>   >  アニメCGで培った技術を活かした新次元のシネマティックVR『おそ松さんVR』
アニメCGで培った技術を活かした新次元のシネマティックVR『おそ松さんVR』

アニメCGで培った技術を活かした新次元のシネマティックVR『おそ松さんVR』

TOPIC 2 アセット制作

アニメCGのノウハウがダイレクトに活かせた

3DCGツールは3ds Maxメインで、アニメーション作業はMotionBuilderを利用。コーディングにはUnity 2017.3が用いられた。アセットをはじめ、全てのソースはGitによるバージョン管理を行い、常時最新の状態に更新できる体制を構築。VR初体験の観客が多いことを想定していたので、『アニメの世界にプレイヤーを没入させる』いうコンセプトの下、王道の画づくりが目指された。

「キャラクターのルックには、原作の雰囲気を大事にするため、ベタ塗りにして立体感を消す方向性で進めましたが、VRの特性上、それでも十分に立体に見え、正にアニメの中に入るという体験ができます。これは体験しないとわからないので、実際に足を運んでプレイしてみていただきたいですね」(川島氏)。

モデルを担当したのは同社のタイトルの多くを手がけるモデリングディレクターの大西史剛氏だ。3ds Maxで作成したモデルを、そのままのルックでUnityへインポートが可能なフローを組むことで、アニメCGのノウハウをそのまま活かすことができ、原作の雰囲気に近づけることが可能となった。6つ子たちのモデルは、ボディは共通。ただし、顔(頭部モデル)は個別に作成することでアニメ本編と同じく描き分けされた。

セル調の質感には、「ユニティちゃんトゥーンシェーダー2.0」を採用(背景セットやプロップはToon/Litを採用)。ちょうど「Pencil+ 4 Line for Unity」がリリースされたタイミングだったが、リアルタイム処理との相性から前者が選択された。当時のバージョンでは、Pencil+ほどは細かく制御できなかったため、必要に応じてメッシュを切る、切らないといったモデル側での調整を行なったという。ルック的にはラインとノーマルのベタ塗りだけ。原作の作画アニメらしい、平面的な表現を目指し影の情報は意図的に省いた。ただし、輪郭線についてはねらい通りに出るように部位に応じて丁寧に調整している。「1体あたり、三角ポリゴンで約5万。シェーダで5万。アウトラインで5万。LRで2回描画するのでUnity上では約30万ポリゴンのデータ負荷のはず」とは、田尻真輝チーフラインプロデューサー。

ボディリグはBipedで作成。腕の曲がり等の変形はツイストボーンなどで対応。不自然に見える箇所があれば、頂点の割りやウェイト調整を地道にくり返したという。フェイシャルリグについては当初、ボーンで付けていたというが、データ負荷的に問題ないことがわかったので、最終的に全て頂点モーフに切り替えたという。「頂点モーフで作成しても3ds MaxのSkinWrapを使えば、後からの修正も問題なく行えます。そもそも最終的な決定も制作後半だったので、前工程に戻る必要もありませんでした。技術の検証と実作業を同時並行で進めるためにも即断即決を徹底しました」(川島氏)。その意味でも、同時並行で最終画面を確認できるGitを使ったワークフローが有効だったわけだ。

アニメファンも納得の造形

6つ子の本番用モデル(レンダリングイメージ)

おそ松

カラ松

チョロ松

一松

十四松

トド松

ボディは共通だが、頭部は6つ子たちの顔をしっかり描き分けるために顔のトポロジーとフェイシャルターゲットは6体全て異なるものになっている。「作中、股間部分は各々の6つ子に合わせたデザインの金隠しをレイアウトしています。その奥がどこまで造形されているかは秘密です(笑)」(川島氏)

頂点モーフの切り替えで豊かな表情を実現


フェイシャルアニメーション用モーフターゲット。Unity上ではシェイプキーで制御された

作画の質感を再現する


輪郭線をはじめとするセル調の質感には「ユニティちゃんトゥーンシェーダ2.0」が用いられた。「線を確実に出したい部分は、ポリゴンを切って隙間を空けています。逆に線が出てほしくない部分は、境目をなだらかに調整しました」(川島氏)

カメラに映る範囲に絞ってつくり込む

物語の大半の舞台となる男湯内部の背景セットは、原作の銭湯が忠実に再現されている。ディテールについては極力ジャギーが生じないよう、可能な限りテクスチャで表現された

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TOPIC 3 アニメーション&コーディング

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