魅力の中核を担うモデリングとテクスチャの工夫
クリーチャーズ制作のポケモンの3DCG データは様々なコンテンツで使用されるため、段階を踏んで制作が進められる。その上でニンテンドー3DS ならではの工夫が行われるのだ。
ステップを踏んで進むCGデータ作成
ソルガレオの例
ニンテンドー3DSの解像度は400×240で、実機上での表現はいわゆるローポリモデルとなるが【画像左】、リファレンスモデルの制作と監修が並行して進むため、複雑な制作工程が採られている。まず新規ポケモンのデザインが確定すると、ゲームフリークとクリーチャーズ側でポケモン立体化のミーティングが行われ、細部の形状や各々のポケモンがもつ特徴、発光や変形などのギミック、質感や動きのイメージが確認される。その後リファレンスモデルが作成され【画像右】、ゲームフリーク側の監修が行われる
続いてスキニングを施し【画像上】、ゲームの仕様に合わせて簡易化させたモーション作成用ゲームモデルを作成【画像下左】、これをブラッシュアップさせてゲームモデルを完成させる【画像下右】
これと並行してリファレンスモデルをブラッシュアップさせたリファレンスモデルシーン内ローモデル【画像左】、このローモデルに調整を加えたサブディビジョンサーフェス用モデル(リファレンスモデルシーン内ハイモデル)【画像左】が制作される。なお、リファレンスモデルとゲームモデルでデータがフォークするとモーションなどの流用性が失われてしまうため、できるかぎり同期が可能になるように、本作では両者でジョイント・リグ構造の共通化やジョイントとメッシュの共通化などが、より意識されている。また必要に応じてモデルを同期する際に、リグとモデルのコネクションが自動的に再セットアップされる内製ツールが用意され、効率化が向上している
ルナアーラの例
マッシブーンの例
ポケモンのテクスチャ構成
キテルグマの例
ポケモン1匹の3Dモデルの仕様は『X・Y』と同様で、1匹あたり約1万~2万ポリゴン、一部例外を除いてジョイントは110本まで、テクスチャ1枚の最大解像度は256×512(基本は256×256)だ。テクスチャの基本セットはカラーマップ【画像左上】、ノーマルマップ【画像右上】、影カラーマップ【画像左下】で、ハイライトのかかり方を調整するためにハイライトマップ【画像右下】も併用される。テクスチャの最大数は20枚程度で、UVセットの最大数は3、モーションクリップ数は40となる
タイトルごとに限界突破を続けるシェーディングの工夫
『X・Y』、『オメガルビー・アルファサファイア』に続くニンテンドー3DSで第3弾となる本作。質感の決め手となるシェーダについてもさらなる工夫が施されている。
ソルガレオの発光表現
本作では多数のポケモンを表現する都合上、シェーダは半固定機能の組み合わせのみとし、組み合わせ回数にも上限値が定められたため、ポケモン1匹ごとにシェーダの組み替えが必要となった。トゥーンシェーディ ングを行うことである程度のリソースを消費するため、特殊な表現を組み込む余地がさらに狭まる一方で、タイトルを追うごとに特殊な表現設定をもつポケモンの比率が高まり、腕の見せどころとなる。本作のパッケージを飾る伝説のポケモン・ソルガレオもそのひとつ。太陽の使者として崇められており、エネルギーを解放すると全身が発光するという設定だ。もともと白い体を白く発光させるために、通常時はグレーがかった白色となっている
Maya上と実機上での発光時
ルナアーラのマジョーラカラー
パッケージを飾るもう1匹の伝説のポケモン、ルナアーラ。『サン・ムーン』というタイトルにあわせて、太陽の使者であるソルガレオに対し、「月の使者」としてデザインされたポケモンだ。最大の特徴は全身が角度や光の当たり方で異なるマジョーラカラーになっていることで、環境マップのフェッチにバイアステクスチャをもたせて表現している。また、発光マップはアニメーションが必要なので、マルチUVを使用している
Maya上と実機上の完成データで、ベースカラーはテクスチャではなくコンスタントカラーの紫を使用
ノーマルマップ
もうひとつの特徴である円月状の変形はモデルの差し替えで対応している
トゥーンシェーディング用ノーマルマップの作成
『X・Y』で開発され、本作でも踏襲された独自のノーマルマップ作成フロー。実モデルからそのまま生成したノーマルマップでは細部の構造や歪みが出てしまい、イラストのような滑らかさが出ない。そのため本作ではローメッシュをスカルプトしてディテールを追加するのではなく、専用のモデルをゼロから作成して、そこから頂点の法線情報が転写されている
完成図を見比べると、そのちがいがわかるだろう(左が元の法線マップ使用時、右が完成図)
最後にライトの当たり具合を調整して完成となる