3DCG篇 トライ&エラーでキャラクターを磨き上げる
デザインしたキャラクターをいかに3DCGにしていくかを解説します。ドローイングのイラストはあくまで設計段階のひとつで、最終品質は3DCG上で決定します。まず、モデリングですが、語るところがあまりないため今回は省略します。それよりも力を入れたのは、後でリグを使いシルエットや表情をかなり自由に調整できるようにしたこと。それにより、ライティングとポージング、シルエット調整にこだわり「キャラクターの魅力をいかに最大化させる」かに注力しています。3DCGの課題は「出来上がったキャラクター」を磨き上げるトライ&エラーの回数があまりにも足りないこと。それをサポートする研究は最優先事項です。例えば、映画の撮影をイメージしてみましょう。特定のカットが気に入らなければ、何テイクも撮影をし直すはずです。しかし、3DCGは「レンダリング速度」とアニメーションの「フレームレート(fps)」がボトルネックとなり、時間に押されて、1回しかリテイクできなかった......、となることがよくあります。ショウモナイ技術的な理由で美の追求ができないのは悲しいことです。最優先で改善していきましょう。
私はレンダリング後にレタッチしたくありません。3D上で完結させるため、MetaSLを利用してリアルタイムライティングを採用しました。MetaSLはmentalrayシェーダで組み上げたマテリアルをリアルタイムプレビューできるものです。トゥーン系はミリ単位でのライト調整が品質のキモとなります。それをリアルタイムで品質確認できれば、最高の画づくりにのみ集中できます。キャラクターのポーズも何度もつくり直しますし、ライティングも何度も調整し直します。見た目がシンプルゆえに、陰影の形にもかなり気を遣いました。たとえ造形がいまひとつでも、美しく魅せるシルエット調整リグ、カメラアングル、ライティングを早急に見つければ、満足できるかもしれない......。それを叶えるのはトライ&エラーを重ねる「リアルタイム性」です。
1 リアルタイムでトライ&エラー
キャラクターにはmental rayを採用。MetaSLを活用したリアルタイムビューの恩恵を得るためです。様々な制約があったり、微妙に色味や影の形が変わったりしますが、十分です。あくまでプレビュー品質
本番用の素材数は相当量になります
背景と干渉するライトとマスク、被写界深度はRedshiftを採用
2 ビューキャプチャの回数を減らす工夫
アニメーションが24fpsしっかり出るとビューキャプチャの回数が減るため、最終品質へのトライ&エラーの回数を相当量減らすことが可能です。レンダリング後、ライティングの不満を減らせます
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「1_Proxy」とあるのは簡易アニメーション用のレンダーパスです。使うのは箱人間。24fpsを超えるため、大きなながれや複数キャラクターでアニメーション作業するときに利用
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「2_LO」はセカンダリリグを排除し、表情も付けられるモデル。フェイスリグが重いため、24fps出すために顔だけ隠すことも。ここでシルエットの6割確定。なお、袖のまくれ具合はここで手動調整。とにかくビューキャプチャの回数はゼロに近づけたいものです
「3_HQV」は揺れもの&ライト調整用パス。影の形や位置で演出の意味も品質も変わるため、リアルタイムライティングは今後、必須条件だと感じます
3 サポートツール
自分でサポートツールを探し当てるかつくらなければ品質も効率も上がりません。一番苦手分野ですが、ツールをつくってくれたり、スクリプトを教えてくれる仲間がいたため、最低限の用意ができました。例として、フェイスリグ操作&補助スクリプト集、INKライン生成ツール、ポーズライブラリなどを用意しています
ポーズライブラリ
4 七尾シキ
最もコストの高いキャラクター「七尾シキ」。髪、スカート、袖もヒラヒラ動くため服に埋まりやすいのですが、陰影がしっかり出ていることもあって、レンダリングせずに修正するべき箇所が見つけやすいです
リグシステム全体
リアルタイムビュー
※七尾シキのメイキングについては本誌199号『七尾の狐 七尾色』(ニコニ立体 3Dモデリングコンテスト入賞作)の記事にて詳しく解説しています