>   >  エキシビジョン会場で気になったハードソフトを総まとめ ~SIGGRAPH 2017レポート vol.4~
エキシビジョン会場で気になったハードソフトを総まとめ ~SIGGRAPH 2017レポート vol.4~

エキシビジョン会場で気になったハードソフトを総まとめ ~SIGGRAPH 2017レポート vol.4~

早いもので、閉幕からすでに約1ヶ月が過ぎてしまった「SIGGRAPH 2017」。言わずと知れたこの世界最大のCGの祭典では、エキシビジョン会場を行脚して、新しいデバイスやツールを発掘するのも楽しみのひとつだ。事実、筆者は「SIGGRAPH 2014」でモーションキャプチャデバイス「Perception Neuron」を発見。即Kickstarterでバックして、激安価格で首尾よく2セットを入手している。また、昨年の「SIGGRAPH 2016」では、リコーUSAが即売していた360カメラ「THETA S」をお手頃価格で入手することができた。さて、今回の「SIGGRAPH」では、筆者の眼力は、どこまで未来を見通すことができるだろうか。本年も例により、エキシビジョン会場で見つけた「気になるアイテム」をハード、ソフトを問わずご紹介したい。

TEXT&PHOTO_谷川ハジメ(トリニティゲームスタジオ
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

<1>CG制作過程に新たな可能性もたらすハードウェア

まず、CG制作環境をより快適にしてくれるハードウェアとして最も注目したいのが、DELLの液晶タブレット「Canvas 27」だ。本製品は、年始の「CES 2017」で発表され、同イベントのイノベーションアワードに選ばれている。米国では、「SIGGRAH 2017」会期中の8月1日から発売開始されており、価格は1,799USドル。日本でも8月29日から発売されており、「Dell Canvas 27 デジタルキャンバスベーシックモデル」の価格は194,378円となっている。長く寡占状態が続くワコム製品と真っ向から競合することになるはずで、「Cintiq 27QHD touch」が日本のワコムストア価格で313,200円(※DTH-2700/K0の価格)と比べると低価格な点にも注目だ。

製品の仕様としては、Microsoft「Surface Studio」に付属するダイヤル型インターフェイスによく似た「totem」が付属するのが特徴的だ。液晶解像度はQHD(2,560×1,440)、2048階調EMS方式のスタイラスペン、20点マルチタッチ、Adobe RGBフルサポートと、「Cintiq 27QHD touch」と比較してスペック的に遜色がない。対応OSに関しては、Windowsでは最新のWindows 10 Creators Updateの内容にも対応する一方で、MACやその他のOSでは公式にサポートされていない。実際のMAC上の動作としては、ディスプレイとしての表示は可能で、ペンで描画することもできるようだが、ドライバの関係で筆圧や傾き検知といった機能は有効にならないようで、ビジネス用途のみならずクリエイターを視野に入れた製品としては少々不満が残る。


本製品を導入するか否かを判断するには、前述したスペックに加え、こうしたOS環境による制限や、個々のアプリケーションの対応状況、ワコムが来年リリースする予定の4K解像度の大型液晶製品「Cintiq Pro 24/32」(24万円~36万円の価格レンジ)を待ちきれるか、といった部分も考慮に入れたほうが良いだろう。制作環境がWindowsで、現行製品から大型液晶を搭載する液晶タブレットを導入したい場合は、コストパフォーマンスに優れた本製品が、有力な選択肢になることは間違いない

もうひとつDELL関連製品として、パートナー企業であるMetaのAR HMD「Meta 2」を紹介したい。先行するMicrosoftの「HoloLens」と比較すると、1度あたりのピクセル数は、「HoloLens」の47ピクセルに対して「Meta 2」の20ピクセルと少ないが、その代わりに視野角は「HoloLens」の2倍の90度と広いのが特長だ。また、「Meta 2」は「HoloLens」のようにデバイスそのものにコンピュータは内臓されておらず、HTC「Vive」やOculus「Rift」といったVR HMDのようにPCに接続して使用するタイプのAR HMDだ。PCの機能を内包しないことから、開発者向けキットの価格は949ドルと「HoloLens」の開発版の1/3と安い。ヘッドセットを用いたARは、まだまだこれから立ち上がる段階で、スマホやタブレットのARとはまたちがったデザインが必要になる。どのようなアプリケーションが有用か今のうちから検討するためのテスト機として導入するには、比較的廉価な「Meta 2」が良いだろう。

HP単独のイベントで、「Meta 2」を体験したみたが、視界良好なものの、表示されるホログラフィーはまだまだ解像度不足でHMD自体も随分と大きく、ちょっとアクティブな用途には向かない印象だ。ディスプレイやハンドトラッキングセンサーといった入出力インターフェイスにHDMI 1.4bとUSB 3.0を使用するにもかかわらず、それ以外に給電用のケーブルが必要になるとケーブリングに関しては洗練されているとは言えない(が、開発キットの仕様であるため製品では変更される可能性はある)。また、OSは現時点ではWindows10のみのサポートだ(MACサポートの計画はある)

一方、VR/AR HMDを支える基盤として、ビジネス用途で活用することを目的にHPが投入したのが、VRバックパックPC「HP Z VR Backpack PC」だ。HPブースは、本製品を前面に押し出した展示となっていた。「HP Z VR Backpack PC」と同様のバックパックPCは、MSIZOTACの発売済み製品もあり、またHP自身もコンシューマ向け製品として「Omen X Compact Desktop(Omen X VR PC Pack)」を準備している。ところが、この「Omen X Compact Desktop」は発売が遅延しており、7月に2,499ドルで発売するとしていたものの、8月27日現在も、米国のHPダイレクトでも購入することはできない。「HP Z VR Backpack PC」は9月発売で3,299ドルと発表されており、順調に行けば、HPの製品ではビジネス向けモデルが先行しそうだ。

ケーブルが邪魔なら背負ってしまえば良いじゃない、といったごくシンプルな発想で製品化されているこの手の製品は、次世代のワイヤレス通信規格が浸透するまでの端境期商品といえなくもないが、ともかく現時点でVR環境を導入して開発者間の意識合わせを促進しようと思えば、現実的な選択肢になるだろう。後述するNVIDIAのVRコラボレーション環境とも相性が良い。


コンテンツ展示の方に目を向けると、「Unity 5」ゲームエンジンで制作されたVR映像『Raising A Rukus』の完成度の高さが光る。ゲームセンターにあったライド型ゲームや、テーマパークのライド型4Dシアターのアトラクションを、もう少しコンパクトにしたようなシステムで、カメラワークや注視点の誘導がよく考えられている。シナリオの良さも相まって、純粋に楽しめるコンテンツに仕上がっていた。同作を完全な状態で楽しむためには、現時点では、ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンと順次展開されている「IMAX VR Centre」を訪れる必要があるが、映像を視聴するだけならご家庭でもOculus「Rift」で楽しむことができる。

NVIDIAのブースでは、先の発表会レポートでお伝えしたAIを活用した最新のCG高速化テクノロジ、eGPU製品、仮想世界とリアル世界の双方に存在するロボットISAACくんに加え、昨年の2K立体視から4K立体視に進化したリアルタイム360スティッチングや、8Kリアルタイム動画編集環境を盛んにアピールしていた。上述のように多種多様な展示が行われているなかで、さらに大掛かりなブースを構えてアピールしていたのが、産業向けのVRコラボレーション環境だ。VR HMDにHTC「Vive」、リアルタイムレンダラに「Unreal Engine 4」(以下「UE4」)が活用された仮想空間に実スケールの自動車を詳細なディティールまで再現したデモで、複数のチームメンバーが同一空間ての体験を共有することができる。

ゲームVRがベースにある筆者にとっては、確かに豊かなディティール表現ではあるものの、その一方で画面内に描画するオブジェクトを一台の車に限定するといった工夫で描画パフォーマンスを稼いでいるな、くらいの認識だったのだが、たまたま筆者の体験の後に視察に訪れた日系の某自動車メーカーの方々は、仮想世界での実車の再現性の高さに、皆一様に感嘆の声をあげていた。とりわけ客先に対してプレゼンテーションを行う機会のあるセールス・マーケティングの担当者からは、顧客目線で考えて再現性の高いリアルなCG表現は、自社のビジセスの成否にとって非常に重要とのコメントが発せられていた。なるほど、そういう目線で考えれば、ようやく実用的なツールとして活用できると考える業界もあるわけだ。

かつて「GDC 2016」のEXPOレポートでご紹介したArtmatixは、機械学習を活用したテクスチャ生成技術がNVIDIA主催のコンペで認められて100,000ドルの資金を手にしている。すっかりNVIDIAと蜜月関係を築いているようで、今般もNVIDIAブース内に出展していた。去年の記事を見返すと、我ながらなかなか渋いコメントをしているが、こうして立派に認められるようになって嬉しい限りだ


対するAMDのブースの方は、NVIDIAと異なり差別化された解りやすい展示はごく限られていた。ライブラリやソフトウェア面での新テクノロジがなく、派手なロボット展示がなかったせいだろう。唯一目立つ展示は、リアルタイムキャプチャした映像と、CGを合成してVR映像として体験させるコーナーくらいだろうか

その他、Indiecamのブースでは、グローバルシャッター搭載カメラ「indieDICE」による360度カメラリグの展示が行われていた。昨年展示されていたBlackmagic Designの「Micro Cinema Camera」と同一のコンセプトで競合する製品だ。1台あたりの単価を質問したところ、企業なら十分に検討できる魅力的な価格を言われたと思うのだが失念してしまった。公式サイトにも価格の情報がないため、正確なところは問い合わせる必要がある。2カメラ構成でオールインワンの「nakedEYE」の展示も

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<2>今年はエフェクトツールに収穫アリ

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