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タツノコ4大ヒーローの復活を3DCGでどう実現したのか? アニメ『Infini-T Force』メイキング

タツノコ4大ヒーローの復活を3DCGでどう実現したのか? アニメ『Infini-T Force』メイキング

TOPIC 002 キャラクターと背景の作成

本作では現代的にリファインされたタツノコの人気ヒーローたちが、2Dのアニメ的な要素をもった3Dキャラクターとして登場する。この特徴あるルックの開発についてCGディレクターの堀部 亮氏は「2Dのデザイン画をふまえて、どうすればTVシリーズで成立するかを考えました。モーションキャプチャをすることを考えると、セル調よりディテールが入った方が動きと画の整合性がとれます。ただ、TVシリーズということもあり『GANTZ:O』のようなルックではスケジュール的にも難しく、その間を探っていきました」と説明してくれた。一方で、質感を強調しすぎずにマットに仕上げることで、セル調のアニメを見慣れたファンたちにも受け容れられるようなバランスも心がけたという。「シェーディングも、つい普段のクセでリフレクションを入れたくなってしまいますが、抑えました。デザイン画がわかりやすく描かれていたので、その通りにつくった ら良い感じに仕上がりました」とキャラクターリードの内野浩次氏。

背景については、状況に合わせて3DCGとマットペイントが使われている。基本的に室内は3DCGでつくられ、屋外は頻度が高いところ以外はマットペイントだ。バックグラウンドリードの張替 翼氏は「テクスチャをアートチームに描いてもらったり、3Dモデルとマットペイトが互いに近づけるように探りながらつくっていきました。背景の一部だけを3Dにしたり、いろいろと試行錯誤をしたシーンもあります」と工夫を語ってくれた。70年代当時の劇画タッチのアニメを彷彿とさせるこのルックは、オールドファンも歓迎するところだろう。

キャラクターの制作

キャラクターのデザインは既存のイメージをベースに現代的なリファインが加えられている。デザイン画が詳細でわかりやすかったので、その通りにつくれば良い感じに仕上がったとのこと。一般的に、デザイン画に描かれていないディテールはモデラーが考えて足すこともあるが、今回はむしろこれ以上に情報をむやみに増やさないように心がけたという

ガッチャマン

テッカマン

ポリマー

キャシャーン

界堂 笑

劇場版に登場するコンドルのジョー。ブラウンにブルーというコスチュームが渋い

テクスチャ制作とルックデヴ

キャラクターのテクスチャはルックデヴで決められたように、手描きっぽさを強調されている。例えば、金属パーツなどはシェーダでハイライトを入れずに、テクスチャで素材感が出されている。ただし、あまりやりすぎるとゲームっぽくなってしまうので、あえてヘルメットにはシェーダで質感を与えるなど、トータルでバランスがとられている。テクスチャの作成に当たっては、大勢のスタッフで作業しても同じ結果が得られるようにブラシの設定や描き加減を共有するなどの工夫がされた。ツールは基本的にPhotoshopで、一部にMARIを使用

鷲尾 健のテクスチャの一例。金属のテクスチャも描き込みで質感を出している


レンダリング結果。手描きテクスチャと3Dの陰影のバランスが絶妙にとられているのがわかる

「CurveToMesh」による髪の制作

髪はオリジナルの社内ツール「CurveToMesh」でモデリングされている。その名通りカーブから髪のパイプ状の房をつくっていくツールで、太さやプロファイル形状、分割数などを細かく設定してメッシュを生やすことができる。また、メッシュを生成した後も、やはりオリジナルツールの「DF Hairbrush」を使って櫛でとかすようにカーブを変形させてスタイルを編集できる。とはいえ、はじめに一本一本のカーブを丁寧に作成しないと綺麗なヘアスタイルにならないため、キャラクターモデリングの中でも非常に大変な作業だったという


CurveToMeshの操作画面。同じカーブでもボリュームの付け方で印象のちがう髪になる


笑の髪のアップ。丁寧につくられているのがわかる

3DCGとマットペイントによる背景の制作

様々なシチュエーションが登場する本作。主に室内や多く登場する場所は3DCG、屋外や登場回数が少ない場所はマットペイントのように分けられている。3DCGの背景のテクスチャはマットペイントと合うように手描き感を出しつつ描かれており、ときにはマットペイントの担当がテクスチャを描くこともあったという。また、ゲームなどのデータのように、3DCGの背景ではライティングのライトをベイクしてテクスチャに入れ込んでいる。これによりDFエンジンの処理速度が上がって作業速度がアップしたり、連番レンダリングのコストの低減ができたという

3DCGでつくられた渋谷のスクランブル交差点。登場の回数も多く、カメラワークも大きいことが多かったため、屋外だが3DCGでつくられた

マットペイントの背景。マットペイントならではの雰囲気が素晴らしい

背景のライトのベイク

3DCGでつくられた背景ではゲームデータのようにライトがベイクされている



  • 笑宅キッチンのディフューズのみの表示。IHコンロの前の壁に照り返す照明やカウンターの反射、調理器具の反射などは、シェーダのマテリアルではなく手描きで描き込まれている



  • ライティング用の3Dレンダリング。光やオクルージョンで陰影の表情にリアリティが増している


2つを合わせて完成。3DCGに手描き感が良い具合に加味されている

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TOPIC 003 セットアップやモーションキャプチャでの新たな取り組み

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