複雑なポケモンの動きを支えるリギング・アニメーション
今作では新たに「歩き」「走り」の移動モーションが全ポケモンに追加された。特殊なギミック設定があるポケモンも多く、スケルトン構造も複雑になっている。
キュウコン(アローラのすがた)のリギング
ふわふわとした尻尾が特徴的なアローラ地方のキュウコン【画像左上】と待機ポーズ【画像下】。尻尾の動きを再現するために、多くのジョイントが入っている【画像右上】。110個程度というジョイント制限により、リファレンスモデルとゲームモデルで別々のジョイント構造となった
ドヒドイデのリギング
周囲がトーチカでおおわれ、防御に優れたドヒドイデ【画像左上】。待機ポーズ【画像下】では正面の2枚が開き、防御時には閉じるという、他に見られないギミックを有している。そのためジョイント【画像右上】も全周を傘のように覆う特殊な構造となった
デカグースの「歩き」と「走り」
待機時は上体を起こしているが、移動時は4つ足となるデカグース
歩行時はペタペタといった感じで移動する
走行時はピョンピョンといった感じで移動する。ヤングースの進化形で、名前の通りマングースなどの小動物の動きが参考にされている
ツツケラの「歩き」と「走り」
アカゲラのように進行方向に対して上下移動しながら飛翔するツツケラ
歩き(ゆっくり飛ぶ)
歩き(ゆっくり飛ぶ)時に比べて、走り(高速に飛ぶ)時は体の上下移動が少なく、羽ばたきもより大きくなっている点に注目
ゲームフリーク側でのグラフィックスの工夫
人物キャラクターやエフェクトをはじめ、ポケモン以外のアセットはゲームフリーク側で作成されている。ここでも制限に立ち向かうための様々な工夫がみられる。
内製ツールによるモーション作成効率化
本作では「ポケモンの世界観をより身近に感じてもらう」というコンセプトの下、主人公をはじめとしたキャラクターの頭身が上がり【画像左】、バトル中にも登場する。そのため必要なモーション数が急激に増加することになった。そこで新たにリグでアニメーションを扱うための専用フォーマットが作成され、データのライブラリ化を行うしくみを構築【画像右】
その上で社内専用の人物拡張型リグ【画像左】の構築や、内製のキャラクターアニメーション自動生成ツールを作成し【画像右】、自動化が図られている。キャラクターのモーション数や動きの方向性のちがいで詳細なタイプ分けが行われ、それに基づいたモーションプリセットを読み分け、必要なMayaのシーンデータを自動で構築・保存していくことで、アーティストが行う基礎データの作成やファイル管理コストを大幅に削減するしくみだ。タイプが異なるプリセットを読み込んでもリグが差分を吸収するしくみで、リグのセットアップもこの工程で自動的に行われる
主人公キャラクターの着せ替え
本作では主人公キャラクターの着せ替えアイテムについて、プログラム側の自動生成でカラーバリエーションを増加させている
カラーテクスチャは色が乗っていない状態で作成【画像左】し、肌用・服用の各マスク範囲【画像右】に対応する部分に対して色を合成、結果を1枚のテクスチャとして生成するしくみだ
ビューア上では生成したバリエーションの確認もできる
FlashとAfter Effectsを用いたエフェクト作成
バトル画面での多彩なエフェクト【画像左上】は、Flashで連番素材を作成した後に【画像右上】、After Effectsで連番配置をし【画像左下】、グロー処理を追加した上で1枚のテクスチャとして作成されている【画像右下】
これらがビルボードで表現されているかたちだ。このほかテクスチャを使用したパーティクル画像【画像上】や、社内シェーダを活用した1メッシュ/1マテリアルのマルチテクスチャも使用されている