>   >  原作絵本の魅力をフルCGで拡張させる!『映画くまのがっこう パティシエ・ジャッキーとおひさまのスイーツ』
原作絵本の魅力をフルCGで拡張させる!『映画くまのがっこう パティシエ・ジャッキーとおひさまのスイーツ』

原作絵本の魅力をフルCGで拡張させる!『映画くまのがっこう パティシエ・ジャッキーとおひさまのスイーツ』

Topic 2 アセット制作

原作の魅力を忠実かつ適確に3DCG化させる

キャラクターアセットについて。本作では、シリーズでは初めてくま以外のキャラクターが登場するなど、オリジナルの絵本にはないキャラクターが多数登場する。これらのキャラクターは、全て児玉監督によってデザインされたものだ。登場するキャラクターは約20体だが、カラーバリエーションも含めると37体に達した。「ミンディやおばあさんはネコであるとか、メインキャラクターの設定については、原作者あいはら氏との打ち合わせ内容を踏まえてデザインをしていますが、その他のキャラクターは自分でデザインしています。くま以外のキャラクターもOKにしたことで、制限がなくなってなんでもできるようになったのですが、作成できるキャラクターにも限界があるので、どのような動物で構成するかは非常に難しいところでした。最終的には動物の種類を増やすのではなく、色替えなどのバリエーションを増やすことでまとまりました。バリエーションをつくる中では、キャラクター同士のサイズ感の強弱などにも注意してデザインすることを心がけました」と、児玉監督。キャラクターのルックについては、前作は作画に近いセルアニメ調のルックであったが、ひさしぶりの映画ということでルックの差別化をしようという意向の下、今回はアウトラインを極力出さないコンセプトアート的なルックに統一された。キャラクターの作成についてD.I.D.では細かいモデリング規則やレンダーパスやマテリアル設定、Pencil+の設定など、非常に細かい仕様書を作成。特に綺麗な影を作成するための法線コピーのルールなど、新しいルックを誰でも再現できるようにドキュメント化されている。

本作の背景は、美術背景と3DCGアセットに美術素材をカメラマップして作成したものが使用されている。それぞれのカットの背景は、日野氏がシーンごとにボードを作成し、3D背景の場合はボードを基にモデリング。代表的なカットで使用される主な建物などは、児玉監督がラフにモデリングしたデザインを基に日野氏がイメージをつくっていくというものもあるという。「美術側でたくさん背景を作成してもらったおかげで、今回の作品が成り立っていると言っていいと思います。全ての背景を3DCGだけで作成しようとすると、シーンの数も大量なのでつくり上げることが難しかったでしょう。美術の力で明確な世界観を作り出せたことで本作は出来上がっている。美術あっての『映画くまのがっこう』と言っても過言ではありません」と井上氏は語る。美術は色も形も賑やかにという方向だった前作に比べてもそれほどルックが変わっていないというが、よりポップな方向にデザインされた。建物のデザインについても、今回はガウディの建築のように有機的な曲線やタイルをカラフルに使ったデザインを基本としてデザインされている。また、美術背景に先だって着手したのが、プロップであった。特に作中に多く登場するスイーツは3DCGのプロップとして作成。プロップは約120種類作成され、日野氏が描いた設定画を基に、非常に設定に忠実なプロップが3DCGで仕上げられた。「スイーツのプロップは設定画の再現率が非常に高い状態で作成できたと思います。モデルに使用されているテクスチャも、設定画に非常に近い表現になっているのですが、設定画を素材として使っているのはロゴくらい です。あとは担当したアーティストが作成したテクスチャを使っています。D.I.D.は日頃から設定画に忠実にモデルを作成するということがとても得意なスタッフが多いので」と、伊藤 樹CGディレクターは軽く話すが、実際に3DCGのプロップだということがわからない見事な出来映えなので必見だ。

キャラクターモデル

ジャッキーの完成モデル


本作のキャラクターモデリングの要領を図解したもの(伊藤CGディレクターが作成したCGスタッフ向け仕様書より)


1体あたりのレンダーパスを図示したもの(同仕様書より)。本作では、明確な輪郭線を描画しないルックが意図的に採用された(図のとおり、アウトラインの素材自体は出力されている)

ミンディとジャンピエールの完成モデル

キャラクターセットアップ


  • ジャッキーのセットアップ。Bipedをベースにしているが、全身を自由に変形できるようにBipedの各パーツにダミーをリンク。そのダミーをスキンに設定してある


  • ミンディのフェイシャルリグ。耳などの揺れものにはSpring Magicを利用する都合上、Boneでセットアップされている


ミンディのモーファーリスト。デザイン画に載っている全ての表情と瞬き(目パチ)、母音の口は必須で作成。それに加えて、各キャラ特有の表情が必要に応じて用意された

美術設定を忠実に再現した3DCGスイーツ


日野美術監督が作成したスイーツの設定


D.I.D.が作成したスイーツの3DCGプロップ。その再現度の高さに驚かされる

3DCGと美術のシームレスな連携

「スイーツランド」のシーンを例に、カメラマップを用いたCUTのワークフローを図示したもの



  • カメラマップの原図出し用の3Dプレビュー(建物はラフモデル、遊具は本番モデル)



  • 美術が描いたカメラマップを貼り込んだ状態



  • BG原図



  • 完成形

ジャッキーが勢いよく寄宿舎の自室を飛び出していくCUTより



  • 背景セット全景



  • レイアウトの作業UI (カメラビュー)



  • BG原図



  • 完成形

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Topic 3 アニメーション&撮影

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