<2>今年はエフェクトツールに収穫アリ
ソフトウェアのほうに目を向けてみると、規模としては、例年通りの小規模出展ながら、タイムラインベースでエフェクトのアニメーションを制御できるようになるなど、Persistant Studiosの「POPCORN FX」の進化が目立った。以前はスクリプティングによる制御のみと、なかなか玄人好みの仕様で取っつきにくい部分があったが、次第に改善されてきていると言える。今後も、アーティストフレドリーな開発環境を目指すとしており、時期は未定ながら、近い将来のバージョンで、さらにユーザーインターフェイスを改良する計画だとのこと。先ごろ、日本のシリコンスタジオとの協業が発表されたばかりで、シリコンスタジオが日本国内で「POPCORN FX」を販売するほか、同社のゲームエンジンやミドルウェアにも統合される予定だ。日本国内に窓口ができることで、これまで外国のミドルウェアだからと敬遠していた向きにも、比較的導入しやすくなるものと考えられる。
もうひとつ、ご紹介したいエフェクトに関する新しいミドルウェアの話題がある。今回初出展したinterwareの「Eddy for Nuke by VortechsFX」がそれだ。サポートするホストアプリケーションが「Nuke」のみであることから、映像分野に特化したプラグインだと言える。ちょっとややこしいが、開発はVortechsFXが担当し、interwareは販売を担当しているようだ。
ダイナミクスシミュレーションによって「Eddy for Nuke」がつくり出すエフェクトのクオリティは申し分なく、爆発、噴煙、炎のどれを取っても、目を見張るものがある。会場を通りかかる多くの人がおもわず足を止めて見入っていたことから、多数が支持しうるインパクトのあるビジュアルであったと言えるだろう。新しいミドルウェアであることから、現在は「Nuke」に対してフォーカスして開発が続けられており、現時点では、他のアプリケーションに対応する予定はないそうだ。
「UE4」との連携が深化しているAllegorithmicの「Substance Painter/Designer」のブースは、今年はかなり規模を縮小していた。3月の「GDC」での展示は例年と同程度だったので、ゲームに対する傾斜が進んだ結果、「SIGGRAPH」は一休みなのかもしれない。GDC以降の情報アップデートとしては、複数マテリアルのブレンドを行う際に、ビューポート上でリアルタイムに最終出力を確認しながら、マスクをペイントしてマテリアル設定ができるようになったのこと
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの多くの大作映画での採用が続く、統合シーン制作、レンダリングソフトウェア「Clarisse」のブースも注目を集めていた。ブース担当にサンプルシーンを元にした解説を求めたところ、大量のアセットを取り扱うようなシーンでもツール動作は軽快で、レンダリング速度も優秀だと感じられた。筆者がブースを訪れたときには、『スター・トレック BEYOND』と『グレートウォール』のメイキングを題材にしたプレゼンテーションも行われていた
会場の一角には、人気セッション「RealTime Live!」ウィナーに輝いたThe MillのARカーや、SIGGRAPH会期に合わせて開催された「UE4」のユーザーイベントで紹介されていたリアルタイムバーチャルヒューマンのブースも。どちらも映像分野での「UE4」の活用の広がりを象徴するビッグプロジェクトだ。ナマARカーには「GDC 2017」以来の再会を果たすことができたが、ナマMikeに会いそこなってしまったのが心残りだ。筆者もMikeに会いたかったよ
非常に駆け足となってしまったが、以上が今回の「SIGGRAPH 2017」で気になったハード、ソフトだ。昨年のアナハイムと比較して、会場スペースに余裕があったこともあってか、非常に多くのブースが立ち並び、1日かけても回りきれないといった状況だった。CG全般で見ると、依然としてVR/ARの人気が高いことと、ゲームに限らず広義のリアルタイムレンダリングに対するニーズの高まりから、ハード、ソフトともにさらにパフォーマンスの向上を果たしているものが多いように感じられた。
info.
-
SIGGRAPH 2017
会期:2017年7月31日(日)~8月3日(木)
場所:Los Angeles Convention Center
主催:ACM SIGGRAPH
公式サイト