>   >  ゲームエンジン×映像制作の基礎知識~Unreal Engine 4篇~
ゲームエンジン×映像制作の基礎知識~Unreal Engine 4篇~

ゲームエンジン×映像制作の基礎知識~Unreal Engine 4篇~

6 アセットの編集、マテリアルの作成

現状、V-Rayなどのマテリアル設定をそのままコンバートすることは難しく、それぞれのエンジンの仕様に合わせたマテリアル、テクスチャパスをつくり直す必要があります。手間のかかる作業ですが、ただ、このあたりのワークフローは今後、外部レンダラとの連携強化によって変わっていくかもしれません。ここでは本誌2015年7月号(203号)に掲載された弊社SV・今泉隼介による戦車モデルをベースに、戦車と背景のマテリアルを作成していきます。

画像は、最もシンプルなPBRマテリアルの一例です。カラー、メタリック、ラフネス、ノーマルに、それぞれ該当するテクスチャが接続されています。テクスチャ容量の削減のためにRGBaの各チャンネルを、それぞれグレースケールテクスチャとして扱うこともできます。

UE4の「マテリアルエディタ」はMayaでいうハイパーシェードのように、ノードを繋ぐことでマテリアルが組めるようになっています。固定されたプリセットのようなものがないので、複雑な構成のものをつくる場合、知識と習熟が必要です。学習には公式のサンプルなどを参考にするとよいでしょう。また、PBRマテリアル用のテクスチャを作成するには「Substance Designer/Painter」「Quixel」「MARI」などの、PBRワークフローに対応した3Dペイントツールが作業効率を高めます。

オリジナル戦車レンダリングイメージ

UE4のマテリアルエディタ

POINT 1
UE4にはAllegorithmicのSubstanceプラグインがインテグレートされているため、.sbsar形式のマテリアルをインポートすることができます。Substance はMaya、3ds Max、Unityなどにも対応しており、共通のマテリアルを使用できます。もし、複数のツールを横断できるマテリアル資産を蓄積したいのであれば、Substanceの導入をオススメします

POINT 2
Unityには、UE4のようなマテリアルエディタは存在しません。あらかじめ用意されているビルドインシェーダか、自作のシェーダコードをマテリアルに適用します。なお、「Shader Forge」という、UE4のマテリアルエディタによく似た機能をアセットストアから購入することもできます

7 アセット配置によるレベルの構築

用意したアセットを使って、レベル(シーン)を組み立てていきます。UE4のビューポートはMayaなどに比べて動作が軽く、最終ルックに近い質感を確認しながら作業できることに大きなメリットがあります。

レベルの構築。[ファイル→アクタ→レベルにインポート...]の機能を使えば、3DCGツールで構築したシーンを丸ごとインポートすることも可能です

POINT 1
UE4での単位は1=1cmです。3DCGツール側で単位を揃えておきましょう。ビューポート右上のスナップ機能は配置作業の際にとても便利です。物理制御などの挙動に影響するため、特別な理由がない限りスケールは原寸で扱うことをオススメします

POINT 2
レベル(シーン)に使われるモデル、マテリアル、テクスチャの数が増えれば増えるほど、処理負荷はかけ算で増大します。なるべく少ないアセットの組み合わせでレベルを構築するように心がけ、インスタンスを用いたモジュラー化などで最適化します

POINT 3
UE4では「ブループリントクラス」を使うと、複数のアセットをひとつにまとめたり、スクリプト制御などを加えたものを登録できます。Unityでは「Prefab」で、同様の作業を行うことができます

8 ライティング

指向性ライト(並行光源)、ポイントライト、スポットライト、スカイライト(無限遠のIBLライト)の4種類です。スカイライトには、レベル内に1つしか存在できないという制限があります。また、プリレンダリングとちがい、1つのライトに3つのカテゴリが存在します。大規模な地形などの場合、処理負荷に大きく影響しますので理解が必要です。

ライティングのエディット

POINT 1
「ライトの可動性」という概念はプリレンダリングに慣れた人には理解しにくいかもしれません。しかし、リアルタイムレンダリングにおける高速化の重要な要素です。ワークフローにおいても、ライトビルドにかかる時間が制作スケジュールを左右します。ゲームエンジンで映像制作を行うにあたっては、まずライティングのしくみを理解しておきましょう

POINT 2
ライトを事前ベイクするためにはライトマップ用のUVが必須になります。UE4にはライトマップUVを自動展開してくれる機能がありますが、ライトベイクの結果に不具合のある場合は、自動作成のUVが適切かどうか確認し、手作業で調整します

POINT 3
UnityにもUE4と同様にスタティックライトの事前ベイク機能が存在します。ただし、ステーショナリーライトに該当するものはありません

POINT 4
UE4でもV-Rayのように「IESプロファイル」を使用することができます。ただし、IESプロファイルを割り当てることができるのはステーショナリーかムーバブルのポイントライト、およびスポットライトに制限されています。スタティックライトに割り当てると、見た目に不具合が生じます

UV展開によるライトマップの不具合。左から、UVが調整された例、効率の悪い例、UVが設定されていない例。中央はUVの継ぎ目に滲みが出ている。右は、ライトマップが正常に生成されず、黒くなっている

A スタティック(静的)ライト
可動しないライティングをオブジェクトにテクスチャとしてベイクしておくこと(ライトマップ)で計算を省く、という手法を用いています。ただし、ベイクされたライティングを動的に変更することはできません

B ステーショナリー(固定)ライト
可動はしないものの輝度や色のアニメーションに対応したライトです。1つのメッシュに使えるライトは4つまでの制限があり、複数のライトを隣接して配置すると、5つめはエラー表示になって、反映されません

C ムーバブル(動的)ライト
毎フレーム計算されるライトです。処理負荷が高く、間接照明に対応していません。アニメーションする光源に使用します

9 カットシーン制作

UE4には「シーケンサー」というカットシーン作成用のエディタがあります。After Effectなどの動画編集ツールに似たタイムラインUIで、リアルタイムのカットシーンを作成できます。

シーケンサー

POINT 1
シーケンサー内に、サブトラックとして複数のシーケンサーを配置することができるため、分業して細かなカットや要素のエディットを進めることができます

POINT 2
レベルに配置したアクターをアニメーションさせるには、アクターの可動性をムーバブルに設定します。シーケンサーでアクターにアニメーションを設定しても、スタティック設定になっていると、静止したまま動きません

POINT 3
Unity 2017から「Timeline」という、カットシーン作成用の機能が追加されました。ただし、動画の書き出し機能などは2017年9月下旬に追加される予定です

POINT 4
シネマティクスにはシーケンサーのほかに「マチネ」というよく似た機能があります。マチネは古くからある機能で、シーケンサーはマチネの上位互換機能なのですが、完全移行が終わっていないためか、現在2つのエディタが重複して存在しています

10 動画または、連番ファイルの書き出し

シーケンサー(およびマチネ)には、オフラインレンダリングでの連番書き出し機能があります。作成したカットシーンをムービーに出力してみましょう。

保存フォルダと出力フォーマットを指定

POINT 1
シーケンサーのレンダリング機能ではフレーム数などを設定できますが、UE4の内部的な単位は「秒」であることに注意(GPU処理により可変フレームレートに対応しているため)

POINT 2
Gバッファの抽出で、要素レンダリングを行うこともできます

11 ポスト処理と要素レンダリング

UE4にはポスト処理機能として、様々なフルスクリーンエフェクトや自由度の高い調整機能が揃っています。しかし、V-Rayやmental rayなどプリレンダリングやAfter EffectやNUKEでのコンポジットと比較すると、アンチエイリアスや被写界深度ボケなどで荒さが目立ち、高精度の結果を得ることはできません。

そこで、Gバッファから要素レンダリングの連番を出力して、それをAfter Effectでコンポジットしてみます。Gバッファの要素はシーケンサーのムービーレンダリング設定の[Output Format]をカスタムレンダーパスに設定し、「レンダーパスを追加...」することで書き出すことができます。[Capture Frames in HDR]にチェックを入れると、HDRでのレンダリングも可能です。ぜひ活用してください。

シーケンサーのムービーレンダリング設定。連番の素材は最終レンダリングサイズの倍の大きさでレンダリング。コンポジット時に1/2に縮小して、ジャギーが目立たないようにします

UE4最終レンダリング

Unity最終レンダリング

V-Rayオリジナルアセットレンダリング

まとめ

リアルタイムレンダリングには様々な制限がありますが、用途を絞って使いどころを考えれば利用価値は高く、局所的には劇的な工数の削減につながります。

例えば、プリプロダクションにおけるトライ&エラーやオブジェクト数の多い大規模背景レンダリングなどでは作業効率が飛躍的に上がります。さらに監督の目の前でカメラワークの変更やルックの調整など修正を行いその場でプレビューを確認できるのは、リアルタイムレンダリングの強みです。このような強みを上手くワークフローに取り入れることで、大規模で高額なレンダーファームを使わなくても、比較的安価なゲーミングPC上で高速かつ高画質なレンダリングを行うことが可能になります。

すでにハリウッドメジャーでは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)の本編中数カット、『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017)のプリビズなどで、UE4を積極的に活用した商業映画制作が行われています。今まさに、リアルタイムレンダリングを使いこなす個人や小規模プロダクションが、フルCG長編作品を制作する時代に入っているのかもしれません。

プリレンダリングとリアルタイムレンダリング、効率が良いのは?



  • 株式会社ブロス 最新制作協力作品
    TVアニメ『宝石の国』

    TOKYO MX、MBS、BS11、AT-Xにて10月7日(土)より放送開始!
    原作:市川春子『宝石の国』(講談社『アフタヌーン』連載)
    監督:京極尚彦
    CGチーフディレクター:井野元英二
    制作:オレンジ
    © 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

  • 月刊CGWORLD + digital video vol.231(2017年11月号)
    第1特集UnityとUE4、ノンゲームにおける活用動向
    第2特集TVアニメ『宝石の国』

    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2017年10月10日
    ASIN:B075N573CF

特集