて、それぞれのポイントを繋いだ指示を出しアニマティクスをつくってもらいました。見慣れている商業アニメのレイアウト感に近づけるよう意識しています。紙に描くような感覚で、レンダリングはトリミングエリアを大きめに出し、フレーミングの整理を行なっています」(高野氏)。最初に作成したアニマティクスは山下氏によるものだ。ここで背景とキャラクターの見え方の面積比を整え、レイアウトを確認し、キャラクターのポージングを決めて、アニメーションの詰め作業へ進んだ
アニマティクスの一場面
上の2つの画像は完成後の画面となるが、ファイナルでは作品の世界観がより伝わるよう、レイアウトのブラッシュアップが行われていることがわかる